ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブス」。今回は2013年10月の「ディーゼルエンジンの未来」についての記事をプレイバック。2012年から急速に伸びた国内のディーゼル市場。海外での状況、各方面の声も織り交ぜながら、その背景とこれからについて考察する(本稿は「ベストカー」2013年11月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
■2012年1万台→2012年4万台→2013年8万台。一気に倍増したクリーンディーゼル車の販売台数
石原慎太郎前都知事の黒煙パフォーマンス(※1999年4月)で、すっかり悪者扱いされ日本では人気薄のディーゼルエンジン車。
しかし、ガソリン車より排出するCO2が少ないクリーンディーゼルに切り替わり、ヨーロッパでは主流になった。
国内でもマツダのCX-5、アテンザの爆発的な人気で市民権を獲得。さらに、経済産業省がディーゼルエンジンの高性能化研究に補助金を出す構え。動きが急になったディーゼル市場は要チェックなのだ。
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まず、クリーンディーゼル車の国内販売状況から確認してみよう。
上の表は、クリーンディーゼル普及促進協議会がまとめた国内の販売実績推移だ。ベンツE320CDIが日本に導入された2006年はごくわずかな市場にすぎなかった国内クリーンディーゼル車だが、規模は右肩上がりで急速に拡大している。
2008年には日産のエクストレイルと三菱パジェロのディーゼル仕様が発売され、3000台市場になった。そして、ベンツE320ブルーテックとML350ブルーテックが登場、エクストレイルのディーゼルにATが追加された2010年には1万台規模に拡大する。
2011年の小休止を挟んで、マツダからCX-5のSKYACTIV-DとアテンザXDがデビューした昨年は、一気に4万台市場へと大躍進した。BMWの320d、523dとX3 xDrive、X5 xDriveも日本に導入され、市場拡大を後押ししている。
さらにマツダ勢の勢いは衰えることなく、今年は1~6月でクリーンディーゼル車はおよそ3万8000台を販売した。昨年12月には三菱デリカD:5も追加されており、暦年では8万台に届こうかという快進撃だ。
こうした状況を関係者はどうみているのか。クリーンディーゼル普及促進協議会の山中隆一事務局長はこう分析する。
「クリーンディーゼルのよさが理解されてきたこと、そして何より魅力的な車種が市場に投入されたことが要因でしょう。
ご承知のように、ヨーロッパではクリーンディーゼル車が広く普及しています。年間新車販売で57%とガソリン車を上回った年があるほどです。
いっぽう、日本ではディーゼル車に悪いイメージがありました。しかし、クリーンディーゼル車にはメリットが多くあります。排出するCO2はガソリン車より少なく、燃費がよく安い軽油を使うことによるランニングコスト上のお得感もあります。また、トルクが力強く気持ちのいい加速、高速道路での安心感が得られます。
ただ、こうしたメリットが理解されても、今までは購買意欲をかき立てる新車が少なかったのも事実です。そこにマツダのCX-5、アテンザがデビューして人気を集めたのです」
確かに、マツダ勢のデビューまでは、クリーンディーゼルの選択肢が少なかった。高額な輸入車のベンツか、ヘビーデューティ系SUVだけというラインアップ。それでは二の足を踏んでしまうだろう。
マツダのSKYACTIV-Dは、低圧縮比による燃焼温度の低下によりNOxのクリーン化に成功したことが最大の成果。それにより、NOx還元触媒を省くことができる。
ディーゼルエンジンのクリーン化で最大のネックは、実はこの触媒のコスト。触媒に使用するプラチナなどの貴金属がべらぼうに高価で、コストアップを余儀なくさせているのだ。
SKYACTIV-Dは、この触媒を省くことでコストを浮かせている。
ターボ搭載によるスムーズかつパワフルなエンジン特性を追加しても、触媒省略のコストダウンでお釣りがくるから、魅力的なクルマを低価格で導入できた。これが爆発的な人気につながったのだ。
【画像ギャラリー】マツダCX-5が起爆剤に!? 2011年から2年で販売台数が8倍に伸びたクリーンディーゼルの未来を考える(8枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方この後 2017年 VWによるディーゼルゲート事件でおうしゅう欧州はEV一辺倒になる。それとマツダのCX-5のディーゼルは欧州では尿素SRCシステムが標準!