■EVもハイブリッドも出場資格がない
本郷 (作品の中での)ライバル車というか、86の相手になるクルマがすごいじゃないですか。あれはどういった基準で選ばれるのですか?
しげの 現時点で最も新しいクルマにしようと思いました。『MFゴースト』は202X年を舞台にしています。今から10年ほどあとの話になります。その時にリアリティがあるクルマにしよう、基本はスーパーGTに出場しているクルマを出そうと思いました。
本郷 モータースポーツはけっこうご覧になりますか?
しげの 最近見ませんが、すごく見ていた時代があります。ちょうどロードレースの世界選手権でワイン・ガードナーがホンダで強かった1980年代後半、F1も、ロータス・ホンダで中嶋悟さんが活躍した1980年代の終わりからセナとプロストの時代、さらにシューマッハが活躍した2000年代くらいまでけっこう見ていましたね。
本郷 やっぱり日本人が活躍しないとモータースポーツは面白くありませんよね。少し話を変えさせてください。自動運転と電動化というベストカーの読者が、あまり好きではない動きが進んでいます。しげのさんは、この動きどう思われますか?
しげの ボクもベストカーの読者だから好きじゃありませんよ(笑)。
本郷 じゃ、EVは物語に登場しないんですか。
しげの 今回設定した「MFG」というレースには、EVもディーゼルもハイブリッドも参加資格がないんです。
本郷 厳しいですね。NSXはどうするんですか?
しげの 厳しいでしょう? NSXはハイブリッドシステムを外して登場します。それくらい内燃機関にこだわった設定にしています。フォーミュラEとか、テレビで見ていてもあまり興奮しませんよね。クルマ乗り換えて走るとか、かっこよくないですよね。
本郷 自動運転はどうですか?
しげの 完全な自動運転ではありませんが、ゴルフの帰りとかに、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)使うと便利ですよね。これから自動運転が普及すれば事故も減るだろうから、歓迎すべきことなのかもしれませんが、自動運転がなかった時代のほうがよかったという思いはあります。
本郷 そう考えると描きにくい時代になりましたか?
しげの そうなんです。だからこそ(作品世界は)一気に未来に飛んじゃったんです。描いているうちにその世界観が「なんか苦しいね」、「なんか微妙だね」ってなるのがイヤで、10年も先だとわからないから、自由に描けるじゃないですか。
■ポルシェやフェラーリが公道でケンカ
本郷 その未来はダークな感じですが、その狙いを教えてください。
しげの ものすごいネガティブな世界のなかにロマンが展開できると思い、あえてそうしています。MFGは10年後の「クラシックカーレース」だと思っていただけるとわかりやすいかもしれません。
本郷 しげのさんのスタイルとして、実車にこだわっていらっしゃいますね。
しげの そうなんですよ。絶対に実車を見ないとダメですね。あと助手席ですけど、隣に必ず乗せてもらうようにしています。少ない情報かもしれませんが、あれがすごくボクにとっては効くんですよ。
たぶん、情報がありすぎてもダメで、少ない情報からいろいろ膨らませていき、独自の世界観が出せたらと思います。
本郷 しげのさんは、そのあたりすごくピュアで僕らみたいな「クルマずれ」していないことを感じます。
しげの いえいえ、単純なんですよ。ポルシェやフェラーリやランボルギーニが公道で本気でケンカするなんて、実際にはないじゃないですか? でも本当に起こったらゾクゾクするだろうし、漫画ならできると、そこがエネルギーになっていますね。
本郷 話は変わりますが、もし物故者を含めて自動車関係者1人と1時間だけ会えるとしたら、どなたに会いたいですか?
しげの 心底憧れ、リスペクトしているのはアイルトン・セナなんです。速いドライバーはたくさんいるけれど、本当に天才という称号にふさわしいのはセナだけだと思っています。
本郷 もし、セナがここに降りてきたらどんなお話をしますか?
しげの いや、話せないんじゃないですか!? とりあえず記念写真を撮らせてもらいます(笑)。いろんな伝説があったでしょう。天候を変えてしまうとか、5速しかなくても勝ったとか、たくさんエピソードがありますが、本当なのか聞くと楽しそうですね。
本郷 最後に『MFゴースト』はこれからどんなところに期待したらいいですかね?
しげの たくさん見どころを作っていきますが、クルマの楽しさ、それはこの先も変わらないということを伝えていけたらなと思います。
コメント
コメントの使い方