■デザインのベースとしたのは初代アルシオーネ
田島敏弘社長は、スバルのエンジニアに高価格帯のクルマを開発させようと意欲を燃やし、叱咤激励している。
このスバル社内の意識改革から生まれたのがレガシィであり、アルシオーネSVXだ。
両車ともプラットフォームやサスペンションを新設計しただけでなく、パワートレインもゼロから設計している。ジウジアーロが描いたレガシィは、北米の販売サイドから「デザインがスポーティすぎて売りづらい」と反論が出た。
フォルムは、のちに登場するアリストと似ていたようだ。そこで社内デザイナーが新たにスケッチを描いている。
レガシィの開発が佳境を迎えた時、イタリアからアルシオーネSVXのモックアップが日本に届いた。
ジウジアーロがデザインしたのは、日本の小型車枠に収まる5ナンバーサイズの2ドアクーペである。これは初代アルシオーネをベースにしていたからだ。ノーズ先端にはポップアップ式のセミリトラクタブル・ヘッドライトを配していた。
■1989年秋「スバルSVX」を名乗り鮮烈デビューを飾る
パワーユニットは、レガシィに搭載するために開発された2LのEJ20型水平対向4気筒DOHC4バルブか、そのターボ仕様を想定している。
レガシィと並行して開発を進めていたが、次世代エースのレガシィの開発を最優先したため、アルシオーネSVXの開発は先送りされてしまう。
レガシィの量産化のメドが立ち、アルシオーネSVXの開発が再開されたが、バブル景気が吹き荒れたし、メイン市場は北米なので、ボディをサイズアップしている。
また、北米では上質な6気筒エンジンを好む人が多いため、水平対向4気筒をベースに6気筒化に挑むことにした。そのためフロントまわりを新たにデザインし、全幅も広げている。
このプロジェクトの成果が人々の前に姿を現わすのは1989年秋だ。
フランクフルト・モーターショーで鮮烈なデビューを飾っている。そして同年10月に幕張メッセで開催された第28回東京モーターショーのスバルブースに国内初披露として展示された。
このときは「スバルSVX」を名乗り、流麗なクーペボディと美しいホワイトのインテリアを披露している。その脇には水平対向6気筒エンジンや4WDシステムなども展示された。
■上質感のあるインテリアと意のままの走りが楽しめるクルマ
それから2年後の1991年9月、アルシオーネSVXが秘密のベールを脱ぐ。
エクステリアはショーカーと大きくは変わっていない。全幅は1770㎜だ。大胆なグラスtoグラスのラウンドキャノピーとスムースなガラスの昇降を実現するため、パーテーションを設けた。
また、紫外線と赤外線をカットするUVガラスを採用したグラスキャノピーからトランクリッドへと続く部分も量産するのが難しかったが、ポリエステル樹脂を使って変形させることなく美しいフォルムを実現している。傾斜の強いフロントガラスのゴムシールの開発にも長い時間を費やした。
インテリアは大人の香りが漂う上質感が売りだ。インパネからドアトリムまで流れるような一体デザインとし、逆L字型のメーターパネルを組み込んでいる。サイドウインドーは割り切り、開口面積は小さい。
クオリティの高さはそれまでのスバルとは比べ物にならない。上級グレードのバージョンLはレザーシートを標準装備した。
エンジンはEG33と名付けられた3318ccの水平対向6気筒DOHCだ。最初はEJ20型エンジンを6気筒化した3Lエンジンを開発していたが、もう少し余裕が欲しいと要望が出たため、途中で排気量を10%引き上げて3.3Lとした。
最高出力は240ps/6000rpm、最大トルクは31.5kg-m/4800rpmだ。トランスミッションは電子制御4速ATだけの設定としている。
サスペンションは前後ともストラットだ。駆動方式はスバルが得意とする4WDだが、当時の最先端を行く不等&可変トルクスプリット配分の電子制御(VTD)4WDを採用した。センターデフに加え、電子制御LSDを装備し、前後輪のトルク配分を自在にコントロールできる。
ハンドリングは軽やかで、スタビリティ能力も高い。
また、バージョンLは4輪操舵の4WSも装備するから、狙ったラインにピタリと乗せることが可能だった。4WDであることを忘れさせるほどコントローラブルで、このサイズのクーペにもかかわらず、意のままの走りを楽しめた。
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