え、片すの!? リトラクタブルだけじゃなかった!! 格納式ヘッドライトってなに!?

え、片すの!? リトラクタブルだけじゃなかった!! 格納式ヘッドライトってなに!?

 気付けば採用する車種がなくなってしまったリトラクタブルヘッドライト。しかしそれ以外にも、今では失われてしまった面白いヘッドライトデザインは存在していた。それらを見ていると…「自動車のデザインがつまらなくなった」と言われてしまうのも致し方ないような気もしてくる…。

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部

最後まで生産されていたリトラクタブルヘッドライトモデルはシボレー コルベットの6世代目(C6)。
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憧れている人も多かった? リトラクタブルヘッドライト

最後まで生産されていたリトラクタブルヘッドライトモデルはシボレー コルベットの6世代目(C6)。
最後まで生産されていたリトラクタブルヘッドライトモデルはシボレー コルベットの6世代目(C6)。

 かつて自動車のスタイリングを象徴する存在だった“リトラクタブルヘッドライト”。通称は多数あり「ポップアップ式ヘッドライト」「“パカパカ”ヘッドライト」などと呼ばれることも。

 しかし、2000年代初頭を最後に量産車から姿を消した。その理由、リトラクタブルヘッドライトが普及した最大の要因は、北米市場の安全基準への対応だった。

 かつて北米ではヘッドライトに関する厳格な“地上高”規制があり、低く流麗なノーズデザインを実現するためには、点灯時だけ出現する格納式ヘッドライトが理想的な解決策だった。

衰退の理由はやっぱり安全基準

リトラクタブルヘッドライト装着車の日本車勢最後がRX-7(FD3S)となる。SA、FCとこのヘッドライトパターンが特徴でもあった。ちょっと残念。
リトラクタブルヘッドライト装着車の日本車勢最後がRX-7(FD3S)となる。SA、FCとこのヘッドライトパターンが特徴でもあった。ちょっと残念。

 しかし1990年代に入ると、北米のヘッドライト規制が大幅に緩和された。低い位置に固定式ヘッドライトを配置しても法規に適合するようになり、リトラクタブルヘッドライトの最大の存在理由が消滅した。

 自動車メーカーはリトラクタブルヘッドライトを用いることなく、シャープなフロントノーズを実現できるようになった。また昨今、衝突安全だけでなく歩行者保護の観点も重視されるようになった。

 各国で導入された歩行者保護基準では、ボディの突起物に関する規制が厳格化。事故の際に歩行者に重大な損傷を与えかねないリトラクタブルヘッドライトは、この新たな安全思想と根本的に相いれなくなった。

 日本では2002年に終了したマツダRX-7(FD3S)、世界では2005年に生産終了したシボレー・コルベット(C5)が、量産車としては最後のリトラクタブルヘッドライト搭載モデルとなった

上がるだけはなく下がる、回転するヘッドライト

 そんなヘッドライト、実はリトラクタブル以外にも“様式”がいくつか存在していたようだ。最近、筆者が知ったのは点灯時に隠れていたヘッドライトが吊り下げ式になっていて、“ポップダウン”するもの。

 1963年に登場したビュイック・リビエラに採用されていたようだ。あまりに気になったので、そのほかユニークなヘッドライトを調べてみると、同じくビュイック・リビエラ・グランスポーツのヘッドライトは消灯時は瞼のようなカバーがかかっており、点灯時にはカバーが中央部分から上下に“開く”ものを採用していた。

 シボレー・コルベット(C4)のリトラクタブルヘッドライトも、よくよく調べて見るとヘッドライトが単にせりあがるのではなく、180度回転する複雑な機構を持っていた。フロントに傾斜するデザインを実現させるために、ヘッドライト格納に一工夫を要したようだ。

 オペルGTのリトラクタブルヘッドライトは一般的な“上”にせりあがるものではなく、横方向にせりあがる。

 “これは面白い!”とさらに調べてみるとヴェクターW8やジャガーXJ220などはヘッドライトを点灯するとカバーが“下方向”に下がるものを採用していた。

 自動車デザインと安全規制の妥協点として生まれたリトラクタブルヘッドライトは、多様な機構とともに独自の魅力を放った。

 技術進化と安全基準の変化により、その役割を終えることとなったが自動車史に確固たる足跡を残している。

ビュイック・リビエラの消灯時。このままでもヘッドライトのように見えなくもないが…。
ビュイック・リビエラの消灯時。このままでもヘッドライトのように見えなくもないが…。
シャッターが開いてヘッドライト ONの状態に。構造的に複雑なので確かに故障のリスクは高いだろう。
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