Be-1、フィガロ、パオ、エスカルゴ――パイクカーと聞いて、皆さんが真っ先に思い浮かべるのは、どのクルマでしょうか。
当時は現代と違って衝突安全の基準が低く、レトロ調でシンプルなデザインの車内には現在では必須のエアバッグなどは装着されておらず、ドアやボディも薄っぺらく作られており、それがパイクカーとしての魅力でもありました。
また当時はバブル景気の真っ只中。冒頭で挙げたパイクカーシリーズを生み出した日産としても、新車開発にかける予算があり、こうした意味でも、今となっては作ることが難しいクルマたちです。
時代のあだ花となってしまった日産のパイクカーたち。その功績を振り返りたいと思います。
文:吉川賢一、写真:日産
日産のパイクカーはここから始まったBe-1(BK10型)
1982年登場の初代マーチ(K10型)のプラットフォームを使用したBe-1。このクルマから、日産のパイクカーが始まりました。
ベースとなったK10型マーチは角ばったボディデザインをしていましたが、Be-1では一転、ボディの各部が丸くなり、さらにはレトロ調のデザインが施され、当時としては革新的なデザインで登場しました。
丸いボディシェイプを出すため、フェンダーには樹脂素材を採用するなど、当時の最新技術が採用されていました。
1985年の東京モーターショーに参考出品し、大好評を得たことで、日産は限定生産1万台の販売を決定。
カタログのメインカラーとなった明るいイエローのボディ、まん丸でかわいい表情を作り出すヘッドライト、シンプルですっきりしたインテリアなどが好評で、正式に発売を開始した直後に注文が殺到。
わずか2ヶ月で予約がいっぱいになりました。
レトロ調をさらに色濃くしたパオ (PK10型)
1987年の東京モーターショーに参考出品された後、1989年から発売開始したのがパオです。
開閉する三角窓、外付けのドアヒンジ、上下2分割するリアクオーターウインドウ、ボディに入ったスリッド模様など、Be-1よりもさらにレトロ調を強めた秀逸なデザインをしています。
クルマが古びた方がカッコよく見える、不思議な魅力を持ち、未だに中古車界隈では高額で取引されています。インテリアにも注目ポイントが多数あり、
ドアやインパネ、ダッシュボードなどは、ボディカラーと同一色で、シフトノブやステアリングホイール、メーター、スイッチノブなどは、アイボリーのクラシカルな雰囲気に統一されています。
Be-1の好調な販売を受け、パオは3ヶ月間の受注期間をもうけ、その間に予約された台数分を販売する戦略が採られました。
これが功を制し、なんと5万台以上の受注を獲得。Be-1を上回る記録となり、最長1年半もの納期待ちが発生しました。
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