イギリス政府が7月26日、「2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する」と発表。
それに先立ちフランスも同様の発表をおこなっている。この動き、はたして現実となるのか。その予測に関しては評論家の間でも意見が割れている。本記事では、その双方の意見を踏まえ、2040年の最も考え得るシナリオを紐解く。
文:ベストカー編集部、Web編集部/写真:NISSAN、編集部
ベストカー2017年9月10日号
電動化は欧州全体で動くなら『可能』
ボルボもミニも、電動化への動きを見せてるよね。こういうのって一カ国だけだと失敗するんだけど、ヨーロッパ全体で動くんなら、できると思う。
EVが既存の車と同じような値段で買えるようになって、普及も進む。イギリスとフランスはけっこう本気じゃないかな?
あと20年以上あるわけだけど、おそらくEVに関する画期的な技術進歩が見えてる可能性があるよね。急速充電に関する時間の問題とかに関してもさ。
日本はどうするかだけど、この動きに乗るんじゃないかな。むしろ、もっと早いタイミングで同様のことを実現しようとするかもしれない。
それに言っておくけど、EVはつまらなくない。問題は音だけ。気分が盛り上がる音さえ出れば、最高に楽しいんだから。
【コメント/国沢光宏】
内燃機関全廃なら雇用問題も。実現可能性は『高くない』
(ガソリン車禁止は)大気汚染対策の一環としての動きだけど、じゃあクルマが全部EVになったら、空気はキレイになるのか、その電力はどうやって作るのかって話だよ。
イギリスの電気はほとんど石炭、天然ガスを燃やして作ってるんだよ? クルマから排ガス出てなくても、その前段階で大気汚しちゃってるわけだよ。そこらへんの話がスッポリ抜けてて、イメージだけで決まったような、実に幼稚な決定だね。
それに内燃機関をやめたら、関連の仕事に就いてる人が大量に失業するよ。その産業構造の転換はどうするの? 結局、環境意識を高めるための看板みたいなもので、実現可能性は高くないね。日本はこの動きを冷静に見てると思うよ。
【コメント/鈴木直也】
2040年『EVは普及するけれど、ガソリン車もなくせない』ワケ
このように専門家の間でも意見は割れている。2040年といえば、今から20年ちょっと先。20年という期間があれば、技術は飛躍的に進歩し得る。
今から20年前の1997年は、偶然にもハイブリッド車の祖、初代プリウスが発売された年。当時、性能的にもまだ純粋なガソリンエンジン車に及ばず、売れなかったハイブリッド車が、20年後の今は主流になっている。
2016年4月-2017年3月期の販売ランキング1−2位は、ともにハイブリッド専用車種のプリウスとアクアだ。
こうした事実から考えると、「2040年には今のハイブリッド車並みにEVが普及する」というのはかなり現実味がある。
ただし、「2040年にガソリン&ディーゼル車をすべて販売禁止にする」には大きな課題がある。それは『価格』だ。新型リーフを例にするとイメージしやすい。
新型リーフの価格は315万円から。リーフと同等サイズのガソリン車、スバル インプレッサやマツダ アクセラは、ともに200万円を切るモデルを設定している。やはり、EVの割高感は否めない。
仮にすべてのガソリン&ディーゼル車を禁止するとしたら、例えば軽自動車も、レンタカーに使われるようなコンパクトカーも、EV化する必要が出てくる。
となれば、日常の足や仕事に使う100万円台の車まで「EVにするので大幅に価格が上がる」ことになる。これはちょっと現実的ではない。
いくら量産効果でEVの値段が下がると言っても、今のガソリン車並みにというのは、相当なハードルだろう。
折しも、ホンダは「2030年までにグローバル販売の3分の2をEV/PHEV化する」という方針を発表した。
恐らくこのあたりが現実的な落としどころで、「EVは飛躍的に普及する」けれど、「ガソリン&ディーゼル車を全部なくすのはやっぱり難しい」というのが現時点で予想し得る2040年の姿か。
あと10年もすれば、だいぶ先行きが見えてくるハズ。その時にどんな答えが待っているのか、楽しみだ。
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