■以前よりは性能向上してはいるが、やはり「軽は軽」
日本の軽自動車は、1949年7月に軽自動車の規格が制定されたことで始まったもの。
現在の軽自動車の規格は、1998年に改定された「排気量660cc以下、長さ3.4m以下幅1.48m以下、高さ2.0m以下の三輪および四輪自動車」というものだ。
昨今は、軽自動車もコンパクトカーも車両価格はさほど変わらなくなってきているが、それでも、軽自動車のほうが維持費は安く、コンパクトカーよりも車内が広いことから、新車販売の約4割を占めるほど人気となっている。
一方、排気量に上限660cc(1998年に550ccから改定)があるため、CO2ガス排出低減とエンジンパワーの両立がしにくく、冒頭でも触れたように、「加速が遅い」といったネガティブな部分もある。
安全性能や走行性能、静粛性などにおいても、以前よりはずっと向上しているが、同時期に開発されたコンパクトカーと比較すると、劣ってしまうのは事実。
排気量の上限はあるが、エンジン出力には決まりがない。だが、全てのメーカーが、最高出力64ps以下になるよう自主規制をしている。
この自主規制の起源は、1980年代に起きた軽パワーウォーズ(スズキ アルトワークスとダイハツ ミラの軽ターボ対決)によって始まったとされている。
ただ、冒頭でも触れたように、軽自動車は、最高性能を抑制することで、国土交通省が、「特別に」枠を用意してくれているものだ。
最高出力64psの自主規制がなければ、とっくの昔に、普通自動車枠に吸収され、特別待遇はなくなっていただろう。
■軽がBEVにたどり着いたのは必然
現在、売れ筋の軽スーパーハイトワゴンと、サクラのパワースペックをざっと並べてみた。
見てほしいポイントは、ターボ車の最大トルク発生回転数がおよそ2500rpm、という点だ(※スペーシアはモーターアシスト分を考慮して考えてほしい)。
●ホンダN-BOX
・NA 最高出力43kW(58ps)/7300rpm、最大トルク65Nm/4800rpm
・ターボ 最高出力47kW(64ps)/6000rpm、最大トルク104Nm/2600rpm
●スズキスペーシア
・NA 最高出力38kW(52ps)/6,500rpm、最大トルク60Nm/4000rpm
+モーターアシスト 2.3kW(3.1ps)/1000rpm、50Nm/100rpm
●ダイハツタント
・NA 最高出力38kW(52ps)/6900rpm、最大トルク60Nm/3600rpm
・ターボ 最高出力47kW(64ps)/6900rpm、最大トルク100Nm/3600rpm
●日産ルークス
・NA 最高出力38kW(52ps)/6400rpm、最大トルク60Nm/3,600rpm
・ターボ 最高出力47kW(64ps)/5600rpm、最大トルク100Nm/2400-4000rpm
★日産サクラ
最高出力47kW/2302-10455rpm、最大トルク195Nm/0-2302rpm
トルクは、ある程度エンジン回転数を上げていかないと発揮されない。ターボ車はおよそ2500rpmで最大トルクを発揮する。NA車に比べれば、ターボ車は低い回転数で発揮されるものの、それなりにアクセルを踏み込み、エンジン回転数を高めた状況だ。
理想は、最もパワーが必要となる停止状態からの発進時に、最大トルクが出ること。
そうなれば、多くの方がストレスなく、加速感を感じられるようになる(その反面、スピードが伸びるような感覚は薄れるが)。モーター駆動がまさにそれだ。実際に乗った印象でも、もはやターボ車も敵ではなく、爽快なドライブフィールで心地が良い。
ストロングハイブリッド化をする、という方向も考えうるが、エンジンとモーター、両方を積むほど、コストをかけるなんてことは考えられない。軽自動車がBEVにたどり着いたのは必然であったように思う。
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