■布より革とはかぎらない!? シートにまつわる誤解とトリビア
●革シートだからといって高級とは限らない?
自動車黎明期には「革シートよりもモケットのようなファブリックシートの方が高級」と言われている時期があった。
これは馬車の名残で、馬車の操縦席は屋根もなく雨に濡れることもあるので丈夫さを理由に革が使われ、パッセンジャーが乗るキャビンはフカフカとしたファブリックを使うことが多かったため「革は実用品、ファブリックは高級品」とイメージがあったからである。
まあ現在はそんなイメージもないので、好きな方を選ぶのがいい。
なお「モケットか革」と迷うクルマの代表としてトヨタセンチュリーがある。センチュリーのシートの座り心地はどちらも快適という大前提で、「パンとした張りのあるモケット」と「フンワリした革」と非常に甲乙つけがたく、やはり好きな方を選ぶのが吉だ。
筆者は先代センチュリーのモケットシート仕様に乗っていたが、18年落ち、走行14万5000㎞という個体でどういう使われ方をしていたのかも不明だった。
それでもモケットシートは「リアシートは張り替えてあるのかと思った」という人がいるくらい劣化のない良好なコンディションで、素晴らしい耐久性を備えていることを確認した。
●ビニールシートは安物?
昭和の時代は乗用車でもビニールシートのクルマが珍しくなかったが、ビニールシートは下級グレードに使われることが多かったせいなのか「安物」というイメージが強いようで、現在ビニールシートを使うクルマは軽トラックくらいである。
しかし、ビニールシートは「汚れてもタオルで拭けばいい」という手入れのしやすさが大きなメリットだ。
さらに、平成初期までのベンツでは高品質なビニールレザーのシートもオプション設定されており、ベンツのビニールレザーのシートは革シートと区別がつかないことも多かったくらいクオリティが高かったという。
こういった話を聞くと「ビニールシート=安物」とは言い切れず、現在乗用車でビニールシートに近いのは日産エクストレイルの合成皮革シートくらいだが、SUVブームも考慮すると「手入れが簡単で汚れを気にせず使えるいいビニールシート」を設定するクルマがあってもいいように思う。
●シート表皮でサポート性を向上したGT-R
日産 GT-Rの生みの親である水野和敏さんが手掛けていた頃のGT-Rの2012年&2013年モデルには、サーキット走行を視野に入れリアシートを外すなどしたトラックパックというオプションが設定されていた。
トラックパックには、シート形状は標準のまま、体が接触する部分のシート表皮を専用ハイグリップファブリックとすることで、シート形状ではなくシート表皮でサポート性を向上した革とのコンビシートも含まれていた。
これは水野さんが手掛けたレーシングカーに盛り込んだアイデアを使ったものだそうで、「シート表皮でクルマは大きく変わる、シート表皮にはこんな使い方もある」ということがよく分かる好例だ。
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シート表皮はいろいろあるが、選択肢のある新車を買う際には見た目やイメージも大事だが、やはり自分の好みや使い方に合ったものを吟味して選ぶことが重要だ。
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