BMWが新設計し、F450GSに搭載された並列2気筒エンジン。その最大の特徴が市販バイク唯一の「135度位相クランクシャフト」だ。現在、並列2気筒では主流の270度クランクやスポーティな180度クランクと何が異なり、どんな革新性があるのか? 本記事で徹底解説したい。
独特なサウンドとフィーリングを発揮する135度位相クランク
近年の並列2気筒は、90度Vツインのような鼓動感とトルク感をもたらす270度位相クランクシャフトがスタンダードとなっている。採用例は非常に多く、ホンダ・アフリカツイン/NC750X、ヤマハMT-07シリーズ、スズキGSX-8シリーズ、BMW・F900/800シリーズ、トライアンフ・ボンネビルシリーズなどなど。特にミドルクラス(400~800cc)では主流となっている。
そんな中、BMWが完全新設計し、F450GSに投入してきたのが135度位相クランクシャフトの並列2気筒。135度クランクは市販車では初採用となる。
そもそも「位相クランク」とは何か。複数気筒エンジンにおいて、クランクピンの位置をクランクシャフト上でオフセットした(ズラした)クランクシャフトのことを指す(クランクピンオフセットとも)。これによって各気筒の点火タイミングを変更することができ、エンジンの鼓動感や、タイヤが路面を蹴り出す感覚(トラクション)が大きく変化する。
135度クランク最大のメリットは、独特なサウンドとフィーリングにある。
1番シリンダーが最大まで上がった状態(上死点)で、2番シリンダーのクランクピンは135度ズレた状態。1番シリンダーが点火してから短い間隔(225度)で2番シリンダーが点火し、やや長く(495度)待ってから、次の点火タイミングとなる。

一方、クランクピンを270度オフセットさせた270度クランクは、1番シリンダーが点火してからクランクシャフトが270度回転すると2番シリンダーに点火。その後、クランクシャフトが450度回転すると1番シリンダーが再び点火する。擬音では「ドッドッ……ドッドッ」か。(図版はホンダNC700S/X発表時のもの。以下同)
つまり135度クランクは、270度より短時間にトルクが連続して発生し、次のトルクが発生するまでの間が長く、点火タイミングがより不規則だ。これにより、図太く荒々しいサウンドとなる上に、リヤタイヤのトラクションが一段と掴みやすく、オフロードや滑りやすい路面でのコントロール性が高まる。
BMWでは、135度クランクのサウンドを「独特のオフビートな排気音」と表現。また「90度Vツイン(例:ドゥカティ)と45度Vツイン(例:ハーレーダビッドソン)の中間的な音色だが、どちらとも完全に一致しない。270度クランクよりも『不規則』で荒々しい印象を与える」としている。
270度および180度クランクの長所を併せ持つ
135度クランクは、270度クランクに近い中低速の鼓動感に加え、180度クランクのような高回転域の伸びも両立している。
270度クランクの特徴は、全域で「ドコドコ」としたVツインらしい重いトルク感。燃焼間隔は90度V型2気筒エンジンと同様だ。元々270度クランクの並列2気筒は、90度Vツインのような鼓動感とトラクション性能を獲得するために考案された経緯がある。
180度クランクはスポーティなモデルに多く、カワサキ・Ninja650/Z650RS、Ninja250、ヤマハ・YZF-R25/R3、ホンダ・CBR250RR、CBR400R/NX400などが採用。クランクピンが180度オフセットされ、2つのピストンが交互に上下運動することで、一次振動(上下振動)を打ち消し合い、スムーズに高回転まで回りやすい。
135度クランクは、一方の点火間隔「225度」が、270度クランクの「270度」に近いため、低回転では270度クランクのようなパルス感を発揮。もう一つの間隔「495度」は、180度クランクの「540度」に近く、高回転まで回した際は180度クランクのように滑らかな伸びと高周波サウンドに変化する。270度と180度クランク両者のいいとこどりな特性なのだ。

インプレでも、270度に近い鼓動感と180度を思わせる回転フィールが言及されている。https://news.webike.net/motorcycle/527664/

ちなみにクランクピンを360度オフセット(=オフセット0度とも取れる)させた360度クランクは、クランクシャフト360度=1回転ごとの等間隔爆発で、低速から安定したトルクと鼓動感が特徴。現行機種ではカワサキW800やヤマハTMAX、つい先日生産終了したハーレーX350/X500などが採用する。
シングルバランサーでエンジンを軽くできるのも魅力
135度クランクはバランサーを簡素化でき、エンジンが軽量なのもメリット。270度クランクは慣性トルク(ピストンの往復により発生する、ライダーが意図しないトルク)を打ち消せるのがメリットではあるものの、エンジンの偶力振動(回転方向の振動)を抑えるため、重いバランサーが複数必要になる場合も。
一方の135度クランクは、バランサー1本のシンプルな構造でも不快な一次振動を相殺できる。これによりエンジン自体が軽く設計可能。F450GSのエンジン単体重量は41.5kgとかなり軽量に仕上がっている。
過去にはVツインで「135度爆発間隔」もあった!
ちなみに135度クランク並列2気筒はF450GSが初採用だが、「135度という爆発間隔」そのものは、1980年代にホンダのVツインエンジンで実用化されている。
45度Vツインに90度位相クランクを組み合わせたもので、XLV750Rなどが採用。ピストンの運動や爆発の間隔は、理論上、135度クランクと同じだ。
採用の目的は、不快な一次振動をバランサーシャフトなしで理論上ゼロにするため。スムーズすぎて人気に欠け、後継は途絶えてしまった経緯がある。現在のBMWとは狙いが全く異なるのだ。
デメリットを敢えて挙げるとすれば……?
135度クランクのデメリットを敢えて挙げるなら、極低回転域での粘り強さは270度の方が上という点。135度クランクは片方の点火間隔(0→225度)が、270度(0→270度)より短い。135度クランクもエンストしそうな超低回転域で十分扱いやすいが、270度の方がより粘ってくれるだろう。
また、社外マフラーの選択肢がすぐには増えないと予想。世界のツイン市場は270度クランクが大多数を占める。135度クランクは現状F450GSのみだけとあって開発ノウハウが少なく、社外品のカスタムマフラーが発売されるまでに時間がかかったり、そもそも選択肢が少なかったりする可能性が高い。
とはいえ、これらを補って余りあるメリットが多い135度クランク。270度クランクと180度クランクのよさを両立し、まさにクロスオーバーな美点を持っている。今後の派生モデル展開と合わせ、見守っていきたい。
※<BMW F450GS>今後の展開に関するスクープ記事はコチラ!

BMWは2012年に「315度クランク」を発売した過去も! 当時傘下だったハスクバーナの「NUDA900/R」がそれで、エンジンベースは360度クランクを採用していた、当時のF650/800GS用並列2気筒エンジンだった。(写真はWebikeコミュニティより)
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/564530/
【ナニソレ?】180度や270度とは違う! BMW・F450GSが採用する唯一無二の「135度位相クランクシャフト」のメリットとは?【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/564530/567268/








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