海外旅行の行き先と言えば、ヨーロッパなら必ず筆頭に上がる花の都パリ。東京で言うところの23区内に当たる中心部の人口は概ね210万人、周辺部を含むパリ都市圏全体では1200万人に達し、EU最大の都市でもある。
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(パリを走る路線バスの写真付きフルサイズ版はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■鉄道の補完をする路線バス
そのパリの公共交通機関と言えば、有名なのはメトロ(地下鉄)で、周辺都市との間を結ぶ鉄道路線とは、各路線のターミナル駅で接続し、市内中心部に網の目のような路線網を形成している。
フランスの鉄道は、元々私鉄として建設され、市内各所にバラバラにターミナルが建設され、相互の乗り換えが不便だったが、メトロが建設されたことで市内へのアクセスや乗り換えは便利になった。
しかし、広大なパリ市街地すべてをメトロで覆いつくすのは流石に無理な話だ。パリの路線バスは、鉄道やメトロの通ってない地域を通り、近隣の駅まで連絡するフィーダー輸送が主な役割となっており、各駅には周辺地域へ向けたバス路線が必ず接続している。
一方で、徒歩で5分も歩けば駅に辿り着けるパリ中心部にも、やはり路線バスが多数運転されているが、これは地域住民の利便性はもちろんのこと、バリアフリーという観点からメトロに匹敵する路線網を形成している。
停留所の数はおよそ12000カ所、路線数は周辺地域を含め、なんと300を超える、超巨大なバスネットワークなのだ。
■車椅子利用者のための路線バス
パリの地下鉄は、1900年に最初の路線が開業し、その後わずか30年で、ほぼ現在と同じ規模の13路線が建設された。
最新の14号線が建設される1998年まで、約70年間も同じ路線網だったわけだが、新たに建設する必要がないほどの路線網を戦前に作ってしまった。
裏を返すと、メトロの約9割は戦前に作られたもので、現段階ですべての駅のバリアフリー化は、周辺の土地や地下空間の埋設物の関係で、極めて困難となってしまった。
路線バスは、メトロの利用が困難な車椅子利用者にとって、重要な市内の移動手段でもあるのだ。現在、パリ市内で運行されている路線バスは100%低床化されており、車椅子利用者が乗車する際はスロープを出して対応している。
■車窓を眺めながら気軽にパリ散策
実際にパリ市内で路線バスを利用してみると、地下を走るメトロと違って町の様子を眺められ、乗車しているだけでパリの町を気軽に散策できる。
ただし、時に一方通行の細い路地を通過するなど、地図が無いとどこを走っているか把握することが困難になってしまう。
初めてパリを訪れて、いきなり路線バスを使いこなすのはなかなかハードルが高いかもしれないが、前述の通り鉄道やメトロの駅に何か所も接続しているので、迷いそうになったらメトロを見つけて下車してしまう方が良いかもしれない。
もちろん、最近はスマホの地図機能があるから、どこを走っているか地図で追い掛けながら乗車するのも楽しいと思う。