九州の中で特に鹿児島は、多くのバス事業者が縦横無尽に市内を運行しているが、長距離路線もかなりの充実度を見せている。多くの事業者で運行され、その中でも鹿児島交通は一段と路線を伸ばしている。
●トロピカル
○運行会社:鹿児島交通
○相手会社:阪神電鉄
○共同運行会社:九州産業交通
○乗車・撮影:2001年11月
(記事の内容は、2024年6月現在のものです)
執筆・写真/石川正臣
※2024年6月発売《バスマガジンvol.125》『思い出の長距離バス』より
※社名表記は運行当時のものです。
■鹿児島の各社は3社は積極的に九州から本州まで路線開業
九州からの夜行便は福岡から大阪へのムーンライトからはじまる。このムーンライトは好評で、福岡だけでなく九州各地から行先も関西など各地へ広がった。
次なるところは観光名所の多い、長崎、熊本、そして九州最南端の鹿児島となるが、鹿児島は距離が伸びてなおかつバス会社も多く、一部競合しながらほかの都市より苦労も多かった始まりといえる。
西日本最大の都市である大阪は、林田産業交通、南国交通、そして鹿児島交通の3社が3路線で開始した。次なる京都、名古屋、北九州は、3社と現地会社の4社で1路線を運行する形となった。
しかし鹿児島交通はそれ以外にも余力なのか営業力があるのか、大分へも、さらには神戸へも運行を開始したのだった。
■鹿児島の後に路線再編成で熊本にも立ち寄り乗客も増えた
今日も鹿児島のシンボル、桜島は活気があって噴煙を上げていた。それを思い出に神戸行きの「トロピカル」に乗り込む。
始発の「いづろ」は市南側に位置し、北上して西鹿児島駅へ。まだ新幹線はなく駅名は鹿児島中央ではない時代だ。そして一番の繁華街である天文館を左折して、鹿児島駅前を通らずに高速入りする。
高速をひた走って熊本県に入り、人吉インター、八代インターと県内で次々と停車しては乗車客がある。
御船インターを下りて熊本市内もこまめに停車し、熊本交通センターでほぼ満席。再び高速入りして消灯となった。
夜が明ければ播但道、第二神明経て神戸市内へ、三宮、甲子園、そして多くの乗降場所を経て、終点の尼崎にたどり着いた。
■数々の路線を顧みると大小の変化の中でスリム化された!?
相手会社は関西だの運輸業界だのに関わらず、全国的にも有名な阪神電鉄。関西らしい派手な車体のサラダエキスプレスは関西から中国、四国そして関東へも夜行便が運行され、そのあとは熊本と鹿児島の九州の2カ所であった。
過剰運行でこの2路線は合併し、鹿児島発の便が熊本経由になったのはそのせいで、実に多い乗車地により満席となった日も多かった。
その後、熊本に関しては九州産交バス大阪便が神戸に立ち寄っているが、鹿児島からは長距離路線は整理され、大阪3路線・名古屋・京都はなくなり、頑張っていたここ神戸も廃止となってしまった。
すでに本州へは撤退し、長距離路線は九州内のみとなった。しかし福岡便は九州の中核とあってか、強敵となった新幹線が登場してもこの3社とジェイアール九州バス、西日本鉄道と開業以来の盛況ぶりを保ち、元気に九州を横断している。
【画像ギャラリー】路線を整理し停車が増え多くの乗客が乗降した鹿児島交通「トロピカル」(10枚)画像ギャラリー