自販連(日本自動車販売協会連合会)が発表した2020年上半期(1~6月)の販売台数によれば、トヨタ ライズが5万8492台で 1位に輝いた。今年デビューのフィットは3位、ヤリスは4位である。
兄弟車のダイハツ ロッキーも1万7455台の21位で健闘している。
絶好調のライズ&ロッキーの商品性をあらためて検証し、その弱点を探ってみよう。
文:鈴木直也/写真:TOYOTA
【画像ギャラリー】2020年上半期販売台数1位はダイハツ ロッキーのOEM、トヨタ ライズ!
■快挙! 新車登録台数トップはまさかのOEM車!?
先日発表された2020年上半期の新車登録台数ランキングは、トヨタ ライズが5万8492台でトップとなった。
昨年11月の東京モーターショーでダイハツ ロッキーがサプライズデビューした際には、ジャーナリストをはじめ関係者の多くから「これは売れそう!」という声が上がっていたが、まさか販売ランキングトップに躍り出るとは予想外。
ご存知のとおり、ライズはダイハツ ロッキーのトヨタ向けOEM車だが、ダイハツ開発のクルマが販売首位ゲットというのは、こりゃ史上初の快挙といっていい。
もちろん、今年はコロナ騒動の影響でクルマ全体の販売台数が急減しているし、8463台差で3位となったヤリスや4位のフィットが、ともに3月発売で出遅れたという事情もあるのだが、それでもトップはトップ。相撲で言えば「平幕優勝」みたいな珍しいケースといえる。
■ライズの勝因は市場投入のタイミングとお買い得感
では、何故ライズ&ロッキーがこれほど人気を呼んだのかだが、やはり最大の要因は、伸び盛りのコンパクトSUV市場に、いいタイミングでお買い得商品を投入できたことだと思う。
世界的にSUVがブームといわれて久しいが、このトレンドはミドルクラスの車種からはじまって、上級車種にそのブームが波及して行った経緯がある。
台数的に中核となっているのはRAV4やCR-Vなどが居るセグメントだが、むしろ競争激甚なのはそれより上のプレミアムSUV市場。逆に、価格レンジの下の方へ行くほど、ニーズに対して車種バラエティが少なくなる傾向があった。
そこに、タイミングよく登場したのがライズ。デザインはRAV4の弟分という感じで、小さくてもSUVらしいタフな存在感があり、3気筒1Lターボ+D-CVTで走りも悪くない。そして、なにより価格がお買い得プライス。
ヒット商品の必要条件を漏れなく押さえていたからこそ、東京モーターショーで関係者が一様に「こりゃ売れるぞ!」と評価したわけだ。
その中でも、ユーザーへの訴求力がいちばん大きかったのは、やはり「お買い得感」だったと思う。
ライズのエントリーモデル「X 2WD」の価格は167万円から。2WDの最上級車種「G」でも189万円に収まっている。
4WDが必要ならプラス24万円という設定で、「X 4WD」の191万円〜「G 4WD」の213万円まで。バリエーション設定はシンプルでわかりやすい。
■スペックにも『安物感』なし! 『良品廉価』を見事に体現
さらに、エンジン・パワートレーンなどのメカニズムは、バリエーションに関係なく全グレード共通。1L 3気筒ターボ(98ps/14.3kgm)とパワースプリット機能を備えた新型のD-CVTの組み合わせで、4WDシステムは「業界標準」のジェイテクト製電制カップリング装備となる。
つまり、グレード間格差は装備品の違い程度で、ベーシックモデルでも安物感がほとんどない。実際に売れるのが上級モデルだったとしても、お買い得イメージを印象付けるという意味ではプラス要因。ダイハツが狙った「良品廉価」というキャラクターが、見事に体現されているわけだ。
この「良品廉価」というキャラクターこそが、ライズのいちばんの強みといっていい。
そりゃ、自動車ジャーナリスト的な評価をすれば、ライズにはイマイチな部分がなくはない。
電動パワステ(EPS)の原価をケチりすぎてステアフィールが悪いとか、コスト的な制約からターボエンジンの燃費効率が水準以下とか、足回り(とくに17インチタイヤ仕様)でドタドタ感が気になるとか、指摘しようと思えば欠点はある。
ただ、「じゃ、そういう部分を改善するからベース価格が200万円を超えてもいい?」といわれると、やっぱりライズの立ち位置はそうじゃないんだよねぇ。
だから、トヨタのヤリスクロスとか日産キックスとかスズキのジムニーシエラとか、ライバル的なクルマは思い当たるにしても、ガチでぶつかるというイメージじゃない。
ぼくの予想では、ライズにはほぼ死角なし。抜群のお買い得感を武器に、しばらくコンパクトSUVのトップを走り続けるだろう。
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