■RAV4とCR-Vを比較すると..
RAV4に比べてCR-Vは、オーソドックスなシティ派SUVだ。ターボエンジン搭載車は、荷室に3列目のシートを装着する7人乗りも用意するが、特に強いセールスポイントではない。
しかもCR-Vは価格が高い。1.5Lターボの4WD・EX(5人乗り)は358万1600円だ。これに相当するRAV4は、2Lノーマルエンジンの4WD・Gで、価格は339万1000円になる。動力性能はターボのCR-Vが優れるが、価格に約20万円の差が生じた。
そしてRAV4では価格の最も安いグレードとして、2WD・Xを274万3000円で用意するが、CR-Vで最も安価なのはターボの2WD・EXで336万1600円だ。
RAV4の場合でも、実際に購入されるのは331万円のアドベンチャーや339万1000円のGだが、300万円以下のグレードが用意されるか否かで第一印象は大きく変わる。最も安いグレードが300万円を大きく超えるCR-Vは、装備が相応に充実して割高でなくても、ユーザーが額面を見た時に高価格車と受け取ってしまう。
また価格が300万円を超えると、多くのユーザーは充実装備と併せて上質な内装も求める。この点でもCR-Vには不満が生じた。例えば木目調パネルは見栄えが低く、インパネのステッチ(縫い目)も模造品だ。コンパクトSUVの先代ヴェゼルでも、上級グレードには糸を使う本物のステッチを採用していたから、CR-Vが模造品ではユーザーを落胆させてしまう。
その点でRAV4の内装は、特に上質ではないが、CR-Vのような欠点もない。CR-Vはオーソドックスなシティ派SUVで、RAV4に比べると野性味や個性が乏しいから、造り込みを一層しっかりと行う必要があった。そこを怠ったことも人気が低調な要因だ。
■RAV4はグレードの幅広さで集客力向上
既存のSUVから乗り替える需要でも差が生じた。
現行RAV4の登場は2019年4月だから、2013年に生産を終えたヴァンガード、2016年に終了した3代目RAV4からの乗り替え需要もあった。ハリアーも現行RAV4の登場時点では、2013年に発売された先代型を売っていたから、販売店は異なるものの設計の新しいRAV4に乗り替える流れが生じた。
販売店からは「C-HRを目当てに来店したお客様が、後席の狭さを指摘された時は、RAV4を提案する」という話が聞かれる。
前述の通りRAV4・2WD・Xの価格は274万3000円だから、C-HRに1.2Lターボを搭載する2WD・G-Tの271万5000円に近い。RAV4・Xでは装備内容は劣るが、後席と荷室はC-HRよりも圧倒的に広いため、不満が生じた時の解決策にはピッタリだ。
このようにRAV4の幅広いグレード構成には、ほかの車種を検討するユーザーを含めて、集客力を高める効果が期待できる。
一方ホンダは、SUVの品ぞろえが希薄だ。4代目の先代CR-Vは売れ行きが低調で、2016年に国内販売を一度終えた。当時は2013年に登場した先代ヴェゼルが好調に売れて(2015年は1か月平均が約6000台でSUVの1位)、CR-Vは不要と判断された。
この後、CR-Vは約2年の空白期間を経て2018年に復活したから、乗り替え需要も期待できなかった。
開発者にCR-Vが復活した理由を尋ねると「最近はSUV人気が予想以上に盛り上がり、オデッセイからの乗り替え需要も生じたから、コンパクトなヴェゼルだけではラインナップが足りない。そこでCR-Vを復活させた」と述べたが、場当たり的な対応だ。グレード構成も前述の通り割高感が伴い、販売を低迷させた。
コメント
コメントの使い方