「最高!」と「残念……」が同居するEV ホンダeは噛めば噛むほど複雑な味がしてしまう!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

「最高!」と「残念……」が同居するEV ホンダeは噛めば噛むほど複雑な味がしてしまう!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】

 ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はホンダe(2020年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2021年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)

撮影:西尾タクト

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■昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤー マイ最高得点車だったホンダe!

ホンダe(ベースグレード・451万円)…ホンダ初の量産EVで、ボディサイズは全長3895×全幅1750×全高1510mm、ホイールベース2530mm。ベースグレードのほか大径ハイグリップタイヤを装着するアドバンスがあり、そちらの価格は495万円
ホンダe(ベースグレード・451万円)…ホンダ初の量産EVで、ボディサイズは全長3895×全幅1750×全高1510mm、ホイールベース2530mm。ベースグレードのほか大径ハイグリップタイヤを装着するアドバンスがあり、そちらの価格は495万円

 ついにホンダeにじっくり乗れる時がきた!

 私は日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員をやらせてもらっているが、昨年のマイ最高得点車はホンダeだったのだ。

 残念ながら、イヤーカーの候補となる10台に残らなかったため最終選考で満点を入れることはできなかったが、個人的に昨年のイヤーカーはホンダeだったと思っている。

 なんといっても外観のデザインと未来感たっぷりのインテリアがいい。サイドカメラミラーも小ぶりで、とにかく全体がシンプルで上質なのが素晴らしい。

 新型フィットが登場した時、この連載で「俺たちのホンダが帰ってきた」と絶賛したものだが、ホンダeの前では色褪せてしまう。フィットもシンプルなところが魅力だったが、ホンダeにはかなわない。

 5つのスクリーンを水平に並べたインパネにも驚く。機能がありすぎて短時間の取材でそのすべてを使いこなすのは不可能だが、左半分に美しい風景写真や熱帯魚が泳ぐ水族館を映す遊び心には感心した。

 しかも、その魚にエサまであげられるというオマケ付き。これからのクルマはこういうエンタメ要素も大切だ。

液晶スクリーンが5枚並ぶインパネには、熱帯魚が泳ぐ水族館の映像も出る! 車内Wi-Fiで映画鑑賞もできるのだ
液晶スクリーンが5枚並ぶインパネには、熱帯魚が泳ぐ水族館の映像も出る! 車内Wi-Fiで映画鑑賞もできるのだ

 タヌキ顔で愛嬌のあるフロントマスクも好みだ。最近流行のコワモテが苦手な私には、こういうペットのように愛せるクルマのほうがいい。

 外から見て、室内に入っていろんなところをイジっていると「最高のクルマじゃないか」と思わざるを得ない。ホンダらしさにあふれている点も高く評価したい。

 走りはどうか。ご存知のとおり、このクルマは電気自動車(EV)である。街中を流してみるとタイヤの走行音なのか、意外とガザガザした音が入ってくるが、そのほかは何も悪いところがない。走り全体が上質だし、シートもいいし、コンパクトだから運転もしやすい。 

タイヤの音がちょっと気になったが、走りは爽快! EVのよさをしっかり味わうことができた。小さなボディも扱いやすい
タイヤの音がちょっと気になったが、走りは爽快! EVのよさをしっかり味わうことができた。小さなボディも扱いやすい

 アクセルペダルの操作だけで停止までスピード調整できるのも特徴的。私自身はそれほどありがたいとも思わなかったが、編集担当氏はそれがラクでいいと言う。私ももっと走り込めば慣れるのかもしれない。

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■「EVあるある」の恐ろしさがついて回る

コンパクトなボディで広々とはいかないが、後席もちゃんと座れて問題なかった!
コンパクトなボディで広々とはいかないが、後席もちゃんと座れて問題なかった!

 なにしろ最高点を入れたかったクルマである。今回の取材も前の晩から眠れないほどワクワクしていたし、実際、ほぼ予想どおりの仕上がりであることも確認できた。

 しかし、いろいろ考えるとちょっと気になるところも出てくる。

 まず451万円という価格。今回乗ったのは安いほうのグレードだからこの車両価格だが、高いほう(アドバンス)は495万円もする。それでフル充電で283kmしか走れないというのはどうなのか(WLTCモード。アドバンスは259km)。

 実際はその7掛けか8掛けというところだろう。エアコンをつけるとさらに航続距離は減る。

 ホンダはEVで遠出する人はいないと割り切っていて、開発陣からそういう説明を受けたこともある。贅肉を削ぎ落とし、必要な性能だけを残したからこそ、こんなにもシンプルなクルマが作れるのだと。

 それも一理あるのだろう。きっと間違ってはいない。しかし、正しいことだけでは息が詰まりそうになるのも事実。

 ホンダeはカロリーを計算し尽くした食事のようなものだが、いくら健康志向の人でも、何カ月かに一度くらいはコテコテにカロリーの高いジャンクフードを食べたくなるものなのだ。そのスキがあまりにもなさすぎる。

 もうひとつ、EVはすぐに進化しそうなところも気になる。よく洗剤で「汚れ落ち20%アップ」なんて広告を見るが、ホンダeも1年後くらいに「お値段据え置きで航続距離2割増し」などということになりそうなイヤな予感がする。また、進化が早いから売る時に安くなりそうなのも「EVあるある」だ。

「車内で寝られるか? 評論家」でもある私は、どんな小さなクルマでもラゲッジをチェックする。ホンダeは……ちょっと厳しいかな?
「車内で寝られるか? 評論家」でもある私は、どんな小さなクルマでもラゲッジをチェックする。ホンダeは……ちょっと厳しいかな?

 これを言ってしまうとホンダeの存在意義が一気になくなってしまうが、このままのカタチとインテリアで普通のハイブリッド車を作ってもらえないかと思ってしまった。もちろん、価格はもっと、かなり、大胆に安く。

 ホンダeのボディサイズ、外観、室内の大胆さと楽しさは最高なのだ。私は「こんなクルマが欲しい」と10年以上言ってきた気がする。ホンダはそれに応えてくれたのだから「買ってあげねばならぬ」という義務感すら感じている。

 だが、申し訳ない。こんなに高価なのに航続距離が短いEVはやはりまだ買えない。

 またしても自分の器の小ささを思い知ってしまった。と同時に「ホンダ、ちょっとユーザーへの親切心がなさすぎないか?」とも思う。自分の都合ばかりを客に押し付けていないか、ということである。

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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