「無線給電道路システム」って何だ!?大成ロテックが描く道路の未来予想図


 ジャーナリストの大塚英樹氏は1000人以上の経営者に密着取材し、新しいビジネスモデルが開花するまでの揺籃期も見つめてきた。あの先進的な技術はどのような発想、企業風土の中で生み出されたのか。大塚氏の最新刊『成長する企業トップの成功戦略を解明する ニューノーマル時代を乗り切る経営』(講談社ビーシー/講談社)には、そんなイノベーションの誕生秘話にも触れている。中でも大成建設グループの道路舗装会社・大成ロテックのエピソードは、『ベストカー』の読者にも興味深く映るだろう。クルマの自動運転時代をいち早く視野にとらえた画期的なシステムとは何か。大塚氏が西田義則社長(写真)へのインタビューを通じて、快適な道路の実現に向けた未来予想図を描く同社の革新的事業に迫る。

文/大塚英樹
写真/中村介架


■社名の頭文字「ROTEC」に込めた思い

 持続的成長を遂げている企業の経営者に共通するのは、必ず強い使命感を持ち、それに支えられた情熱を持っていることだ。使命感がなく、野心だけでトップになった人間は権力を握った瞬間から必ず、堕落する。そんな経営トップを私はたくさん見てきた。

 では、使命感とは何か。それは「世のため、人のため」「顧客に尽くす」という思想からくる思いだと言える。

 西田義則は、「世のため、人のため」という創業以来の企業文化を継承するという使命感を持っている。企業理念「よりよい環境を創造する」、経営理念「我々、株主と経営者と従業員とは企業理念を共有することによって、(略)それぞれのもてる力、資本・経営・労働・技術を結集して快適環境を創造する。創造する快適環境の優れた価値によって、社会に貢献し、顧客に奉仕する」を唱え、「テクノロジー=技術の研さんに努め活用しよう」「チャレンジ=さあ、挑戦しよう」など、社名の頭文字(ROTEC)に由来する5つの行動理念を訴えるのは、全て使命感からである。

 では、西田の使命感はどこから生まれたか─。家業の土木建設業の社長になる志を立てていた西田は若い頃から、大成建設の創業者であり、大倉財閥を設立した大倉喜八郎に心酔し、その哲学や考え方を頭に叩き込んできた。とりわけ語録にある「自主自立の精神」「失敗はよき教訓」「楽しんで仕事をする」「小さな成功」「先へ先へ進もうとする進一層」(『大倉喜八郎かく語りき』東京経済大学)などの生き方は自らの信条ともなっている。

 企業にとって、「世のため、人のため」の仕事とは、自社の技術や製品・サービスを顧客に提供することを通じた社会への継続的な貢献である。そのためにはまず、必要な利益を取ることが絶対条件となる。その点、西田は、利益は目的ではなく、手段として必要。「研究・技術開発が先、利益は後」、つまり、社会課題を解決すべく革新技術を開発すれば、利益は自然とついてくると考えるのだ。

■走行中に充電完了?電気自動車時代を見据えた画期的研究

 それだけに、西田は将来を見越した長期的視点での社会課題解決のための技術開発と、新規事業の展開にこだわる。

 例えば、自動車の自動運転化を推進するための技術の追求がある。前述した通り、大成建設、豊橋技術科学大学と共同で、走行中の電気自動車などに連続的に無線で給電することが可能な「無線給電道路システム」の実用化研究に取り組む。すでに2016年、同社が両者の協力を得て材料や構造を研究して作ったアスファルト舗装の給電可能な試験走路で、電動カートが有人で走行する実験に世界で初めて成功している。

 また、植物由来の「夢」のアスファルトの開発がある。同社は「木」から作るアスファルトの製造技術を実現することにより、石油由来のアスファルトから脱却する取り組みを行っている。

 新規事業も、地球環境問題の解決に貢献する再生可能エネルギーの中小水力発電事業に取り組む。発想の原点は、環境にやさしい再生可能エネルギー事業への参入で、「少しでも社会に貢献したい」であった。

 西田がエネルギー事業に関心を持ったきっかけは、自ら事故対応の指揮を執った福島第一原発事故だ。以来、CO2を排出しない再生可能エネルギー事業の重要性を確信する。もう1つは、大成ロテック自体がアスファルト合材製造過程や、舗装工事で多量のCO2を排出。その削減策に腐心していたという経緯があった。

 その他にも、西田と同社は社会課題解決のために、長期視点での革新的技術・事業の研究開発に力を注いでいる。

 西田が語る。

「社員が夢を語り、生き甲斐を感じる会社にしたい。そのためには、『世のため、人のために仕事をする』という企業文化を醸成していかなければなりません」

 2021年6月、創立60周年を迎える大成ロテック。快適環境の創造に貢献すべく、西田率いる同社の戦いが続く。

西田義則(にしだ・よしのり)
 1955年、富山県生まれ。金沢大学工学部卒業後、1978年に大成建設に入社。主に地下鉄工事等シールド工法の現場を担当し、2012年に執行役員東京支店副支店長、2015年に常務執行役員土木本部副本部長を歴任。2016年に大成ロテック代表取締役社長に就任し、現在に至る。「役員は自ら汗をかくべき」と、課題解決のために自ら現場に出向くなど、「率先垂範」の経営を信条としている。


 使命感と幸運思考、確信と覚悟の経営で企業を成功へ導く…「新・成功の法則」を解き明かした大塚英樹著『成長する企業トップの成功戦略を解明する ニューノーマル時代を乗り切る経営』(講談社ビーシー/講談社、2020年11月27日発売)に登場する経営者は下記の通り(肩書表記は、本書出版時のもの)。

 越智仁・三菱ケミカルホールディングス社長、若林久・西武鉄道前社長、中山泰男・セコム社長(現会長)、永野 毅・東京海上ホールディングス社長(現会長)、尚山勝男・アサヒグループ食品社長、杉江俊彦・三越伊勢丹ホールディングス社長、服部一郎・アニモ会長、小山正彦・プリンスホテル社長、布施孝之・キリンビール社長、原典之・MS&ADホールディングス社長(三井住友海上社長)、塩澤賢一・アサヒビール社長、中田誠司・大和証券グループ本社社長、車谷暢昭・東芝会長CEO(現社長CEO)、芳井敬一・大和ハウス工業社長、金川千尋・信越化学工業会長、西田義則・大成ロテック社長、中内功・旧ダイエー創業者

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大塚 英樹(おおつか・ひでき)
 1950年、兵庫県に生まれる。ジャーナリスト。テレビディレクター、ニューヨークの雑誌スタッフライターを経て、1983年に独立し、新聞、週刊誌、月刊誌で精力的に執筆。逃亡中のグエン・カオ・キ元南ベトナム副大統領など、数々のスクープ・インタビューをものにする。現在は国際経済をはじめとして、政治・社会問題など幅広い分野で活躍。これまで1000人以上の経営者にインタビュー。ダイエーの創業者・中内功には1983年の出会いから、逝去まで密着取材を続けた。
 著書には『流通王─中内功とは何者だったのか』『柳井正 未来の歩き方』『作らずに創れ! イノベーションを背負った男、リコー会長・近藤史朗』『会社の命運はトップの胆力で決まる』(以上、講談社)、『続く会社、続かない会社はNo.2で決まる』(講談社+α新書)、『「使命感」が人を動かす─成功するトップの絶対条件』(集英社インターナショナル)、『社長の危機突破法』『確信と覚悟の経営』(以上、さくら舎)などがある。

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