シングルスポーツバイクの可能性を追求した、クラシックレーサーレプリカ「GB500TT」

シングルスポーツバイクの可能性を追求した、クラシックレーサーレプリカ「GB500TT」

 新型の登場が噂されている「GB500」。今回はレーサーレプリカブームの最中、「クラシックレーサーレプリカ」とでも言うべき新たなコンセプトで市場に挑んだ1985年式の「GB500TT」を紹介したい。

文/後藤秀之

 
 
 

「Tourist Trophy」の名を持つクラシックレーサーレプリカ

 ホンダが初めて「GB」の名前を冠したバイクは、1983年に発売された「GB250クラブマン」だ。このバイクは「CBX250RS」のフレームやエンジンをベースにした兄弟車で、クラシカルな英車風のデザインに仕立てられた外装が与えられていた。搭載されるエンジンは空冷4ストロークDOHC単気筒249ccながら、最高出力30PS/9000rpm、最大トルク2.4kgm/8000rpmと高回転・高出力と言えるものであった。



GBシリーズのファーストモデルとなる「GB250クラブマン」は、CBX250RS譲りの空冷DOHCエンジンを搭載した快速250ccモデルとして人気を博した。

 このGB250クラブマンの登場から遅れること約2年、1985年の7月に400ccの「GB400TT」が、8月に500ccの「GB500TT」と400ccに大型のロケットカウルを装着した「GB400TT MkII」が発売された。デザインはGB250クラブマンと同系統のクラシカルな英車風のデザインが採用され、パワーユニットにはSOHC4バルブ単気筒エンジンが搭載された。車名の「GB」は「Great Britain」を意味し、「TT」は「Tourist Trophy」を意味する。「Tourist Trophy」とは英国領マン島で始まり今も続く、バイクレースの起源と言える伝統のレース「The Isle of Man TT(=マン島TTレース)」に由来する。



「GB500TT」はアルミフレーム+マルチシリンダー全盛期に、シンプルながら力強さを感じさせるクラシックレーサーテイストに仕上げられた玄人好みのバイクであった。



「GB400TT」は500のエンジンをベースにボアとストロークを縮小して排気量を399ccとした、当時の中型免許制度に合わせたモデルだ。



「GB400TT MkII」は、当時まだ認可されたばかりのフレームマウントの大型カウルを装備し、シングルシートを装備することでよりレーサーテイストを強めていた。

 
 
 

ライバルSRに比べ短命に終わったGB

 GB500/400TTが発売された当時、500cc、400ccのシングルバイクといえば1978年に発売されたヤマハのSRシリーズがあったため、GB500/400TTは当然そのライバルと捉えられた。SR400/500はオフロードバイクである「XT500」系ベースのエンジンベースを搭載していたが、GB400/500TTのエンジンも同じくオフロードバイクである「XR500R」系のものがベースとなっている。SRは500がボア×ストロークが87.0×84.0mmで、400が87.0×67.2mmとストロークのみで排気量を変更していたのに対して、GBは500が92.9×75.0mm、400が84.0×72.0mmとボア・ストローク共に変更されている。スペックにおいては同時期のSR500の最高出力32PS/6500rpmに対してGB500TTは40PS/7000rpm、SR400の27PS/7000rpmに対してGB400TTは34PS/7500rpmとGBが勝り、セルフスターターを備えたセル・キック併用を採用することで扱いやすさも備えていた。



今回の撮影車両は各部に走りを意識したカスタムが施されており、GBシリーズの魅力を倍増させている。



500はシングルシートのみの設定とされており、売れるパッケージだけを目指していない開発者の意思を感じさせる。



ライバルと言えるヤマハのSRは、1985年モデルでフロントブレーキをディスクからドラムへと変更してクラシックスポーツへと路線変更している。

 しかし、GB500/400TTは発売から3年後の1988年には生産中止となってしまった。それに対してSRは、500が1999年モデルまで、400は2021年まで生産されるという超ロングセラーモデルとなった。何が両車の運命を分けたのだろうか? もちろんその理由はいくつもあるのだろうが、GBの完成度の高さが大きな要因ではなかったかと思われる。

 元々SRはクラシック路線を狙っていた訳ではなく、クラシックスタイルにカスタムすることがブームとなっていた。それに対して元々完成したクラシックスタイルに仕立てられていたGBシリーズは、完成され過ぎていたが故にカスタムの素材として選ばれなかった。言ってみればカスタムするための「隙」の多いSRは時代と共にスタイルを変えつつカスタムの素材として愛された。SRのカスタムブームがどんどんと加速していく中、たった3年でGB500/400TTが生産中止となってしまったその「隙」の無さが原因のひとつだったのではないだろうか。

