北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。第4回は、あざとかわいい顔の「北の狩人」エゾクロテンです。
イタチの仲間で、イタチ科の動物には、他にオコジョ、フェレット、カワウソ、ラッコなどがいます。みなかわいらしい顔が特徴ですね。
北海道固有の野生動物で明治時代までは北海道全体に生息していたようですが、明治大正時代に、毛皮をとるために乱獲され、今では道北や道東の一部の森にしか棲んでいません。
1年を通じて、北海道の山に入って撮影をしている圭さんでもめったに出会うことがないというエゾクロテン。キュートな顔をぜひご覧ください。
写真・文/佐藤圭
画像ギャラリー……エゾクロテンは狩りの最中、顔つきが変わる!?
木登り上手の優秀なハンター
今回紹介するのは、イタチの仲間のエゾクロテンです。
天井に張り付くほど、木登りが上手なので、テンと名付けられたという説があります。
アイヌ語では、カスペキラ(しゃもじを持って逃げる者)。いたずら者というイメージが強かったんですね。
名前を漢字で書くと「黒貂」となりますが、エゾクロテンの毛皮は白っぽい黄色で、黒いのは足としっぽだけです。
尾まで含めた体長は50cmほど。スマートでしなやかな体をもつものが多いイタチ科の動物のなかではズングリムックリなほうです。目がクリクリとして愛嬌のある顔なので、被写体としてとても人気があります。
しかし、森に暮らすエゾシマリスなどの小動物や小鳥たちにとって、エゾクロテンは恐ろしい天敵です。果実も食べますが、主に肉食で、直径が2cmほどの小枝でも軽々登っていくので、一度狙われると逃げるのがたいへんです。
チャンスがあれば、自分より大きなエゾユキウサギを補食するほど優秀なハンターなんです。ときには、キタキツネとケンカするほど気性が荒いです。
冬眠はせず、雪に覆われる極寒の冬でも元気に活動しています。雪の中では目立ちやすいので、なるべく天敵のタカやワシなどの目に付かないように慎重に行動しているようです。
活動時間は定まっておらず、昼夜活動するので、昼間に見つけられれば、こんなかわいい顔を撮影することも可能です。とはいえ、警戒心が強く、動きも速いので、出会う機会はめったになく、撮影ができた日はとても幸せな気分です。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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