■大学・ベンチャーの基礎研究に5億円
こうしたなか、経産省が腰を上げた。
同省は、次世代自動車の普及促進政策に力を入れており、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)とともにクリーンエネルギー車の購入に際しても補助金を交付している。
ちなみに、下では現在、日本で買えるクリーンディーゼル車と補助金額を一覧表にしているので参考にしていただきたい。
経産省はこれまで、次世代自動車のなかでもEVやPHVへの対策が活発だった。充電スタンド設置に対し、補助金交付の条件を緩和して1005億円の予算で普及を促進する力の入れようだ。
それに続いて、クリーンディーゼルの高性能化をバックアップする方針を打ち出した。来年度の予算概算要求で、予算5億円のディーゼルエンジン基礎研究補助金を計上している。2020年までにNOx排出量30%削減が目標だ。
具体的には、国内の自動車メーカー、サプライヤーや大学、ベンチャー企業などを対象に候補を募り、1団体を選定して基礎研究に着手する。
研究内容は、NOx低減のための触媒内部のシミュレーション試験、白煙低減に向けたメカニズム解析など。総額7億5000万円の研究開発で、経産省がその3分の2の5億円を補助する。
経産省では、「日本の大学の内燃機関の研究施設は老朽化しています。この政策が研究施設の刷新の一助になればと思います」(自動車課)として、大学やベンチャー企業への補助金政策の説明を強化している。
研究開発費の残り3分の1は、自動車メーカーなどが負担。基礎研究は3年をメドに成果を上げ、2020年にはNOx排出量を30%削減した車両が製品化される。これが、経産省の狙いといえそうだ。
【画像ギャラリー】マツダCX-5が起爆剤に!? 2011年から2年で販売台数が8倍に伸びたクリーンディーゼルの未来を考える(8枚)画像ギャラリー■ディーゼル先進国の欧州はガソリン回帰
国内クリーンディーゼル市場は空前の活気を示し、政府も普及を後押しする。未来は明るいように見える。
業界では、クリーンディーゼル車の今後について、
「さすがに今までのような伸びではなくなると思いますが、確実に増えていくことは間違いないでしょう」(クリーンディーゼル普及促進協議会・山中事務局長)とみている。
それに異論はないし、普及促進に水をさすつもりもないが、いっぽうでこんな見解もある。お馴染み、自動車評論家の鈴木直也氏はこう予想する。
「クリーンディーゼル車の先進国といえるヨーロッパ各国では、ディーゼル普及が一段落し、ガソリンに回帰しつつあります。それが小排気量の過給器、ダウンサイジングです。
というのも、排ガス規制がこれ以上厳しくなると、ディーゼルはコスト的に引き合わなくなるからです。新車販売のディーゼル比率が50%を超えているフランスやイタリアなどでも、“そろそろディーゼルやばくない”という雰囲気ですね。
実際、ディーゼルの排ガス対策はお金がかかる。マツダのSKYACTIV-Dは希有な例で、規制強化にともなう触媒のコストアップは企業の収益を圧迫しかねない。特に小型車、コンパクトカーにはつらいと思います。
日本市場は、石原前都知事のおかげ(?)で、ディーゼルの普及が遅れたから、伸びしろがあります。今後も少しは伸びていくでしょう。
また、ホンダが1.6Lのクリーンディーゼルを商品化したことは素敵なことで、拍手を送りたいと思います。ただ、世界のトレンドからいえば、もはやディーゼルではなくなっています。
国内でも、トヨタと日産が熱心じゃない。特にトヨタは驚くほどディーゼルにやる気がありません。必要ならBMWから買えばいい、というスタンスでしょう。そうなると、絶対台数が伸びませんから、主流にはならないと思います」
鈴木氏の意見はもっともかもしれないが、ガソリン車をはじめEV、HV、そしてクリーンディーゼルと、消費者が個々のライフスタイルに応じてクルマを選べる、その選択肢が多ければ多いほどすばらしいクルマ社会だともいえる。
大学の基礎研究を国が支援し、自動車メーカーが実現させるというシナリオがあってもいい。その結果、国内のクリーンディーゼル販売が増え、逆に世界に発信することにでもなれば、国産クリーンディーゼル車の競争力アップになるだろう。

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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コメント
コメントの使い方この後 2017年 VWによるディーゼルゲート事件でおうしゅう欧州はEV一辺倒になる。それとマツダのCX-5のディーゼルは欧州では尿素SRCシステムが標準!