カワサキは2026年9月16日、スーパーチャージドエンジンを積むフラッグシップ「Ninja H2 CARBON」の2027年モデルを公開した。国内導入は2027年春頃を予定する。エンジン内部から排気系、電子制御、インストゥルメントに至るまで広範囲に手が入っており、内容的にはフルモデルチェンジに匹敵する。
最高出力は初期型と同じ200ps
2015年に登場したNinja H2は、「誰も経験したことのない走行体験を実現する」という目標のもと、ガスタービンや航空宇宙技術を含む川崎重工業グループの知見を注ぎ込み、完全自社設計のモーターサイクル専用スーパーチャージャーを開発して生まれたモデルだ。市販二輪に過給機を持ち込んだその存在は、当時のモーターサイクル業界に新たな可能性を示した。
日本国内では排ガス対応の難しさなどを理由に2021年モデルで販売が終了していたが、北米向けなどは生産が継続していた。そして今回モデルチェンジを行い、2027年モデルとして待望の復活を遂げることになった。
新型Ninja H2は、未曾有の加速を味わわせてくれた従来型の個性はそのままに、現代環境に合わせて各部をアップデート。スーパーチャージドエンジンのチューニングとギヤ比のショート化により、低中回転域から湧き上がる力強いトルク感と、Ninja H2ならではの高回転域での伸びを両立させているという。
気になる最高出力は200ps(発生回転数や最大トルクは未発表)。排ガス規制に対応するためだろう、従来型H2(231PS/11,500rpm・ラムエア過給時は 242PS/11,500rpm)と比べれば数値自体はダウンしており、タコメーターのレッドゾーンも従来型の14,000rpmから12,000rpmへと下げられている。とはいえ200psという数字は2015年の初期型H2とまったく同一であり、数字よりも体感的に“未体験”を味わわせてくれたあの加速感は引き継がれているはず(その詳細は後述する)。
なお今回、国内導入予定が案内されているのはカーボン製アッパーカウルを備える「Ninja H2 CARBON」で、カラーはミラーコートスパークブラックの1色となる。価格や詳細スペックなどは後日発表とされている。
〈エンジン〉低中速回転域を大幅増強
998ccの並列4気筒スーパーチャージドエンジンは、外観こそ大きく変わらないものの、内部には多くの変更が施されている。開発の焦点は明確で、「Ninja H2ならではのスーパーチャージャーによる加速感を、4,000〜7,000rpmの回転域で磨き上げること」に置かれた。
最も大きな変更が圧縮比だ。燃焼効率を高めるためピストンクラウン形状を変更し、圧縮比を8.5:1から、Ninja H2 SXやZ H2と同じ11.2:1へと引き上げた。同時にスキッシュエリアを4mmから1mmへ縮小している。高圧縮比化によって低回転域からより強い燃焼が可能となり、低中回転域でパワーが力強く立ち上がる特性とされる。
過給エンジンで圧縮比を上げればノッキングという問題が発生するが、スーパーチャージャーのインペラを、全体サイズを変えずにブレード入口角を調整することで低回転・低流量条件での空気の流れを整え、吸気温度を低減してノッキング抑制に寄与させたという。結果として高圧縮比化で得たトルクを十分に活かせるようになっている。
発熱量が低減したことで、ピストン冷却は従来のデュアルジェットからシングルピストンジェットへ変更されているのも、新型H2の効率が高まっていることの証明だ。あわせてオイルポンプの回転数を引き下げることが可能となり、フリクションの低減も図られている。エンジンオイル量も500mL削減され、300gの軽量化を達成した。
吸気系:インテークチャンバー容量を6L→5Lへ、スロットルバルブは小径化
吸気系も細かく変更されている。アルミ製インテークチャンバーは高効率と高出力を両立するため形状を最適化し、容量を6Lから5Lへ縮小。チャンバー構造の変更とあわせ、従来型を上回るスーパーチャージャー効率に寄与している。
従来型では各インテークファンネルに装着していたファンネルネットを廃止し、単一のネットをディフューザー端部に装着。空気の流れを整えると同時に構造の簡素化・軽量化にも貢献する。吸気がディフューザーを通過してからインテークチャンバーに入る流れとしたことで過給効率が向上し、ノッキング抑制にも効いている。
