■日本のみならず海外でも大きな販売ボリュームがある
軽自動車のジムニーは国内専用モデルと思われがちだが、欧州やアジアでも人気のモデルだ。
欧州やアジアでは(軽自動車枠に収まるジムニーを拡幅した)ジムニーシエラが販売されている。
日本の工場だけでなく、インドでも製造が開始。大きな販売ボリュームがあるからジムニーは生き残れているとも言える。
もし、国内専用の軽自動車として作るのであれば、ほかのモデルとプラットフォームを共有するなどしなければ利益を出すことが難しくなる。
ジムニーがラダーフレームという特殊なプラットフォームを使い続けられるのも、グローバルで販売ボリュームが多いからにほかならない。ラダーフレームはジムニーのアイデンティティでもある。ラダーフレームを止めたらジムニーのファンもジムニーから離れていくだろう。
■コンパクトカーに特化したスズキの世界販売台数は12位!
スズキがジムニーを作り続けられるのはコンパクトカーに特化したメーカーであるにも関わらず、販売台数も多いことにあるのだと私は考える。
2019年の世界販売台数を見ると、スズキは12位にランクインしている。1位はフォルクスワーゲン、2位はトヨタ、3位はルノー・日産・三菱、以下、GM、現代、上海汽車、フォード、ホンダ、FCA、PSA、ダイムラーで12位がスズキだ。
1位から11位までみごとに総合自動車メーカーで、各種セグメントのモデルを製造している。
一方でスズキは基本的にコンパクトカーに特化したメーカーと言っていいだろう。今も一世代前のモデルのままで販売される「グランドビターラ」などにはV6エンジン搭載車もあるが、最新モデルに搭載されるエンジンは2L以下であり、セグメント的にみてもCセグメントまでだ。
ここまでコンパクトカーに特化しつつ、なおかつ世界12位の販売台数を誇るのだ。
2019年のスズキの世界販売台数は300万台、15位のマツダは149万台と聞くと、スズキの販売ボリューム感がわかりやすいだろう。
これだけの販売ボリューム感を持ちつつ、コンパクトカーに特化することで非常に効率のいいクルマ作りができる。そうしたなかで生まれてくるさまざまなパーツを上手に使うことでジムニーを作ることができるわけだ。
■ジムニーの今後はどうなる? 電動化なるか⁉
そもそも、専用のラダーフレームを使うという時点で、現代のクルマ作りからは外れてしまっているのがジムニー。
その手法だけで、現代のクルマ作りのアプローチ的にはNGだ。しかしそうした手間を掛けることができるようにさまざまな工夫が行われているのだ。
フレームまわりやボディパーツはもちろん専用部品であるが、エンジンなどはほかのモデルにも使われている。スズキはパーツの流用やモジュラー化でコストを落とすことを得意としているメーカーだ、ジムニーではそうしたことが行える部分は少ないものの、上手に作っているのは間違いない。
クルマをモデルチェンジすることはさまざまなコストが掛かる。
フレーム車の場合、フレームを新調すると多くの部分がその影響を受ける。サスペションの取り付け位置なども変わってしまう。そこでジムニーが取った手法は、先代のフレームをそのままに、クロスメンバーを追加して補強するというもの。
これなら、開発コストが掛からないだけでなく、フレームの製造工程は従来同様で3カ所にクロスメンバーをネジ止めすればいいというじつに効率のいい方法を行っているのだ。
こうしたさまざまなことが上手に積み立てられて、ジムニーは本格的クロスカントリー4WD車というアイデンティティを守ることで大ヒットを続けている。
しかし、このヒットがジムニーに暗雲をもたらしている。欧州では自動車メーカーごとに二酸化炭素排出量の総量規制を行う。ハイブリッドですらないジムニーは、二酸化炭素排出量では非常に不利で、売れたがために総量規制に引っ掛かってしまう事態になっているというのだ。
欧州からのジムニー撤退も考えられているという報道もあり、そうなると販売台数が減ってしまう。果たして販売台数が減った状態でジムニーを作り続けることができるのか? いよいよジムニーにも電動化技術が投入されるのか?
今後の動きから目が離せない状況だ。
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