クルマ界は栄枯盛衰、かつて一世を風靡したモデルが、流行の浮き沈みに飲まれて生産終了の憂き目に遭うシーンを何度も目にしてきた。売れるクルマがあれば、売れなくなるクルマもある。当たり前の話ではあるが、切ない話でもある。
ではトヨタのプリウスはどうか。世界初の量産ハイブリッド車であり、いまのハイブリッド全盛時代の立役者ともいえる。一時期に比べると、めっきり話題にのぼることも少なくなった。
プリウスはまだ第一線で活躍しているのか。それとももうトップクラスで戦う力はないのか。販売前線に詳しい渡辺陽一郎氏に伺った。
文/渡辺陽一郎 写真/トヨタ
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■1997年初代プリウス誕生
2020年度(2020年4月から2021年3月)に日本国内で新車として売られた小型/普通乗用車の内、39%を電動車(ハイブリッド+プラグインハイブリッド+電気自動車+燃料電池車)が占めた。そこに至る第一歩が、1997年に発売された初代プリウスであった。
プリウスは世界初の量産ハイブリッド車として大いに注目され、2003年に2代目、2009年に3代目、2015年には現行型の4代目とフルモデルチェンジを重ねた。
ただし最近は売れ行きが下がっている。
2020年度におけるプリウスの登録台数は5万9160台(1か月平均は4930台)で、対前年度比は52.2%だ。1年前に比べて半減した。
2020年度はコロナ禍の影響で、国内市場全体が減少したが、前年度に比べて7.6%(小型/普通車に限ると8.9%)のマイナスだ。
プリウスの販売台数の減り方は、国内平均を大幅に超えている。
ちなみに2010年には、3代目の先代プリウスが31万5669台(1か月平均では2万6306台)登録された。2020年度のヤリス(ヤリスクロスなどを含むシリーズ合計)とN-BOXがそれぞれ約20万台だから、先代プリウスはものすごい人気車だった。
■3代目プリウスが絶好調に売れた理由
当時のプリウスは、2代目のベーシックグレードも継続生産していたが、プリウスαはまだ登場していない。実質的に1種類のボディで30万台以上が登録され、現在の4~5倍も売れていた。
3代目プリウスが絶好調に売れた背景には複数の理由があった。
まず3代目はエンジン排気量を従来の1.5Lから1.8Lに拡大して、ハイブリッドシステムも90%を新開発した。動力性能と燃費が両方ともに向上して、ミリ波レーダーを使う衝突被害軽減ブレーキと運転支援緊機能も採用した。
しかも、3代目の発売直前にホンダの2代目インサイトが低価格で発売されたから、3代目プリウスもそれに対抗して価格を抑えた。
販売店は、初代プリウスはトヨタ店のみで、2代目ではトヨペット店を加え、3代目に今と同じ全店の販売となっている。これらの相乗効果で、2010年には1か月平均で2万6306台も登録されたわけだ。
ハイブリッドの車種数も今とは違った。
2010年当時のハイブリッドは、トヨタ車ではプリウス、SAI、クラウンハイブリッド、エスティマハイブリッド、ハリアーハイブリッド、他メーカーではインサイトとフィットハイブリッドが用意される程度だった。
そしてトヨタ車でも、ハイブリッドの価格は全般的に高い。230~250万円が主力の車種はプリウスのみで、需要が集中した。
しかし2011年以降はハイブリッド車が増え始める。
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