補助金引くと価格はガソリン軽並み 日産サクラ/三菱ekクラスEVはもはや軽じゃない!

■最大トルクが高ければいい、というものでもない

サクラに搭載されるモーターはノートe-POWER 4WDのリア側モーターのチューニング版。大人4人乗車で山道をストレスなく上り下りできる
サクラに搭載されるモーターはノートe-POWER 4WDのリア側モーターのチューニング版。大人4人乗車で山道をストレスなく上り下りできる

 ただ、軽BEVも、最大トルクをできるだけ高めればよいか、というとそうではない。

 サクラの実車実験を取り仕切った、日産オートモーティブテクノロジー・車両実験部第三車両実験グループ主管 永井暁氏によると、サクラに搭載している駆動用モーターは、ノートe-POWER 4WDのリア側のモーターのチューニング版だという。

 ノートe-POWER 4WDのリアモーターは、最高出力50kW、最大トルク100Nmいうスペックだが、これは大幅に出力を絞って使っているそうだ。

 サクラでは、最大トルクを195Nmまで開放したが、出そうと思えば更に(トルクを)引き出せるとのこと。しかし、オーバースペックにすると、電費の悪化やバッテリー、モーターの発熱、その他にもしわ寄せがくる。

 ギリギリ攻め込んで決めたのが、現在のターボ車の実力の約2倍、最大トルク195Nmであったそうだ。

 開発の後半では、公道試験で箱根のターンパイクを貸し切って、上り下りを走り回ることもしたそうで、サクラのテストカーは、4名乗車であってもストレスなく、登り降りをこなしたという。

「我々(日産)が導き出したスペック(最大トルク)は正解だったと自負しています。」と、永井氏は語ってくれた。

■軽自動車の答えは「BEV化」

サクラとeKクロスEVはクルマの完成度が高く、落ち着きのある走り心地で「軽を超えた」というのも理解できる仕上がり
サクラとeKクロスEVはクルマの完成度が高く、落ち着きのある走り心地で「軽を超えた」というのも理解できる仕上がり
EV補助金を含めるとサクラの場合Sグレードは133万3100円~となるため、軽ガソリン車であるデイズのエントリーモデルより少し高いだけ(5400円高)となる
EV補助金を含めるとサクラの場合Sグレードは133万3100円~となるため、軽ガソリン車であるデイズのエントリーモデルより少し高いだけ(5400円高)となる

 サクラ/eKクロスEVは、終始、落ち着きのある走り心地で、「軽を越えた」と日産が自負するのも理解できる仕上がりだった。

 クルマの完成度は高く、自宅充電をすれば充電費用も安く済むので、セカンドカーとして非常に適したモデル。

 筆者も本気で欲しいと感じた。2022年度は政府のCEV補助金額は軽BEVは、55万円の補助金が受けられるようになった。

 サクラの価格はSが233万3100円、Xが239万9100円、Gが294万300円だから、この価格から補助金を引くと、Sが178万3100円、Xが184万9100円、Gが239万300円となる。

 地方自治体の補助金も用意されているが、東京都の場合(2022年4月27日募集開始)だと45万円受けられるため、Sは133万3100円~となる。日産のガソリン軽自動車、デイズのエントリーモデル、Sグレードの132万7700円~より少し高いだけとなる。

 三菱ekクロスEVはGが239万8000円、Pが293万2600円。CEV補助金を差し引くとGが184万8000円、Pが238万2600円。ここから東京都の補助金を差し引くと、Gが139万8000円、193万2600円。三菱のガソリン軽自動車、ekクロスのMグレード、146万3000円よりGグレードは6万5000円安いことになる。

 時代も後押ししてくれているいま、ユーザー側もこの機会を逃す手はない。

 正直なところ、今回のサクラ/eKクロスEVは、ボディサイズこそ軽規格に収まってはいるが、軽として優遇措置を受けるのはどうなのか、と感じてしまうレベル。

 これは一般的な軽ガソリン車でもいえることだが、高速走行などではエンジンパワーに対してシャシー性能が不足しているように感じる。

 パワートレインのポテンシャルに相応しい諸元が欲しくなるのだ。サクラ/eKクロスEVはなおさらだ。

サクラはデイズの車体をベースに、アンダーフロア補強、サイドメンバー追加、3リンク式のリアサスペンション採用など改良が行われている
サクラはデイズの車体をベースに、アンダーフロア補強、サイドメンバー追加、3リンク式のリアサスペンション採用など改良が行われている
力強いモーターに対してシャシー性能が不足しているように感じる。ドアの厚みアップとトレッド拡大などの対策がさらに欲しくなってしまうのだ
力強いモーターに対してシャシー性能が不足しているように感じる。ドアの厚みアップとトレッド拡大などの対策がさらに欲しくなってしまうのだ

 もちろん日産としても、ベースとしたデイズの車体に対して、アンダーフロアへバッテリーを支える補強の梁を追加したことや、リアサイドメンバーを追加して強固なリアセクションとしたこと、モーターを載せているユニットメンバーを新設して、慣性主軸(揺れの中心軸)の直上でマウントし、上下振動を最小化したこと、3リンク式のリアサスペンションを採用したことなど、多々の改良を行ってはいる。

 しかし、コンパクトカーと比べると、背高ゆえにコーナリング時には不安定さを感じるし、加速時の横方向のグリップ(試乗日がちょうど雨だった)など、あの力強いモーターに対応する対策がさらに欲しくなる。

 例えば、車幅上限を1.48mから1.6mまで許容し、ドアの厚みアップとトレッド拡大、タイヤサイズをアップする、などが欲しくなってしまうのだ。

 ただしそうすると、軽自動車税(自家用は10800円)の枠からはみ出し、自動車税へ統合されて1000㏄以下(25000円)となり、折角の特権を失ってしまう(初度登録時は免税となるだろうが)。

「軽として認められる枠に収めながらも、軽ではないクルマをつくった」というのが、サクラ/eKクロスEVなのだろう。本質は軽ではないのに、軽という特権は受けられる。こんなお得なクルマはほかにない。

 サクラ/eKクロスEVは、コンパクトカーと戦ったとしても、十分に勝ち抜けるだけの実力はあるし、これこそが、「軽自動車の答え」だと筆者は考える。

 市場に出回るようになった時、オーナーがどれほど「感動」の声を発してくれるのか、非常に楽しみだ。

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