すでになめているボルトやナットを回すには力ワザが必要
ボルトやナットの6カ所の角部が何かの理由で丸くなると、2点で接するスパナはガタが大きくなり、やがて空振りしてトルクが伝達できなくなります。メガネレンチやソケットは接触部分が6カ所あるので、スパナよりトルクが伝わりやすいものの、角がなめてしまえばやはり空転します。
バイクでは遭遇する機会は少ないかもしれませんが、自動車のエンジンでは熱が集中するエキゾーストマニホールド固定用のボルトやナットが熱と水分で腐食が進行し、角が丸くなる例は珍しくありません。
そのような場合、第一段階としてはロッキングプライヤーでクランプして回してみると良いでしょう。とにかくがっちり食いつかせることで、プライヤーとボルトを一体化することで回すことができるかもしれません。
ロッキングプライヤーで効果がない場合に使えるかもしれないのがツイストソケットです。これはソケット内面がらせん形状となっていて、らせんのエッジをボルトやナットに食い込ませることで回転トルクを伝達します。ロック機構があるといっても、プライヤーの接点は基本的に2点(製品によっては3点接触の場合もあります)なので、力が一点集中型になりがちです。
これに対してツイストソケットは6点で接触するため(ボルトやナットのダメージ具合によっては6点で当たらない場合もあります)、1カ所当たりの力が分散されます。また、ソケットを左に回すほどらせん状の刃が強く食い込んでいくので、傷んだボルトやナットを逃さず緩めることができます。
ただしこのソケットはらせんの方向から緩め作業のみに作用し、ソケットが食い込んだボルトやナットは再使用できません。通常の工具では回せないほど角がなめたボルトを再使用しようとは思わないでしょうが、念のため頭に入れておきましょう。
ボルトやナットの呼びサイズに関係なく、叩き込んで使用しても良い
ここで紹介している工具はアストロプロダクツが発売しているツイストソケットセットで、呼びサイズとしては8、10、12、13、14,17、19、21、22mmの9サイズで1セットとなっています。
一応、このサイズ表記はボルトやナットの呼びサイズに相当していますが、ソケット開口部のらせん形状と角が丸く削れてそもそものサイズが怪しくなっているボルトやナットに対しては参考程度と認識しておくのが良さそうです。
また正常なソケットをボルトに「はめる」のではなく、らせん状の刃を食い込ませるために「叩き込む」使い方もツイストソケットにとっては正解です。呼びサイズ10mmのボルトにたいして10mmのツイストソケットが思ったほど食い込まなければ、あえて8mmサイズを使っても間違いではありません。
角がなめたボルトを緩める際にタガネで叩くことがありますが、ツイストソケットのらせん状の刃は6個のタガネであると解釈することもできます。小さなソケットを無理に叩き込んでボルトの頭を破損してしまっては本末転倒ですが、ロッキングプライヤーでも滑って掴めないボルトやナットを回そうとするなら、その程度のショック療法も必要です。
実際のところ、ツイストソケットには十字溝が潰れてプラスドライバーで回せなくなったパンスクリューや、六角穴が潰れてヘキサゴンレンチで回せなくなったキャップボルトに叩き込んで回すという使い方もあります。そうした使い方を前提としているため、アストロプロダクツのソケットセットには食い込んで外れなくなったボルトやナットを叩き抜くためのシャフトも付属しています。
さまざまなバイクをいじる中で、メガネレンチや通常のソケットではまったく歯が立たないほど角が丸くなったボルトやナットに出くわすことがあるかもしれません。ツイストソケットは通常の作業では使わない(使えない)工具ですが、いざという時にはとても頼り甲斐のあるアイテムとして役に立つのです。
- ポイント1・一般的なスパナやモンキーレンチとボルトやナットの接点は2点で、6点で接するメガネレンチやソケットレンチに比べて接触部分の力が大きいため角部を傷めやすい
- ポイント2・らせん状の刃が立つツイストソケットは、メガネレンチやソケットが空回りするほどなめたボルトやナットを緩めることができる
- ポイント3・ソケットをしっかり食い込ませるため、ハンマーなどで叩き込んでも良い
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/425389/
ナメたボルトやナットには「食い込む」ツイストソケットが最適【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery2/?gallery_id=425389&slide=1
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