衝撃の決算発表に業界震撼!! [日産]に何が起きているのか?

日産買収によるホンダのメリット

2021年4月、社長就任会見にてホンダの三部敏宏社長は「2040年には全ホンダ車をBEV・FCEVに切り替える」と宣言した
2021年4月、社長就任会見にてホンダの三部敏宏社長は「2040年には全ホンダ車をBEV・FCEVに切り替える」と宣言した

 それでは、「ホンダが日産を飲み込む」として、ホンダに何のメリットがあるのか。それは三部体制による「ホンダ変革」の仕上げに尽きる、と見る。

 2021年4月にホンダ社長に就任した三部敏宏氏は、就任会見で「2040年にはホンダ車すべてをBEV・FCEVに切り替える」と宣言して驚かせた。

 三部社長は、自らを「逆風に強いタイプ」と言い、電動化に大きく舵を切った。「変革」をキーワードに「ホンダ第二の創業」を宣言し、その土台を築いて次の世代にバトンタッチするとも発言している。

 だが、必ずしも三部ホンダの経営方針が順調に進んでいるとは言い難い。確かに自主独立路線から一気に提携拡大路線に変更したが、GMとの提携・協業化は量産BEV共同開発の凍結、GM自動運転タクシーの事故による運行停止などで軌道に乗らない。ソニーとのBEVも量産よりもエンタメ特化に限定される。

 そこで、日産との提携に「ホンダ変革の仕上げ」を見出したのだ。8月の提携具体化の会見でも三部社長は「電動化・知能化で世界をリードするため」と強調した。さらに「勝負どころは2030年、提携によるスケールメリット・コストダウンを三菱自も含め3社で生かしていく。資本関係の可能性も否定しない」とも。

 日産には、「技術の日産」を支えるエンジニア集団を生かしきれない経営に対して、忸怩たる思いを持っている社員が多い。ホンダがこの技術を活用(三菱自の軽EV、PHEV技術も)していくことが、三部社長によるホンダ変革の仕上げに繋がるということだろう。

 2025年以降3つのシナリオが考えられる。ひとつがホンダの日産買収であり、ふたつ目が三菱商事を筆頭とするスリーダイヤ主導の動きであり、最後に日産の早期自力再生である。

 すでに「物言う株主」の旧村上ファンドが日産株を巡る動きを示しているが、1970年代から日産を取材してきた筆者は、プライドを賭けた日産の危機回避と本当のリバイバル実現を願っている。

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これから出てくる日産車

2025年春の登場が予想される新型キックス。全長4366×全幅1800×全高1630mm(米国仕様)で、現行型より少し大きくなるが充分にコンパクト。直3、1.2Lのe-POWERを搭載
2025年春の登場が予想される新型キックス。全長4366×全幅1800×全高1630mm(米国仕様)で、現行型より少し大きくなるが充分にコンパクト。直3、1.2Lのe-POWERを搭載

 生産能力、人員、固定費、変動費など「削減」がキーワードになっている日産だが、危機的な状況だからこそ新型車の開発に手を抜くことは許されない。

 これまで入っている情報を整理すると、今後国内に登場する日産のニューカーは6車種。

 2025年にキックス、リーフ、2026年にエルグランド、スカイラインが一新され、2028年にはGT-Rが全固体電池のスーパーBEVに生まれ変わる。また、リーフをベースにしたBEVスポーツを計画しているとの情報も入っている。

 厳しい状況で計画が変更されている可能性もあるが、いずれも日産にとって重要なモデルばかり。順調に開発が進んでいるはずである。

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日産が“復活”するための方法(TEXT/井元康一郎)

世界のクルマ好きを魅了し続けたR35GT-Rは残念ながら2025年8月で生産終了。これこそコアな日産ファンを熱くさせたクルマだった
世界のクルマ好きを魅了し続けたR35GT-Rは残念ながら2025年8月で生産終了。これこそコアな日産ファンを熱くさせたクルマだった

 アメリカ、中国など主要市場でクルマが売れず経営危機に陥っている日産。果たして復活の道はあるのだろうか。

 自動車メーカーが経営危機に陥るパターンとしては、

(1)商品が売れず収入不足
(2)財務基盤の弱さや借金の利払いで資金繰りが悪化
(3)技術開発の遅れで規制に対応できなくなった

 などがある。

 1999年に日産がルノーの出資を受けた時は(2)が最大のネックだったが、今回の日産の経営危機はほぼ全面的に(1)。つまりせっかく作ったクルマがユーザーに受け入れられず、思うように売れなかったことが元凶となった。

 見方を変えれば、ユーザーが「これでこそ日産」と思って飛びつくようなクルマを出すことさえできれば、ほかの経営面に問題があるわけではないので日産はたちどころに復活できるということになる。

 問題はなぜ日産がファンを喜ばせるクルマを作れなくなったかということだ。

 内田誠社長は上半期の決算発表の場で「北米にハイブリッドカーを投入していなかった」ことを理由として挙げたが、そういう単純な話ではない。

 北米でもハイブリッドカーの人気が高まっているのは事実だが、現状では乗用車市場におけるハイブリッドカーの比率は1割未満。それがなくても人気を博しているモデルも多い。

 ハイブリッドカーの投入はぜひ進めるべきことではあるが、現時点でハイブリッドカーがないことが販売の致命傷にはならない。日産車が売れていないのは純粋にクルマが支持されていないからだ。

 日産車がそもそもユーザーの歓心を得られていないという状況を変えるにはどうしたらいいのか。そのためにぜひ必要なのは、ユーザーが日産に何を期待しているかということを日産自身がもう一度とらえ直すことだろう。

 日産らしさとは速い、燃費がいい、電気で走るといった単純なものではない。過去に人気のあった車名をリバイバルさせればいいというようなものでもない。あくまで未来志向でありつつ、その未来において日産がユーザーにクルマを通じてどういう楽しみ、喜びを提供したいかという志の問題である。

 かつて日産はクールでスタイリッシュであることを身上としていた。それが反主流派にモロに刺さっていたのだ。次の時代においてユーザーが日産に心密かに期待していることは何だろうか。それを体現したクルマを出せるかどうかが日産復活のカギを握っている。

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