エンジンも早く暖機運転が済む仕様へ改善された
そんな状況であるから、自動車メーカーもできるだけ暖機運転を減らすよう、エンジンの仕様を改良し続けている。
エンジン部品の加工精度が上がって、慴動部のクリアランスもより均等で少ないものになった。
潤滑するエンジンオイルも油膜の薄い、サラサラで粘度の低いものにすることでオイルポンプの駆動損失や撹拌抵抗を抑えている。
その代わりピストンのスカート部など摩擦が大きい場所にはモリブデンなどをコーティングして、摩擦損失も抑えているのだ。
それでも設計通りの状態でエンジンを運転させるには、適正な温度帯にエンジン部品や油温が上昇していることが大事だ。
そのためエンジンを頻繁に停止させるために温まり難いハイブリッド車や、エンジン車の寒冷地仕様車には、マフラーのサイレンサー手前に排気ガスの熱を回収するヒートコレクター(排熱回収装置)を備えて、少しでも多く熱を回収するように工夫されている。
そうした事情は変速機も同様で、特にCVTは油圧によって緻密に制御されていることから、油温の管理が非常にシビアになっている。
したがって冷間時のクルマは、エンジンが発生する熱を冷却水によってヒーターと変速機までが要求し、さらには排気ガスによって燃焼室と触媒、ターボ車ならターボチャージャーを暖める必要があり、熱の取り合い状態を繰り広げているのだ。
これをサーマルマネージメントといって、エンジンや変速機以外にも様々な部品が熱管理されている。
特にハイブリッド車ではモーターの電力を制御するPCUの発熱量が相当に大きく、専用の水冷装置を備えているほどだ。
ちなみにLEDヘッドライトも発光素子の発熱量が大きく、発光素子の寿命を延ばすためにLEDライトの基盤には冷却するための工夫が施されている。
最近のクルマはエンジン車もハイブリッド車も、冷暖房やエンジン水温、駆動用バッテリーの充電量によってアイドリングなどエンジンの運転状態をECUが制御している。
その制御具合は開発エンジニアが、最適な状態になるようにさまざまなテストを繰り返すことによって決定しているから、基本はクルマ任せにしておいて大丈夫だ。
実際、トヨタのお客様センターでは、トヨタ車のハイブリッド車に暖機運転は必要なのか、という問いに対して、
「ガソリンエンジンが冷えているときは、ガソリンエンジンの始動/停止を自動的に行いますので、暖機運転は必要ありません。なお、短距離走行のくり返しは、暖機運転のためのガソリンエンジン始動が頻繁に行われることになりますので、燃費の悪化につながります」と案内している。
ホンダはハイブリッドに限らず全車を対象とした暖機運転について、
「ホンダのクルマは、極寒地など一部の特殊条件を除いて、冬でも暖機運転をする必要はありません。ゆっくり走行しながらのウォームアップで十分です」としている。
冬季には暖房を早く効かせたいが、温風を出すためだけにエンジンを暖めるのは燃費や環境に良くないから、EV同様、ハイブリッドの寒冷地仕様車には電力で暖めるPTCヒーターが備えられている。寒がりのドライバーなら、寒冷地仕様車を選ぶのがお勧めだ。
シリーズハイブリッドの日産ノートやセレナのe-POWERも、冷間時には暖機運転していつでも再始動に備える仕様になっているから、クルマ任せにしておいてOK。
e-POWERは、エンジン暖機中には水温が40℃を超えるまでは1300rpmあたりの回転数で暖機する。
また、暖房をオンにした時に熱源となるエンジン水温を上げるためや、電池容量が減少した場合など、20km/h位でエンジンが始動することがたまにある。
エンジンを労るため、冷間スタート時は急加速を控えてやった方がいい程度だ。ヒーターを早く効かせたいなら温度設定を26℃以上にするといい。
加速時にモーターがアシストするマイルドハイブリッド車の場合も、冷間時にはモーターのアシストだけではなくエンジンの負担も増すため、やはり冷間時の加速は緩やかにしてやった方がいい。
マイルドハイブリッド車の多いスズキでは、各車の取り扱い説明書にこう記している。
「暖機運転は適切に次のような場合は、数十秒から数分程度の暖機運転を行なってから、走行を開始してください。
長期間、お車を使用しなかったとき、寒冷地などで極低温(-10 °C以下を目安)にあるとき、上記以外の場合はエコドライブのため、エンジンを始動したらすみやかに走行を開始してください」。
コメント
コメントの使い方