物価の高騰や運転士不足等で、今年は昨年に引き続きバス運賃の値上げが全国的に実施される可能性が高い。それ自体は仕方のないことだが問題はその後だ。値上げ後の市民感情について考察してみる。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージで本文とは関係ありません)
■運賃値上げの背景
物価、特に燃油の高騰によりバスの運行経費が上がっているので運賃の値上げは仕方のないところだ。スーパーや飲食店の価格を見ればいつの間にか数割も上がっていることも珍しくない。
バス運賃の値上げ時に挙げられるもう一つの理由が運転士不足問題だ。これも減便や路線廃止を積極的に進めているバス事業者が言うのだから、一部の市民団体が反対運動を繰り広げている以外には特に値上げに反対の反応は見られない。
現実問題として値上げは市民生活に影響を与えるが、反対運動を行いそれがために家の近くを通る路線が廃止されてしまっては元も子もない。路線廃止よりはマシといったところだろうか。事業者も家計に重くのしかかる通学定期運賃は据え置く等の配慮はしていることも忘れてはならない。
■値上げのその後
燃油高騰と運転士不足を理由にしている以上は運転士の待遇が改善されるものと推測される。その結果、運転士の採用ができ、路線廃止や減便が解消されるものと地域住民が期待するのは当然の成り行きだろう。
これでもしも値上げしただけで減便や路線廃止の流れが止まらなければ、事業者への風当たりが強くなるのも容易に察しが付く。ライドシェアが現実のものとなり、タクシーの配車が容易になれば運賃はまったく異なるものの、バスの需要そのものが下降線をたどる。
■自家用車かタクシーにシフト?
こうなる前に事業者は運転士不足を解消し、路線や便数を実情に沿ったものに戻す必要があるが、そう簡単ではないだろう。沿線住民がバスに見切りをつけて自家用車やタクシーにシフトしてしまえば、二度と戻っては来ない。
よほどの事情や大都市でもない限り、新規の鉄道路線が開業することは考えられない。バスは比較的自由に路線を設定できるが、一度廃止された路線沿線は「交通不便な宅地」認定されてしまうので、最寄り鉄道駅までの二次交通は重要なインフラなのだ。