ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2013年の企画「クルマの世界の裏メニュー」から、交通取り締まり&道交法の『裏メニュー』をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2013年12月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部/写真:Adobestock、ほか(トップ画像: Ichiro@Adobestock)
■納得できない警察の交通違反取り締まりに「モノ申す」裏メニュー
実はこれ、「裏メニュー」でもなんでもなく、むしろ「オモテ」というか、「これが本来の手続き」で、“青切符は反則金を支払ってお終い”という、現在当たり前に思われている手続きこそが最初は「裏メニュー」的にスタートしたのだった。
運転免許所得者が増え、クルマが増えると交通違反も急増。軽微な違反もすべて本来の刑事罰で処理するとなると検察、裁判所の処理能力も逼迫してしまうし、有罪となれば罰金刑が科されて前科となる。
これを回避するために1968年に導入されたのが「交通反則通告制度」。いわゆる青切符の反則金制度だ。
簡単に言えば、違反点数6点未満の軽微な違反については、「反則行為」と位置付け、取り締まりを受けたドライバーが同意をすれば、本来の刑事罰手続きを省略し、反則金と呼ばれる一種の行政制裁金を支払うことで、いっさいの刑事処分を受けることがない、という制度。ね、国が制度化した「裏メニュー」みたいなモノなんです。
●反則金は払わなくてもいい
ところで反則金の支払いはあくまでも『任意』。
なぜなら、国民は裁判を受ける権利を有していると憲法が規定しているから。
このことは青切符にもきちんと記載されているのだが、どうも取り締まりの現場ではあまりそのことには触れず「では、期日までに反則金を納めて下さい」と告げられて青切符と反則金仮納付書を渡されてオシマイ、となることがほとんど。
反則金を納めたということは、イコール、違反、取り締まりを認めて頭を下げたという意思表示にほかならない。あるいは、裁判を受ける権利を自ら放棄し、反則金制度に同意したという意思表示でもある。
もちろん、違反が事実でドライバーは取り締まりに納得して反省したのならこれでいい。むしろ、煩雑な刑事手続きで時間をとられることはないし、罰金刑=前科となることもない。
だが、納得いかない取り締まりを受けた場合はどうだろう。現場の警官に悪態をついてもラチがあかない。「違反は違反。ワタシらがしっかりと現認したので間違いない」などと言われて押し問答。正直言って時間の無駄だ。
それが速度違反であっても、信号無視の嫌疑であっても、一時停止の止まった止まらないの鬩ぎ合いであっても、納得できなければ「争う」ほかはない。ここでいう「争う」とは押し問答のことではなく、法的な争い、すなわち裁判のことだ。
●裁判なんて怖くない!?
取り締まりの現場で警察官との押し問答になると、「納得していただけないなら裁判になりますよ」と言われることもある。
これは、本来的な意味では「取り締まりに納得できないのであれば、反則金制度を拒否して、あなたの権利である裁判で決着を付けることも可能である」という反則金制度の基本を伝達していることになるのだけど、ほとんどの場合、脅し文句的な意味合いで「ゴチャゴチャ言っていると裁判になるぞ。面倒だぞ、時間もかかるぞ」といったシチュエーションで使われる。
一般的には裁判=犯罪者がかけられ手錠に腰縄で出廷して「被告人前に出なさい」など言われて有罪判決が出て前科者……、というイメージで、とても怖いモノ、犯罪者が行く場所という刷り込みがある。
なので、「これ以上揉めると裁判」という言葉は脅し文句となるワケだ。
でも、現実的には青切符相当で検挙されたドライバーがその場で逮捕されるなんてことはなく、反則金に同意せず刑事手続きに移行したとしても、指定された日時に担当区検に出向いて調書を作成、いま一度「今なら反則金を支払うことも可能ですが、どうしますか!?」など担当検事に確認される程度。
ここで「ぜひとも裁判の場で申し述べたい主張がある」旨を告げるのももちろん自由だし、権利の行使にほかならない。
●不起訴は事実上の勝利
繰り返しになるが、違反が事実で取り締まりも適正で反省もしているというのなら反則金でいっさいをオシマイにすることをお薦めする。でも、言いたいことがあるのなら、司法の場できちんと主張し判断を仰ぐことが望ましい。
前述の区検の呼び出し時には、できれば自分の主張を書面にまとめておくといい。取り締まりの現場の状況、どこに納得できなくて争いたいのかなどの要点をまとめればいい。
取り締まり現場の見取り図や、場合によっては写真などを添付するのもいいだろう。担当検察官に「この人はゴネ得でここまで来たのではなく本気なんだ」と理解してもらうことが大切。
主張が理解されれば、ほとんどの場合検察官の権限で刑事処分を免除する『不起訴』処分となる。つまり、裁判にかけるまでもなくこの件は終了、ということ。現実的に青切符相当の違反で起訴されて正式裁判というケースはほとんどなく、起訴されたとしても書面審理の略式で、簡易裁判所で当初の反則金相当額の罰金刑となる。ただしこの場合は「前科」となるが、交通違反による前科はほぼ不利益にはならない。
どうもカンチガイされやすいのだが、不起訴とは、『ゴネたヤツが獲得するずるい逃げドク』ではなく、正しい司法手続きにのっとった決着で、事実上の『勝ち』とみていいものだ。
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