過密な交通網に揉まれながら日々を過ごした首都圏の路線バス車両の面々。引退した後すぐ解体工場送りになることなく、他の場所へと渡り再就職するものが結構いる。
文・写真:中山修一
(元・首都圏のバスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■大都会を後にして
首都圏の大手バス事業者の場合、新車で導入したバス車両を寿命が来るまで使い続けるのは非常に稀で、大体どこも登録から20年経たないくらいのペースで入れ替えていく。
事故で廃車になったり、元々調子の悪い個体を除けば、まだまだキッチリ走る状態。そのため、首都圏で役目を終えたバス車両が、中古車として安価に販売されたり、譲渡の対象になったりすることが良くある。
なによりも安く車両を揃えられるのがメリットであり、コストを抑えたいバス事業者が、車両を引き取って自社のバス路線に再投入させる流れも割と普通だったりする。
■どこから来たのか、見分けってつくの?
京成バスや西武バス、東急バス、神奈中バス、都営バス、横浜市営バスなどなど、引退したバス車両を他の事業者に放出している首都圏のバス事業者は、公営民営問わず様々だ。
しかし、元首都圏の車両が引き取り先の事業者に渡った後、車体のカラーが塗り替えられるのはごく自然であり、そうなれば元々どこのバスだったのか、パッと見ても区別が付かないのでは?という疑問がわく。
趣味で触れ合うバスにおいては、初見で何となく「これ東京にいたっぽくね?」と怪しんでから後で調べて「あ〜、やっぱり元東急バスだった」と納得するような、事後確認型の楽しみ方はもちろんアリだし、極めてメジャーなスタイルと言える。
ほか、例えば神奈中バスの正面脇に付いている「運賃後払い」などを掲示させる小窓といった、その事業者のバスにしか付いていないパーツや設備・装置の類から“出身地”を判別するテクニックも挙げられる。
マニア目線すぎると言ってしまえば、そうかも知れない。ところが中には、ぜんぜんマニアックな工夫を凝らさなくても、ちょっと見ただけで何処の誰だったか察しがついてしまうバスだっている……元・都営バスだ。
■越後の国でバスウォッチしていると……
つい先日、新潟県の長岡及び柏崎駅前のバスターミナルで軽くバスウォッチをしていると、それぞれ1台ずつ、同エリアの路線バス網をカバーする越後交通の、ある車両に目が止まった。
1台目は角目2灯、2台目は角目4灯と、形状の違いはあるものの、どちらも日野自動車が製造した「ブルーリボンII」と呼ばれる車種だ。後で確認したところ、前者が2007年式で後者は2005年式であった。
越後交通といえばシルバー主体に赤い帯が入った、東急バスに良く似たボディカラーが特徴。それをもってしてもこの2台、一目見るなり「君は元・都営バスなのね」と思った。
■日本一ライトな判別方法!?
では、どこを見て元・都営だと分かったのか。注目するポイントは車内シートのモケット。都営バスのモケットは柄が特別で、マスコットの「みんくる」ちゃんがたくさん描かれている。
越後の国に渡っても、車内でそのまま愛嬌を振りまいているので、ついつい二度見してしまうこと請け合い。
しかもこの紺色地に「みんくる」ちゃんの柄、ボディの塗装より主張が強いんじゃないかという勢いで、外からでも物凄く目立つのだ。
バスの専門知識を一切知らなくても、マスコットキャラクターで判別できてしまう一般性の高さ、というのは他にちょっとない。
もしかすると、そのバスが元々働いていた出身地を知るための判断材料としては、日本一ライトかもしれない。
東京じゃない場所で「みんくる」ちゃんに出会える意外性もまた凄く楽しいので、これはこのまま残しておいてもらいたいものだ。