北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第33回は、夏のエゾナキウサギの姿を紹介します。エゾナキウサギは、日本では北海道にだけしか生息していません。
氷河時代に日本列島にやってきたので、暑いのは苦手で、そのほとんどが高山に暮らしているのですが、ごく一部が、道南の襟裳岬のそばにある「ハートレイク」と呼ばれる湖周辺に暮らしています。
写真・文/佐藤圭
車で6時間かかっても会いたかった!
エゾナキウサギの生息地の南限である豊似(とよに)湖に行ってきました。
豊似湖は、森進一の歌で有名な「襟裳(えりも)岬」のすぐそばにあって、僕が住んでいる留萌市からは340km、車で約6時間かかります。
北海道の真ん中辺りを北から南へ縦に突っ切るルートになりますが、東京を起点にすると、だいたい名古屋や仙台くらいの距離ですね。
これまで、僕がナキウサギを撮影してきたのは、大雪山系や夕張山地の1000m近い高地のガレ場(岩がごつごつした斜面)だったので、湖のそばに棲むというナキウサギが見たくて、ロングドライブを敢行しました。
豊似湖は、「ハートレイク」とも呼ばれています。その名前の由来は、上空から見るときれいなハートの形をしているのです。歩いて行ってもハートには見えないので、想像を膨らませるしかありません。
以前、北海道土産として有名なお菓子「白い恋人」のCMのロケ地となったこともあります。
ハート形を確認したければ、えりも町の観光ナビ(https://www.town.erimo.lg.jp/kankou/pages/k9mfea0000000jft.html?cs=qot0ek00000002f8)で空撮画像を見ることができます。
湖の周囲には一周ぐるりと回る遊歩道が整備されています。とても気持ちがいいコースなので、散策だけでもオススメです。1周30分くらいでしょうか。
僕がいつもナキウサギを撮影している大雪山系は、標高が高く、大きな樹木は育つことができません。ガレ場の周辺には高山植物が生えているだけで、樹木の中のナキウサギを撮影したことはありませんでした。
一方、豊似湖は、大雪山系よりもだいぶ南に位置していて標高も低いので雪解けも早く、植物の種類も高山とは異なります。
湖は鬱蒼とした森に囲まれているので、樹木がナキウサギのかっこうの休憩場所になっていて、高山の生息地とは趣の違う写真が撮れました。
今回の撮影で一番印象に残ったのは、湖を見つめるナキウサギの姿です。透き通った湖にナキウサギ、なんとも幻想的でした。
豊似湖周辺には、エゾナキウサギ以外にも、エゾシマリス、エゾリス、エゾシカなどの野生動物や、野鳥もたくさん生息していて、とても自然が豊かなところです。
北海道以外では、まだあまり知られていないようですが、夏から秋の豊似湖は、超オススメの癒しポイントです。コロナ禍が収まったら、ぜひ訪れてみてはどうでしょうか。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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