■VISONって何がある?
伊勢市駅を出て45分で、あっという間に終点のVISONである。次のバスまでは1時間ほどの待ち時間があるので敷地内を散策する。辺りに見えるもの全てがVISONを形成している建物になっていて、その敷地面積は54haと東京ドーム24個分にも相当する。
およそ70の店舗があり産直市場や県内の特産品のほか、バーベキューを楽しめたりアウトドア体験としてバギー走行体験や木材から家具やアート作品を作るワークショップ、また丘の上には三重大学とロート製薬の共同研究により実現した「本草エリア」がある。
VISON独自の「本草七十二候」という考えに基づき調合された72種類の薬草湯が楽しめたり、隣接する施設「ホテルヴィソン」では宿泊も可能だ。筆者も次の乗車に備えて昼食をテイクアウトし晴れた陽の下で美味しく食べた。
眼下には緑鮮やかな芝生が広がり、敷地内に設置されたラウンドアバウトと呼ばれる環状交差点を見ることができた。10時30分に次のバスがやってきた。先程とは違いラッピングが施されたバスである。こちらは空港アクセス港である津なぎさまちまで向かうバスだ。
VISONを訪れるための乗客降車を待って乗車したが、津なぎさまちへ向かう乗客は筆者1人だけだった。VISONを出発したバスは一旦敷地外の国道へ出てから再び伊勢自動車道へと入り北上を始める。30分ほど走行するとバスは津インターで高速を降りた。
ここからは空港アクセス港の津なぎさまちまで約5kmである。道路は整備されていて高速を降りて直線道路をひたすら走ると海に突き当たり、津なぎさまちが見えてくる。特に渋滞もなく順調に走行したバスは定刻の11時30分よりやや早く津なぎさまちに到着した。
■高速船乗り場
本港には津エアポートラインが運営する旅客船ターミナルと商業施設「ベイシスカ」があり、海の向こうにある中部国際空港(セントレア)へ向かう人や到着した観光客を迎える。
このバスに連絡するようにセントレアからの高速船が11時45分着に、そしてセントレアへ向かう高速船が12時発に設定されている。筆者はこのまま折り返しのバスに乗車するため近くを歩きながら待つこととした。
高速船が到着後、静かだった旅客船ターミナルは一気に騒がしくなった。迎えの車や臨時駐車場へ向かうワゴン車が出入りする中で、バス乗り場はあまり人の姿は見えない。バス停から少し離れた位置で休憩していたバスが停車すると筆者のほか2名の乗車があった。
往路は1人、復路は3人となったバスは港を離れていく高速船に別れを告げ出発した。帰りの便は内宮前行きとなり、途中乗降扱いを行うのはVISONのみという特急の名に恥じないバスである。伊勢自動車道から東に広がる伊勢平野を眺めながらバスは再びVISONに戻ってきた。
ここからは10名ほど乗車があり、終点の内宮前へと向かった。午後に入り伊勢市内の渋滞は激しくなっており、結局終点の内宮前には20分ほど遅れての到着だった。
■残念ながら区間休止へ!
今回は津なぎさまちから鳥羽バスセンターを結ぶ津伊勢空港連絡線に乗車した。三重交通からの発表の通り10月1日にダイヤ改正が行われ、津なぎさまちからVISONの区間と、内宮前から鳥羽バスセンターまでの区間が休止になり名称も「伊勢VISON線」と変更される。朝の1便と夕方の1便が伊勢市駅発着となり、その他の便は内宮前~VISONを結ぶ。
実際に乗車した感じでは伊勢市駅からの乗車もある程度あるものの、ダイヤの定時性を考えると内宮前までの渋滞を考慮しなければならず、であれば内宮前を起点とする方がいいと判断したのだろう。また津なぎさまちについては週末でも乗客は筆者1人という状況をみると、休止は仕方がないのだろう。
従前から鳥羽バスセンター発津なぎさまち行きという通しのバスは1往復しかないのだが、約2時間程度を県内中勢地区横断に費やす路線はなかなか魅力的だった。他の路線とも連絡できるようなダイヤだとよかったのかも知れないが特急という種別上、結節点が少ないのが利用のしにくさの1つになったのかもしれない。
伊勢市に向かう神宮参拝客は多いのだが、セントレアから伊勢に行く第一選択肢は名鉄+近鉄の鉄道乗り継ぎであり、高速船+特急バスというルートはマニアな経路になっているのも事実だ。
高速船・バス・自治体の連係プレーができておらず、運賃や所要時間の面で鉄道に対抗し切れていない点やPR不足なのも利用客低迷の要因であることは疑いようがない。今後の改善点だろう。
乗れるチャンスは少ないかも知れないが、セントレアと描かれたラッピングも見納めになるかもしれない。鳥羽や津の豊かな海を眺めながら神宮参拝もアリではないだろうか。
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