マツダ伝家の宝刀「CX-30」は超激戦区で勝てるのか??

 2019年10月24日に発売されたマツダ「CX-30」。マツダ3のプラットフォームを採用し車格をアップ、2Lガソリンと1.8LディーゼルをラインナップするCX-30は、2020年1月下旬にSKYACTIV-X(スカイアクティブX)投入も控えている。

 しかし、コンパクトSUVカテゴリーには、ホンダ「ヴェゼル」やトヨタ「C-HR」といった、年季は入ってきたものの、いまだ人気のライバルが並ぶ。

 CX-30はこれらのライバルに対して、どのような武器があって、どこが足りていないのだろうか?  デザインや走りの評価だけでなく、販売台数も出そろった今、渡辺陽一郎氏がその実力を分析していく。

文/渡辺陽一郎
写真/編集部

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■ライバル打倒のはずが、出だし不調のCX-30は売り方が不親切

 マツダ「CX-30」は、全長が4400mm以内に収まるコンパクトなSUVだ。今の小型/普通車ではコンパクトカーとSUVが人気のカテゴリーだから、コンパクトSUVの需要も多い。2019年11月に発売されたトヨタ「ライズ」は、同月の登録台数が8375台(速報値)に達して、小型/普通車では4位の売れ行きになった。また以前に比べると登録台数が下がったものの、トヨタ「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」も堅調に売れている。

 ところがマツダCX-30は、新型車なのに低調だ。2019年11月の登録台数は2690台にとどまる。ライズ、C-HR、ヴェゼル、RAV4などを下まわった。

2019年11月の販売台数は、ライズ:7484台/ロッキー:4294台、C-HR:5097台、RAV4:4990台、ヴェゼル:2907台に対して、CX-30は2689台だった

 販売が低迷する理由は複数あるが、まず売り方が悪い。2019年9月20日に予約受注を開始して、直列4気筒2Lガソリンと1.8Lクリーンディーゼルターボの納車は10月に開始したが、SKYACTIV-Xは2020年1月下旬以降にズレ込む。2019年12月中旬時点でも、マツダのホームページに、 SKYACTIV-X搭載車の動力性能や燃費に関するデータは掲載されていない。

 一般的にクルマを買う場合、車種を決めたらグレードを選ぶ。この時には、すべての性能/標準&オプション装備/価格を把握したうえで、自分の使い方や予算に合った仕様を決めたい。それなのに主要諸元表に「未定」の空欄があったのでは、気持ちよく買えない。

 SKYACTIV-X搭載車も価格は明らかにして受注を行っているが、性能のわからないクルマを注文するのは、ユーザーにとって相当な賭けになる。この危険負担をユーザーに押し付けるのは不親切だ。

 そうなるとユーザーは「SKYACTIV-X搭載車のデータがわかり、できればノーマルガソリンエンジンやディーゼルと乗り比べてから、グレードを判断しよう」と考える。購入を先伸ばしにすると、購買意欲が次第に下がり、別のクルマに目移りすることもあるだろう。

■嗜好性の強いCX-30。価格&実用性で身内CX-5も強力なライバルに

 クルマは移動のツールだが、嗜好品の性格も強い。趣味性が重視されるSUVはなおさらだ。街中で見かけて「カッコイイ、欲しい」と思い、メーカーのホームページにアクセスすると各種のデータや価格がわかり、グレードもスムーズに決まる。そして一気に契約となる。クルマは一種のノリで買われるから(本当は冷静に判断していただきたいが)、データもわからず、試乗もできないのでは、購入の熱意も下がって当然だ。

魂動デザインという、マツダこだわりのデザインを採用するCX-30。しかし、CX-3もそうだったが、後席空間はほかのライバルよりも若干窮屈さを感じてしまう

 CX-30の機能をライバル車のヴェゼルやC-HRと比べたらどうなるか。ヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載して、空間効率が優れている。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半だ。その点でCX-30は、握りコブシ1つ少々にとどまる。C-HRの2つ弱よりも狭い。CX-3よりは広いが、CX-30の後席に長身の同乗者が座ると窮屈に感じる。

 ヴェゼルは荷室容量も大きいが、CX-30はリヤゲートを寝かせた。床面積は相応に確保され、ヒンジを前寄りに装着したから開閉時にリヤゲートが後方へ張り出しにくいメリットもあるが、荷室の広さはヴェゼルに劣る。

 CX-30はSUVでは小さな部類に入るが、デミオのようなコンパクトカーではない。全幅が1795mmの3ナンバー車で、売れ筋価格帯も260~330万円に達する。立派なファーストカーだから、ファミリーで使うケースも多く、後席の快適性や荷室の広さも大切だ。マツダ車での位置付けは、CX-3とCX-5の間に位置するから期待して試乗すると、実用性はCX-3に近い。「想像したほど広くない」と感じた人も多いだろう。

