両備バスの西工E型特急車が2022年12月に引退を迎えた。営業所で行われたイベントの模様を読者提供の写真とインタビューによりお伝えする。引退した同社のF0431の勇壮をお楽しみいただきたい。
文:古川智規(バスマガジン編集部)※写真はバスマガジン本誌読者提供
■路線車シャシーでありながら特急車として配置!!
このバスは三菱ふそう・西日本車体工業製のE型で、シャシーはエアロスターだ。トップドアのワンステップという珍しい車両で、事業者の要求でほぼどんなものでも作ってしまう西工の幅広さが具現化された1台だ。
西工の本家である西鉄にもない両備バス専用仕様ともいうべき作品で、パッと見は高速車だが、ベースが路線車のエアロスターなのでハイデッカーではない。
当該車は車番F0431で、岡山と玉野・渋川を結ぶ特急専用車として配置され、およそ90分をかけて走る路線だ。
■事前告知も行われたイベント
同社ではF0431の引退に合わせた営業所でのイベントを事前に告知しており、パンフレットまで作成して配布していた。ラストランは12月11日だった。
最終運行日当日は、営業車として運用に入り、玉野営業所に到着後は他の車両との撮影会や部品等の即売会が行われた。
■ところで西工E型ってなに?
若干マニア向けな内容になってしまったが、西工E型とはどんなバスなのか。バスのシャシー(骨組み)は、路線車用と高速車や貸切車用でそもそもブランド(設計)が異なっている。路線車用は以前はツーステップやワンステップ、現在ではノンステップが主流のいわゆる路線バスタイプだ。
運用路線に応じて全長はいくつかの種類があるものの、乗降が頻繁なので低床で幅広いドアや定員をできるだけ多くするのが特徴だ。
一方で、貸切車用は高速バスや観光バスに使われるトップドアのハイデッカーやスーパーハイデッカーで、アイポイントが高いので眺めがよく、リクライニングシートを装備して快適性を重視している車両が多い。
しかし事業者によっては、あるいは自家用(ホテルや工場の送迎車や通学用のバス)としては、高速巡行するパワーを持った車両はいらないが、中ドアもいらず、できれば高級感も欲しいしリクライニングシートも入れたい。
そんな需要に西日本車体工業が応えて作ったボデーが、路線車に貸切車の顔を付けてトップドアにしたE型だ。
両備バスに納入されたこのバスは、路線車のシャシーをストレッチ(延長)した、長尺と呼ばれる貸切バス並みの迫力のある車両だ。
トップドアながらワンステップに収め、乗降性と快適性を両立してドリンクホルダーや充電スポットを備えたリクライニングシート装備車は事業者のことがよくわかっている西工の技だ。
西本車体工業は西日本鉄道(西鉄)の子会社だったこともあり、またバス事業者系唯一のボデーメーカーだったので西日本では比較的ポピュラーなバスだ。
残念ながら当時の不況の影響で会社が解散してしまったので、西工製のバスは現在走っている限りだ。東京都内では都営バスや関東バス等でまだ乗車することは可能だが、徐々にその数を減らしている。