インテークファンネル長は低中回転域の性能と燃費性能を高めるために不等長化。1-4番ファンネルは2-3番より短い設定とされた。スロットルバルブはø50mmからø46mmへ小径化し、空気流量特性を最適化している。ECU制御のブローオフバルブは、スロットルを急閉した際にチャンバー内の余剰圧力を逃がしてインペラのサージングを防止するもので、バルブ作動の応答性を従来型より高め、パワーフィーリングとスロットルレスポンスの向上に加えて最適なブースト圧の維持にも貢献する。
また、吸気ポートと排気ポートの形状も低中回転域の性能向上にあわせて最適化されるなど、シリンダーヘッドも改良。さらにシリンダーやクランクシャフトも一新されており、エンジンに関してはほぼ全面改良となっているのも新型H2の特徴だ。
カムプロフィールは作用角を短縮
カムプロフィールは吸気(−8°)、排気(−12°)と作用角を短縮し、バルブオーバーラップを減らすことで4,000〜7,000rpmにおける空気流量特性に適合させた。低中回転域の性能を重視しながら燃費性能の向上にも貢献し、低回転域から力強く立ち上がるシャープな加速レスポンスを実現している。
ECUのセッティングも、約7,000rpmまでの低中回転域全体で力強いトルク感とコントロール性を発揮するよう設定。一方で約8,000rpmからはスーパーチャージドエンジンならではの加速を発揮させるなど、幅広い回転域でスムーズな加速特性を狙っている。
排気系:プリチャンバーを廃止し、軽量コンパクトな4in1タイプへ
エキゾーストシステムも刷新された。エキパイはシリンダー出口部でø38.1mm(t1.2mm)を採用し、下流側ではø42.7mm(t1.0mm)へと拡大。コネクターパイプを備えた360°集合レイアウト(1-4、2-3)とあわせ、低中回転域トルクの向上に寄与する。
従来型で採用されていたプリチャンバーを廃止したことでレイアウトの自由度が拡大しており、より長い集合パイプ、大容量の触媒、よりコンパクトなサイレンサーが採用可能となっている。このエキパイレイアウトも4,000〜8,000rpmのトルク向上や、日常域での扱いやすさに貢献しているという。
ブラックボディにグレー塗装のエンドキャップを組み合わせたサイレンサーは、容量を10Lから8.8Lへ縮小。片持ち式スイングアームによって生まれるスペースを活かし、車体中心にできるだけ近い位置へ配置された。十分なバンク角を確保しながらマスの集中化を促進し、エキゾーストシステムの軽量化とあわせてハンドリング性能を向上させている。
あの怒涛の加速は…さらに強化されている?!
先述した通り、2027年型H2の最高出力は200PS。従来型の公表値(231PS/ラムエア加圧時242PS)からは下がったことになるのだが、ここで明確なのは、カワサキはH2が最速を誇る速度域を、最高速度から中間加速へと変えたということだ。
資料に掲載された出力&トルク比較グラフでも、比較対象は従来型H2ではなく、2026年型のNinja ZX-10Rとされているのがその証拠。1000ccクラスのスーパースポーツに対し、低中回転域でどれだけ太いトルクを持つかを示すグラフとなっているのだ。
ここでポイントとなるのが二次減速比のショート化だ。従来の2.444(44/18)から2.588(44/17)へと変更され、とくに8,000rpmまででより強力な加速フィーリングをもたらす。パーシャルスロットルからでも過給エンジンならではの力強い加速感が体感できるという。
高圧縮比化+カムプロフィール見直しによる低中速トルクの増強と、ショート化した二次減速比。この2つの組み合わせで従来型を上回る怒涛の加速を実現し、ピーク出力の低下を補う…というのが新型の設計思想と考えていい。いずれにせよ、ライダーをたっぷり興奮させるあの加速感は、新型にもきっちり継承されているはずだ。
〈車体〉ブレーキはカワサキ初のブレンボ製Hypure、電子制御も全面刷新
シャーシとボディワークは、300PS超を発揮するクローズドコース専用モデル・Ninja H2Rを基準に開発された従来型からの継承だ。トレリスフレーム、片持ち式スイングアーム、KYB製AOS-IIフロントサスペンション、オーリンズ製TTX36リヤサスペンションといった構成は変わらない。