 SR400が生産中止となった2021年、新たに「GB」の名前を冠する「GB350」が発売される。ライバルとなるSRが生産中止となるタイミングでの市場投入ということもあり、スタイリッシュで扱いやすい「GB350」は多くのライダーの支持を得る大人気モデルとなっている。



「GB」の名前を復活させた「GB350」は、空冷SOHC348ccエンジンを搭載。シンプルでクラシカルなデザインが、現代の若者の心をとらえて人気モデルとなっている。



ラジアルタイヤの採用や、リアタイヤの17インチ+ワイド化など、よりスポーティに仕立てられた「GB350S」。フェンダーもショートタイプとなり、デザインもスポーティだ。



深いデザインのフェンダーや、前後分割タイプのシートなどを装備し、よりクラシカルなデザインに仕立てられた「GB350C」。

 
 

ホンダらしい完成度の高い走りのシングルスポーツバイクGB

 今回撮影させていただいたのは「GB500TT」で、この500は1985年に発売されてからモデルチェンジすることなく生産中止となったため一世代しか存在しない。GB500/400TT発売された1985年はレーサーレプリカブームの真っ最中ということもあり、スペックを追い求める若いライダーには正直見向きもされなかった。ただ、シングルバイクとしては極めて高い性能を持ち、ベテランライダーにとっては懐かしいスタイルが一定のファンを獲得した。現代においてはそのデザインや走行性能の高さが再認識され、生産台数も少ないため中古車の価格は上昇してきている。



ハンドルはセパレートタイプだが、高めに設定されているため前傾はそれほどキツくない。ステップは位置が少し高めだが、ほぼ体の真下にあるので違和感は感じない。



身長171cm、体重65kgのライダーが両足を着くと軽くかかとが浮く感じになるが、不安を感じることはない。



シンプルな丸型ヘッドライトは、アルミ製のヘッドライトステーで支えられる。各部のパーツのクオリティの高さは、GBの特徴のひとつと言える。



シンプルな同径の二眼タイプメーターを採用。文字盤はシックなブラックで、タコメーター内にインジケーターランプ類をまとめることでシンプルなコクピットを演出。



ヘッドライトの切り替え、ウインカー、ホーン、パッシングの各スイッチと、チョークレバーが取り付けられる左のスイッチボックス。



この車両はハイスロが取り付けられているため右のスイッチボックスが変更され、ブレーキマスターのリザーバータンクも別体型とされている。



クラシックレーサー風にデザインされたフューエルタンクは、17Lの容量を持つ。タンクのウイングマークは、本来下に「HM」ロゴの入る旧デザインのものだったはずだ。



「TT」と「HONDA」のロゴがエンド部分に入るシングルシートは、GB500TTの美しいデザインのポイントとなっている



スチール製のリアフェンダーに長方形のテールライトが組み合わされ、リア周りのデザインはシンプルにまとめられている。



ステップホルダーはアルミ製とされており、シングルシート設定の500にはタンデムステップは取り付けられていれない。

 エンジンは先にも触れた通り「XR500R」系をベースとした空冷4ストローク4バルブ単気筒498ccで、最高出力40PS/7000rpm、最大トルク4.2kgm/5500rpmを発生。乾燥重量149kgと軽量に仕上げられた車体を、力強く加速させる。車体はスチール製のセミダブルクレードルタイプフレームに、35mm径の正立タイプフロントフォークとツインショックタイプのリアサスペンションを組み合わせる。ホイールは前後18インチのスポークタイプでアルミ製のリムが奢られ、ブレーキはフロントがディスク、リアがドラムとされている。また、前後のフェンダーやサイドカバーをスチール製にするなど、各部に金属製の部品を使用することで質感が高められている。



500のエンジンはボア×ストローク92.9×75.0mmで、排気量は498cc。最高出力40PS/7000rpm、最大トルク4.2kgm/5500rpmという性能を発揮する。



エンジンはXR500Rのものをベースとしており、ヘッドに刻まれた「RFVC」は理想的な燃焼室形状である半球型燃焼室に4つのバルブを放射状に配し、優れた燃焼効率を実現する「Radial Four Valve Combustion Chamber」機構のことだ。



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