日本の働くクルマの代表格である、トヨタ「ハイエース」。日本のみならず、海外でも知名度の高い商用車だ。
しかしながら、現行の5代目が登場したのは2004年。すでに20年を超えるモデルであり、ベーシックな機能をリーズナブルに提供するのが目的の商用モデルとはいえ、そろそろ次期型が欲しいタイミング。商用バンの王者「ハイエース」の現在と、これからについて考えてみよう。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA、日本自動車工業会
【画像ギャラリー】次期型はどうなる!?? 商用バンの王者「ハイエース」の現行モデル(15枚)画像ギャラリー20年選手ながら、売れまくっている現行ハイエース
現行型のトヨタ「ハイエース」が登場したのは、2004年のこと。すでに20年を超えるモデルながら、年間5~6万台ペースで売れ続ける、トヨタのロングセラーモデルだ。2024年は、1月に豊田自動織機のエンジン認証不正が発覚したことで受注停止の状態が続いていたため、販売台数を伸ばすことができなかったが、20年選手にしてこれほど売れているクルマは、国内ではハイエースくらいではないだろうか。
なかでも国内で主力となっているハイエースバンは、4ナンバーの小型貨物車で、ボディサイズは、全長4,695mm、全幅1,695mm、全高1,980mmと非常にコンパクト。車両価格も、商用のハイエースバンが243~420万円(税込)、乗用車のハイエースワゴンが294~405万円と、高すぎず絶妙な価格レンジだ。ディーゼルエンジンの走りは力強く、小回りが利くので運転もしやすく、優れた安全性と高い耐久性、そして長年積み重ねてきた信頼性もある。
需要に合わせて変幻自在となるボディもハイエースの魅力だ。全長、全幅、全高、乗車定員、さらにはフロア形状など、ユーザーの用途に合わせたパッケージングを選ぶことができ、広大な荷室エリアは、アウトドアでの車中泊の寝室としてや趣味のレース用バイクやカートを運ぶトランスポンダーとして、もちろん人を運ぶビジネス用途としても活用することができる。昨今、お洒落にカスタマイズするユーザーが増えているのも、このハイエースの汎用性の高さが評価されてのことだろう。
商用車もBEV化されているが、ハイエースのBEV化は難しい
そんなハイエースだが、いくらなんでもそろそろ次期型が登場してもいいころ。昨今は、三菱のミニキャブEVやホンダN-VAN eなど、商用車にもBEV化の流れが進んでおり、こうした電動化トランスフォーメーションは今後も続いていくことだろうが、ハイエースもBEV化されるのかというと、なかなかそうはいかないと筆者は考えている。BEVの欠点である充電スポット数の問題や航続距離の問題などが、平均年間走行距離が3万キロから4万キロといわれるハイエースにおいては、さらに大きな問題となってくるからだ。
走行中の排ガスや騒音が無くなることや、重たい荷物を積んでいても力強い加速ができること、またガソリン車と比べてメンテナンス項目が減ることなど、BEV化によるメリットも確かにあるが、なかには5年間30万キロを超える個体もあるハイエースにおいて、限られた充電スポットで充電に30分も時間を費やす、ということを繰り返すのはタイパが悪すぎて現実的ではない。急速充電を繰り返すことになれば、充電できる電力量も減り、バッテリーの劣化も早まるなど、悪循環を繰り返すことにもなる。
もちろんなんらかの技術的ブレークスルーがあれば可能となるのだろうが、少なくとも2025年現在のバッテリー技術や充電環境では、既存のハイエースユーザーの使い方にマッチするようには考えられない。
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