フジエクスプレスで臨時運転士として乗務する記者のバス運転士日誌は、運行できる路線が1つ増える話だ。路線選定をめぐる記者の密かなリサーチと、その後の運行管理者との攻防、決定した新たに訓練する予定ルートを紹介する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)
■中型車と小型車の違い
記者は企業契約のシャトルバスを除いて、路線バスで運行ができるのは最初に訓練した芝浦港南ルートと、後にやってほしいと言われた芝ルートである。芝浦港南ルートは中型車で、芝ルートは小型車のディーゼル車か電気バスで運行される。
運転そのものはどちらでもいいのだが、個人的な好みとしては中型車の方がしっくりくる。中型車は全長9m、全幅2.3mで、小型車は全長7m、全幅2mだ。バスの物理的な大きさはさておき、大きな違いは前輪の位置である。小型車は室内をノンステップでより広く取るために前輪は運転席の下にある。
よって前ドアは前輪の後ろに設置されているので、乗車する乗客に対応するために停車後はどうしても左後ろに振り向かなければならない。停車位置目標も中型車とは異なる。慣れの問題なのだろうが、個人的には営業運転する前提で考えれば、中型車の方が運転しやすいと思っている。
■高輪か田町か?
運行管理者から、そろそろもう1路線というオファーの空気を感じ、実際に話もあった。こういう場合に自分から路線を指定できるものではないが、できれば中型車で走る路線の方がいいと思っていた。中型車が入る路線は8路線中で3路線しかない。すでに運行をしている芝浦港南ルート、それに乗客として全線を乗ったことすらない高輪ルートと田町ルートである。
つまり、もう1路線の仮定で記者の希望でいけば高輪ルートと田町ルートの2路線からの選択になるのだが、運行管理者にはそのような空気を出しつつ、他の運転士に対して密かにリサーチを開始した。リサーチは簡単で、高輪と田町とではどちらが好みか、そしてその理由を聞くだけである。
正確に統計を取ったわけではないが、概ね田町ルートの方が好みだという運転士が多かった。好みというものは個人の性格や感じ方あるいは運転スタイルにより異なる。よって理由も聞いたわけだ。ところが田町ルートを選択した圧倒的かつ積極的な理由は見当たらず、個々の感じ方とはいえどちらも一長一短があるようだ。
ただし、高輪ルートの方が分が悪い理由は共通してただ一つで、京浜急行線の踏切による遅延である。これはその時の状況によるとしか言いようがない。たまたま電車が団子でやってくる時間に引っかかると当該便だけが遅延し、その他の便は定刻で走っているということもよくある。事故等による鉄道ダイヤの乱れでずっと開かないということでもない限り、ある特定の便だけが踏切で引っ掛かってしまうことがあるようだ。
よく利用する乗客もそれは分かっているようなのだが、遅延すれば遅れた時間分の乗客がバス停に増えるので、乗降に時間がかかりさらに遅延が増すという悪循環に陥る。すると次の便のバスが定刻で走ってきて追い付いてしまうということもあるようだ。これが多くの運転士にとってストレスになり、田町ルートと比較して分が悪い唯一の理由になっているようだ。
■田町ルートとは?
一方で田町ルートは全8路線の中で平均して乗客が多い路線で、花形的なルートと表現してもいいだろう。区間混雑の度合いでは芝浦港南ルートの方が乗客が多い場合はあるものの、全体を通してどの区間を見ても乗客が多いのが田町ルートである。主要な運行区間は田町駅東口から六本木ヒルズ、経路は一部異なるが折り返して田町駅東口までの循環である。
東京営業所のある芝浦車庫バス停発着の車庫便や、他のルートのバスを六本木ヒルズまで送り込むための回送便を田町ルートとして営業運転化した区間便もある。こうした送り込み車両を使用した区間便は小型車での運行である。常に混雑している大幹線路線なので、乗客が多い苦労はあるだろうが、通常では大きく渋滞するところはないので遅延してもそれほど大幅にということはない。
もっとも六本木ヒルズ付近の冬のイルミネーション時期には六本木けやき坂を通るので、まったく動かないということはあるようだ。しかしそれは1年のうちのごくわずかな数日間であり、あまり気にする必要はなさそうだ。


