鉄道趣味の一つに、路線が廃止になった後も姿を留めている、元々鉄道向けに使われていた建物や設備などを眺めて想いを馳せる、廃線系あるいは遺構系といったジャンルがある。ではこの鉄道をバスに置き換えると、似た要領で楽しめる場所はあるだろうか?
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWeb内本文上とギャラリーにバス遺構の写真があります)
■ありそうでない?「バス遺構」
駅舎やホーム、信号機、橋台橋脚、勾配標、線路まるごと等々……鉄道の遺構を思い浮かべると、最近は廃止早々に撤去されてしまったり、生き残っていたものが遂に寿命を迎えて取り壊されてしまうこともあるとはいえ、まだまだ各地にそれなりの数が残っている。
では、路線バス向けに使われていた施設や設備で、完全に役割を終えてしまった後も姿形を留めている例はどうだろう?
まず全くバスが走らなくなる場所が比較的珍しいのと、完全廃止になったとしても、途中の停留所であるなら片付けもすぐに始まり、形に残るのは道路に作られた引き込みレーン(バース)の跡くらいかもしれない。
一方でバスターミナルのように規模の大きい施設の場合、御役御免の理由が老朽化による建て替えや、移転の場合も元あった場所が再開発の対象になっていて、「バス施設」が「バス遺構」に変わるタイミングこそあるにせよ、それは工事が始まるまでの、ごく限られた期間だけのケースが本流ではないかと思われる。
■どんなものにも例外が……
とはいえ、バス遺構と呼べるものは全く存在しないかといえば、やはり例外がポツポツ出てくる。ここではそんな各地に残るバス遺構に注目してみたい。
現状その姿を留めていても、状況が急変する可能性はもちろん避けられないが、本シリーズでは、現地でその遺構を確認した時点において健在だったものを対象にした。
また、建物自体は他の用途で現役な一方、使われなくなったバス向け設備がそのまま残っている場所についても「バス遺構」に含めておきたい。
今回のバス遺構は兵庫県。瀬戸内海に浮かぶ淡路島に残る旧「洲本バスターミナル」ターミナルビルの、2026年6月時点での様子だ。
■旧・洲本バスターミナルのプロファイル
旧・洲本バスターミナルは、淡路島の中心地である洲本の町にある。現在の高速バス/一般路線バスの拠点になっている、洲本バスセンターから大通りを歩いて2〜3分の距離。
3階建て相当のビルを複数束ねたデザインで、大通りに面した側の1階部分を貫通させてバス乗り場を設けてあり、プラットホームが2面敷かれている。
旧・洲本バスターミナルが公共交通の拠点として使われ始めたのは1925年。当時の淡路島には淡路鉄道(後の淡路交通)が鉄道線を営業しており、元々は淡路鉄道線の「洲本駅」として開業した。
現在も残るビルは1950年代の半ば頃に完成。駅機能以外にも淡路交通の本社や、「洲本観光会館」の屋号で大食堂・特別食堂、名産品店、ステーションパーラー、人形芝居の舞台などがテナントで入っていたと言われる。
1966年に鉄道線が廃止なった後は、駅ホーム部分を路線バス乗り場に作り替え「洲本バスターミナル」に名を変えて営業を継続。島内主要地へ向かう一般路線バスの拠点となった。
2004年にバスターミナルの機能を、当初は高速バスの拠点として作られた、現在の洲本バスセンターへと移転。本社(営業所)はそのままに、ターミナル部分が同社の路線バスの待機スペースに転用された。
しばらくその状態が続き、2020年の初めに本社が分散移転、その際に合わせて待機スペースや車庫も移転した。以降洲本バスターミナルは利用されなくなり、今日へと至っている。
元・鉄道駅の元・バスターミナルゆえに、鉄道時代とバス時代とで2度オイシイ遺構とも言える。現在のビルが建ってからの利用期間を見るならバスのほうが長い。







