ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2014年の企画から、駆動系・操安系・安全装備を、国産トップ車・世界のトップ車を並べ比較した「世界一の技術を載せたクルマたち」をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏、松田秀士、石川真禧照、斎藤 聡、鈴木直也、片岡英明/表の見方:6人の評論家がそれぞれ「世界トップ」と評価したものを表の左側に配置。右側は、「世界トップ」が日本車の場合は輸入車のトップ、輸入車の場合は日本車のトップを記載しています
■世界一のAT(オートマチックトランスミッション)を搭載するクルマ
クルマ好きにとっての常識でいえば一般的に最もシフトチェンジがすばやいのはデュアルクラッチ式、つまりDCT方式のトランスミッションだと思われている。
実際にシフトスピードが速いモデルが多いが、実はAT(オートマチックトランスミッション)のなかにも驚く性能を持っているものがある。
それはジャガーの6速ATだ。とにかくシフトチェンジに要する時間が驚くほど短い。さらにダウンシフト時にはエンジン回転を同調させるブリッピングモードまでしっかりとプログラムされている。
ジャガーXKはスポーツカーだがどちらかというとラグジュアリーでコンフォートな乗り味をモットーとしている。実際にスポーティな走りも楽しむことができるが、ゆったりとロングドライブも苦にならないというキャラクターだけにATとの相性は抜群にいいのだ。
Dモードでスムーズなお任せのドライブも重要なアピールポイントなのだ。つまりジャガーXKのATは世界レベルのATといってよいだろう。
しかし、日本にもこのジャガーのトランスミッションを凌ぐATが存在する。それはレクサスIS Fに搭載されている8速ATだ。このユニットはレクサスのフラッグシップモデルであるLSから流用したもの。
まずエンジンはLS600hの5L V8エンジンをヤマハと共同開発したものを搭載。8速ATはLS460に搭載されているものをよりスポーティな味付けとして採用している。
機能的にはジャガーのものと同じでDレンジでのスムースなシフトも可能だし、マニュアルモードでダウンシフト時のブリッピングも行う。もちろんシフトタイムもジャガーに負けないくらいに速いときている。
では両車の違いはどこにありどちらが世界一かというと、やはりそのシフトワークの速さとロックアップも速いことに加えて8速という多段ATであることだ。ボク自身このクルマでニュルブルクリンク24時間レースを完走した経験を持ち、その時のシフトフィーリングと耐久性を実感した張本人だからだ。
スペック上に出てくるテクノロジーだけでなく、実際に走って感じた世界一のAT、それがレクサスIS Fの8ATだ。
(TEXT/松田秀士)
■世界一の2ペダルAMT(DCT)を搭載するクルマ
2ペダルMTとも呼ばれているようにDCT(デュアルクラッチトランスミッション)は同じ2ペダルながらATとは大きく異なる機構を持ったトランスミッションだ。
例えば2速ギヤで加速中には次の3速ギヤがすでに噛み合っていて、2つあるクラッチを2速側はリリースし瞬時に3速側をつなげる。この動作を繰り返すことで切れ目の小さいシフト作業による連続的な加速フィーリングを実現している。
ATに必須のトルクコンバーターを持たず、MTと同じようにクラッチの断続でギヤをコントロールしているのでロスが小さく燃費もいいことが特徴。
このDCTの先駆者ともいえるのがVWゴルフだ。ゴルフはダウンサイジングと呼ばれる小排気量エンジンとターボチャージャーとの組み合わせによって、小気味いい加速と高い燃費を実現している。
そこで比較したくなるのがホンダフィットハイブリッドに搭載される7速DCT。こちらはハイブリッドゆえ22kw(29.5ps)の電気モーターをトランスミッション内のギヤに接続した形で組み込むという手の込んだシステムだ。いかにもホンダらしいトランスミッションで、技術的トピック、イノベーションという見地からはフィットの7速DCTが世界一と言いたいところだが、まだまだ制御が甘い。
燃費を重視した走りに関してはすばらしいコントロールを見せている。もちろんハイブリッドのシステムを最も生かせるようなトランスミッションのコントロールのことだ。
しかし、スポーティな走りとなると応答性、切れ味などなどフィーリング面ではまだ進化の余地が残されている。
その点ゴルフのDCTはエコ走行からスポーツ走行までを幅広くサポートし、それぞれの走りにおいて納得のいくコントロール性をもっている。
そしてゴルフGTIのようなパワーのあるモデル用のDCTと1.4Lと1.2Lとそれぞれエンジンのキャパシティに応じてDCTの仕様を変えている。
長年培ってきたDCTのノウハウと、湿式&乾式の2種類のクラッチを使い分けてそのどれもがトルコンATに匹敵するようなスムーズさとスポーティな走りを約束してくれる。
(TEXT/松田秀士)





























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