■売れ行きは半減してもメリットは多し‼
今はホンダや日産まで軽自動車の販売に力を入れる影響もあり、2020年度には、国内で登録された小型/普通車の52%(レクサスを含む)をトヨタ車が占めた。プリウスとアクアは、設計の新しい車種を中心にほかのトヨタ車が絶好調に売れたことで、売れ行きを下げる皮肉な結果を招いた。
しかし登録台数が前年の半分に減っても、プリウスの実力が下がったわけではない。
まずWLTCモード燃費は、SやAが30.8km/L、Eは32.1km/Lだから、今でも3ナンバー車の1位だ。カローラツーリングハイブリッドは、SやG-Xが29km/Lになる。
トヨタのハイブリッドとしては空間効率も高い。身長170cmの大人4名が乗車した時、プリウスの後席に座る乗員の膝先には、握りコブシが2つ半収まる。カローラツーリングは1つ半だから、後席はプリウスが快適だ。
トヨタのハイブリッド同士で後席の居住性を比べると、SUVのC-HRも後席は狭い。そうなるとプリウスと同等かそれ以上に快適なのは、セダンならばクラウンやカムリ、SUVならRAV4やハリアー、そのほかはシエンタやヴォクシーのようなミニバンになる。そうなると4名乗車が快適で、なおかつボディはミドルサイズに収まり、立体駐車場も利用可能なハイブリッド車はプリウスや同PHVに限られる。
荷室についてはプリウスはリヤゲートを寝かせたから、背の高い荷物を積みにくいが、荷室面積は十分に確保した。またリヤゲートを寝かせたためにヒンジの位置は前寄りで、開閉時には後方への張り出しが少ない。
開口部が広く左右方向からでも荷物を収納できるため、縦列駐車をしているような時は、ミニバンやワゴンよりも荷室の使い勝手が優れている。
プリウスの売れ行きが半減しても、以上のようなメリットは健在だ。以前に比べてハイブリッド専用車としての存在感は薄れたが、燃費の優れた実用的かつ買い得なミドルサイズカーという特徴は失っていない。
■プリウスは今後も環境技術の先頭を走るべきクルマである!
従ってトヨタはこれからも、プリウスをハイブリッドのスペシャルティカーとして進化させるべきだ。ボディスタイルを含めて、常に最先端の低燃費技術を投入することにより、環境/燃費性能のナンバーワンモデルに位置付ける。そしてプリウスで採用された技術をほかのトヨタ車にも展開していく。
特に今後は環境性能が問われる。ホンダは2040年までに、新車として売られるすべての車種を電気自動車か燃料電池車に切り替える方針を発表した。トヨタも電気自動車を発表したが、ハイブリッドで可能なことも多い。その技術は、空力特性なども含めて、電気自動車でも有効活用されていく。
初代プリウスがフルモデルチェンジを重ねながらハイブリッド技術を幅広く普及させた背景には、トヨタの環境技術に対する普遍的な考え方と真摯に取り組む姿勢があった。この世界観は、電動化が多様化する今後の時代でも変わらないだろう。従ってプリウスは、常に環境技術の先頭を走るべきクルマなのだ。
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