現在も人気が廃れることのない名車中の名車、GT-R R32(1989年8月~1994年12月)。数々の伝説を残してきたこのクルマが印象的な人は多いだろう。ではこのクルマの販売当時はどのような評価を受けていたのか。ベストカーが掲載した新車当時の記事をリバイバルし過去を振り返っていく。
この記事はベストカー1989年10月10日号(著者は徳大寺有恒氏)を転載し、再編集したものです
■復活の帝王”GT-R”BNR32試乗!!
ついに待望のGT-Rが走り出した。この驚異の走りをBC執筆陣全員がフルテスト 。豪雨の日産栃木テストコース 、快晴の菅生サーキットでGT-Rはすさまじい走りをみせた。そのスーパーポテンシャルをどこよりも早くレポート!
8月31日、この日仙台近郊の菅生サーキットはレース、あるいはプラクティス、各種テストの予定はない。しかし、その日一日、このサーキットはあたかもレーシングカーが走っているごとき様相を呈したのである。
実はこの日、ここでスカイラインGT-Rが初めてプレス関係者に供されたのである。GT-Rは徹底的にスポーティだが、けっしてうるさいクルマではない。しかし終始7000rpmを保つサーキットランでは280psらしい咆嘩をまき散らしているし、コーナーでは鋭いタイヤのスキッドノイズを発していたのである。
当日、午前中はとてもよい天気でターボエンジンにとってはやや不利な条件だ。しかるにGT-Rのスピードは圧倒的である。280ps、36.0kgm。これはストレート6、2.6L、DOHC4バルブ、ツインターボというキラ星スペックとしては妥当なところだろう。
肝心なことは、この280ps、36.0kgmが右足のスロットルのコントロールにより、確実に出し入れできることである。右足に力を込めれば全身で280ps、36.0kgmを感じとることができる。当たり前だ。スロツトルを踏めばエンジン回転が上がり、パワーが出る。
しかし、この当たり前をスペックどおりに実現してみせる初めての国産車がこのGT-Rではないだろうか。GT-Rは280馬力を納得させる加速を実現してみせた。気温30度の中で、見事な走りをみせてくれた。
菅生サーキットのあらゆるコーナーで、あらゆるギアで、280ps、36.0kgmは右足のスロットルの動きに敏感に反応し、280psを実感として認識させてくれる。
″まずエンジンありき”。スポーティなクルマは、すべてこうありたい。所定のエンジンパワーを得る。そこから始まるのだ。このエンジンパワーをコントロールするためにサスペンション、ブレーキが必要となる。スカイラインGT-Rはこの文法どおりに作られた。
■”名車”の資格を十分持っているからこそ….
テストに供されたスカイラインGT-Rは、すべてガンメタリックグレーの凄味のある色だ。私個人としてはピュアな、そう、フェラーリのような真紅がほしいが、それはともかく、GT-Rのスタイルは率直にいって奇形だ。
しかし、この種の場合、その奇形がかえって迫力を増したり、魅力を増したりすることがある。スカイラインGT-Rのオリジナルとの差は、すべてこのクルマがレースを意識した、あるいは高馬力に対処するためというスポーティカーのセオリーに従っているところがこの奇形に説得力を与えている。
インテリアデザインは、ひと言でいってやや粗野である。レーシィという演出を、もう少しデザイナーがリファインする必要はあると思う。レーシィというイメージの昇華が不足していると思う。このへんのところはとても重要なところである。
というのは、このGT-Rの走りの価値は世界的に普遍性を持つと、私は思っているから。フォードー・シエラ・コスワース、あるいはオペル・マンタ400あたりのインテリアとポルシェ911SC/RSやカレラGTのインテリアデザインは似て非なるものがある。
精神の高揚とでもいおうか、スポーティ、あるいはレーシィな中に高貴な感じを与えるものが、ポルシェをはじめとする名門のスポーティカー(この場合、量産車より発展したよりスポーティという意)には存在する。
スカイラインGT-Rは名車たる資格を有す。もしそうなら、内外のデザインはより注意深く、デリケートにリファインされねばなるまい。
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