 そうなるとボディの拡大を許容できるユーザーは、CX-5も検討する。CX-5の価格はCX-30よりも高いが、同じエンジンを搭載するグレード同士で比べると、価格差は約24万円だ。CX-5は新型車のCX-30に比べて値引きも少し多く、実質差額は20万円程度に縮まる。この差額で広い後席と荷室を得られるなら、CX-5を選ぶユーザーも多い。そうなるとCX-30は、前席の居住性を優先させたコンパクトなSUVを求めるユーザーの選択対象になるわけだ。

約24万円差と考えると、CX-5も候補に入ってくる。ラインナップの隙間を狙ったCX-30だが、その差が小さくユーザーが分散。狙った通りの結果とはなっていない

 以上のようにCX-30は、ライバル車に比べると後席の居住性と積載性に不満があり、SKYACTIV-X搭載車の発売遅延など、売り方にも問題が生じた。さらに身内のCX-5も、似たようなデザインで車内が広く、価格は割安だからCX-30の強敵になってしまう。マツダ車を好むユーザーは、CX-5をすでに購入しており、ひと通り行き渡ったともいえるだろう。

 そのいっぽうで、CX-30が優れている部分も多い。CX-30の新しい魂動デザインは、ボディパネルの映り込みが美しい。CX-5などほかのマツダ車に似ていて埋もれやすい面もあるが、ボディの見せ方はマツダ3と並んで新鮮だ。眺めるほどに美しく思える。

 動力性能はどうか。2Lガソリンエンジンは、1400kg前後に達する車両重量を考えると、アクティブなSUVとしては動力性能が足りない。それでもクセのないエンジンだから扱いやすく、6速MTも用意した。そして2Lノーマルガソリンエンジンの4WDは、走行安定性が優れている。軽快でよく曲がり、4WDとGベクタリングコントロールプラスの相乗効果により、下り坂のカーブでも安定している。

 ディーゼルエンジン車はよく曲がるものの、後輪の接地性が削がれやすい。現行CX-5の2.5Lガソリンエンジン車も、発売当初は似たような傾向があり、その後に改善された。巡航中はディーゼル特有のノイズが少し耳障りで、アクセルペダルを踏み込んだ時の反応も若干鈍い。6速MTがあればドライバーの操作で補えるが、CX-3やCX-5と違って、CX-30のディーゼルでは6速MTを選べない。

1.8Lディーゼルは実用回転域の駆動力は高いが、高速の合流や追い抜き時など、ここ一発の加速が欲しい時には踏み込んでも反応が遅いと感じてしまう。要改善といえるポイントだ

 このようにディーゼルは運転感覚の欠点が目立つが、実用回転域の駆動力は高く、経済性も優れている。ディーゼルの価格はガソリンに比べて27万5000円高いが、購入時の環境性能割と自動車重量税は非課税だ。税額の違いを差し引いた金額は、売れ筋グレード同士の比較で約19万円に縮まる。軽油価格も安いから、19万円の差額は、約6万kmを走ると燃料代の節約で取り戻せる。このディーゼルの経済性と高い動力性能は、C-HRやヴェゼルを上まわる。

 CX-30の乗り心地は全般的に硬いが、2Lガソリンエンジンは、ボディが比較的軽いのに角が丸い印象だ。ディーゼルには重厚感も伴うが、硬さも目立ってしまう。走りを総合的に判断すると、2Lガソリンエンジンの4WDがベストだ。なおSKYACTIV-Xの価格は、2Lガソリンに比べて68万2000円、ディーゼルと比べても40万7000円高いので、割高感が伴い推奨できない。

■クルマ好きの心をくすぐるCX-30だが、実用性ならヴェゼルに軍配

 結論をいえば、コンパクトSUVにファミリーカーの実用性を求めるなら、後席と荷室の広いヴェゼルを推奨する。2名以内の乗車で上質な走りを求めるなら、少々パワー不足だが、CX-30の2Lノーマルガソリンエンジン搭載車の4WDがいい。選ぶユーザーは限られるが、6速MTで性能をフルに引き出す走り方をすると楽しい。

 一方、2名以内の乗車で長距離を移動する機会が多いなら、CX-30のディーゼルを選ぶ。実用回転域の駆動力が高いから高速道路の巡航が得意で、走行距離が伸びる使い方でも燃料代の高騰を抑えられる。

 CX-30の価格は売れ筋グレードが260~330万円と高いが、安全面を中心に装備も充実させた。ヴェゼルやC-HRと比較して、CX-30だけが割高なわけではない。運転感覚も優れているが、一長一短が散見されるために損をしている。CX-30はこのあたりを汲み取って許容できる、クルマ好きのユーザーに適している。

販売戦略、価格面でライバルを一気に追い抜くという勢いは見せられていないCX-30。SKYACTIV-X搭載車も価格が高く、クルマ好きのためのモデルという一般の声も多い。高級路線に舵を切るマツダだが、消費者のニーズとの乖離が進まないか気になるところだ

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