一方、フロントブレーキキャリパーにはカワサキ初採用となるブレンボ製Hypureキャリパーを装着。大径ø330mmのセミフローティングディスクと組み合わされる。非対称シルエットを持つHypureは、高剛性とリニアなレスポンスを確保しながらクラスをリードする軽量設計を実現。高度なヒートマネジメント性能によりフェードを抑制し、ブレンボ社特許取得済みのオンパッドピンシステムが残留トルクを低減してコントロール性を高める。マスターシリンダーはブレンボ製ラジアルポンプを採用する。
電子制御系では、KTRCが5つのモード設定となり、より幅広い走行条件に対応。モード1は介入レベルが最も低く一定のスリップを許容する設定で、モード5は雨天やウェットコンディションでのサーキット走行まで想定する。IMUからの入力がなくてもコーナーのカントや勾配を踏まえて適応でき、5ミリ秒ごとに状況を確認して点火カットと電子制御スロットルによる吸気量制御を組み合わせる。
KLCM(カワサキローンチコントロールモード)は2段階制御へアップデート。従来は発進から制御解除までエンジン回転数を約6,500rpmの一定値に制限していたのに対し、新型は60km/hを境に2段階で制御する。発進から60km/hまでは維持回転数を約6,250rpmとし、従来より約250rpm低減することで、より扱いやすい発進特性を実現した(クローズドコース専用機能)。
さらに、KTRCとパワーモードを連携させる包括的なモードセレクト機能「インテグレーテッドライディングモード」(スポーツ/ロード/レイン/ライダー)を搭載。KQS(カワサキクイックシフター)は作動開始回転数を2,500rpmから1,500rpmへ引き下げた。手元のボタンで設定速度を維持できるエレクトロニッククルーズコントロールも新採用され、ハンドルスイッチは左右とも新設計に一新されている。
〈電装類〉インストゥルメントは2表示モード、航空機HUDに着想
TFTカラーディスプレイの表示は2タイプから選択可能となった。タイプ1はスーパーチャージャー用エアダクトのシルエットをモチーフにした視認性の高いレイアウトで、デジタル式吸気温度、ブーストゲージ(%表示および数値表示)、最大バンク角インジケーターなども表示する。
タイプ2は航空機のHUDに着想を得たレイアウトで、表示情報を必要最小限に絞り込み、バンク角・ピッチ角インジケーターとグラフィカルなブーストゲージを配置する。ピッチ角表示は、フロントが持ち上がるとスケールが下へ、沈み込むと上へ動く。
スマートフォンアプリ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」にも対応し、音声コマンド機能やナビゲーション機能が利用可能(利用には無料のライセンスが必要)。ETC2.0車載キットも標準装備される。
〈外装〉銀鏡塗装をアップデートし、より“ギラギラ”に
カワサキ独自の銀鏡塗装はアップデートされ、塗料に含まれる反射粒子のサイズと量を変更することでメタリックな質感を高めた。カーボンファイバー部品を除くすべての外装パーツには、自己修復性を備えるハイリーデュラブルペイントを採用している。
ホイールにはカワサキ初となる水転写プリント(ハイドログラフィックプリント)を採用。星形5本スポーク形状のNinja H2専用アルミ鍛造ホイールの右側面に、グリーンのグラデーションと「Ninja」ロゴを組み合わせた大胆なグラフィックを配した。従来型のピンストライプより幅を広くとった意匠だ。
さらにアクセサリーには、高めに設計された新ハンドルバーが新たにラインナップされるのも注目点。よりアップライトなライディングポジションを実現し、長距離走行時の快適性と扱いやすさを向上させるもので、新ハンドルバーウェイトも用意される。
国内導入は2027年春頃、価格は後日発表
新型Ninja H2 CARBONの国内導入予定日は2027年春頃を予定。価格などは後日発表と案内されている。
ピークパワーの数字だけを見れば、新型H2は一歩退いたように見えるかもしれない。だがエンジンに大幅に手を入れ、さらに二次減速比のショート化という一連の変更が示すのは、未曾有の加速感のさらなる増強に他ならない。詳細スペックの発表を待ちたい。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/590659/
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