東奔西走する「総理大臣の専用車」~6台の現役車が分刻みのスケジュールをサポート

■洞爺湖サミットではハイブリッド車を専用車で導入

 さて、現行60型センチュリー以前は、レクサスLS600hL(ナンバー70-00)が導入されていた。福田康夫内閣の時代、2008年に開催された北海道洞爺湖サミットの直前にデビューしている。開催時のテーマのひとつが環境問題でもあったため、環境に配慮した低公害のハイブリッド車である同車が選定されたのだろう。これ以前の総理大臣専用車にはセンチュリーが使用されていたわけで、レクサスLS600hLの採用は、時代が変わったかのような強いインパクトがあった。同車は、北海道で開催された同サミットで活躍したほか、その後は都内での公務を中心に活躍、現在も予備車として運用されており、今回の衆院選でも使用が確認されている。

総理大臣専用車で初のハイブリッド車となったレクサスLS600hL。後期型も導入されている
総理大臣専用車で初のハイブリッド車となったレクサスLS600hL。後期型も導入されている

 また、2015年6月頃には後期型のレクサスLS600hL(ナンバー50-00)も導入されている。こちらも現在は主に公務の予備車として運用されている。

■歴史の証人! 50型センチュリー総理大臣専用車

 先にも書いたように、レクサスLS導入以前は、50型センチュリーが使用されていた。

 50型初期型の専用車(ナンバー38-00)は1998年の小渕内閣発足後間もなくして導入されている。そして、その後の歴代総理を乗せてきた。2021年現在でも選挙戦の際の運用が確認されており、車歴約23年という時代の生き証人である。

歴史の証人ともいえる存在の50型センチュリー総理大臣専用車
歴史の証人ともいえる存在の50型センチュリー総理大臣専用車

 また、小泉内閣時代の2002年頃にもう1台(ナンバー80-00)が導入されているほか、同内閣時代の2006年6月頃にはさらに1台(ナンバー30-00)が導入されている。

 外観上の差異はテールランプ類がLED化されたことくらいで、違いは分かりづらい。また3台の50型センチュリー専用車には共通して一般装備にはないマッドガードが装着されていた。

 1998年の小渕内閣以前はVG40、45型のセンチュリーが総理大臣専用車として使用されている。45型センチュリーは2004年後半あたりまで、選挙期間中や防災訓練での活躍が確認できた。

■東奔西走する現役の総理大臣車

 現状では、予備車を含め6台の総理大臣専用車が現役で稼働中と見られる。これらが、総理の地方公務や選挙遊説などで活躍を見せるわけだ。

有権者とグータッチをする岸田新総理。終盤はチャーター機を使って接戦区の遊説に
有権者とグータッチをする岸田新総理。終盤はチャーター機を使って接戦区の遊説に

 現在の運用のされ方を見ると、総理大臣としての公務では60型センチュリーを、選挙遊説などの党に関わる行事では、50型センチュリーやレクサスLSが使われており、こうした車両の使い分けが、自民党政権では見られる。ただし、10年ほど前は総理大臣専用車を用意できない場合、現地の自民党関係者などのクルマを用意して移動していた光景もたびたび見られた(※今回の衆院選でも超過密スケジュールのため総理大臣専用車以外での移動場面も見られた)。

 また、民主党が政権運営を行っていた2010年前後は党務に係るものはどこでもハイヤーで移動しており、このあたり党によって考え方が違うようである。

 なお、地方公務や選挙遊説においても原則的に総理大臣専用車が用意されるようになったのは、第二次安倍内閣の頃からである。これは反対派やテロ行為などの警戒を強化したためで、災害現場の視察など特殊な状況でない限り、可能な限り総理大臣専用車が用意されるようになった。地方で総理大臣専用車が用意できない場合は警視庁の特別警護車(防弾仕様)を運んで現地で総理を乗車させて移動したケースもあり、情勢や時代の変化に合わせた運用がなされている。

 さて地方遊説が頻繁に行われる選挙期間中だが、総理大臣専用車の運用は大忙しだ。総理大臣専用車は、総理をその日の最終目的地まで運び終えると、自走や積載車を使用して翌日以降の演説が行われる県へ回送させる必要がある。選挙期間中は専用車が地方を行ったり来たりするため運用の苦労が絶えないようだ。

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