■世界一のサスペンションを搭載するクルマ
日本車は20世紀末のバブル期にいろいろな分野でヨーロッパ車に追いつき、ものによっては追い越しもした。サスペンションもいいところまでいっていたのだ。
ボディやシャシーなどの剛性アップを図るとともに、電子制御サスペンションやエアサスペンションも早い時期に採用し、気持ちいいハンドリングとしなやかな乗り心地をハイレベルに両立させている。
だが、21世紀になってコスト重視の体質になると進化が鈍った。その間にヨーロッパ勢が巻き返しを図り、形勢は逆転したのだ。基本性能を磨くとともに電子制御デバイスも積極的に採用するようになり、再び優位に立ったのである。また、軽量化にも励み、一気に突き放した。
なかでも凄いサスペンションだな、と驚嘆したのが最新のメルセデスベンツSクラスだ。ステレオカメラで進行方向の路面をスキャンし、路面状況を予測してサスペンションのダンピングを絶妙に制御するマジックボディコントロールの高い洗練度には心底驚いた。
高級車にふさわしい究極のコンフォートを目指したが、乗り心地は上質の極みといえるものである。しかもワインディングロードをかっ飛んでもロングボディの大きさを感じさせない軽やかな走行フィールだ。スタビリティ能力は飛び抜けて高く、クルマ全体からゆとりとおもてなしの主張が感じられる。
すべてが余裕たっぷりだからリラックスした気分で運転でき、後席の同乗者も快適だ。ロングドライブでもくつろげる。間違いなく世界一の実力派だ。
日本車は水をあけられているが、スポーツモデルの何台かは渡り合うことができる。その筆頭は、先代インプレッサから生まれたWRX STIだ。4WDだが、FR車のような軽快な身のこなしを見せる。
ステアリング操作に対するノーズの動きは鋭い。狙ったラインにたやすく乗せることができ、アジリティ、ドライブフィールともに極上の部類の気持ちよさだ。
両極にある2車だが、どちらも絶大な安心感があり、しかも運転するのがメチャ愉しい。
(TEXT/片岡英明)
■世界一の安全装備を搭載するクルマ
名門と呼ばれる欧米の自動車メーカーは「安全」を第一に考えて設計し、いいと思ったものは積極的に採用する。日本は安全に関しては後追いばかりだ。法規制されないと上級クラスだけ標準にし、廉価グレードはオプションにとどめている。
エアバッグとABSは日本車がヨーロッパ車より早く採用した。が、エアバッグは今でもほとんどのクルマが運転席と助手席だけにとどまっている。
ABSからトラクションコントロール、横滑り防止のトータル制御までの道のりも遠かった。後方チェックのカメラやプリクラッシュブレーキも採用したのは早かったが、普及するのに時間がかかり、アッという間に抜かれてしまっている。
安全装備をてんこ盛りして、乗り手に絶大な安心感を提供してくれるのはメルセデスベンツのSクラスだ。エアバッグの数はハンパじゃない。横滑り制御も絶妙な味付けである。ブレーキには飛び出し検知や歩行者検知機能を盛り込み、後方からの衝突被害も軽減する警報システムまでも導入した。
凄いと思ったのは知能を備えた「インテリジェントドライブ」だ。短距離と中距離のミリ波レーダーにステレオマルチパーパスカメラと後方用のマルチモードミリ波レーダーを組み合わせ、全方位の安全運転を支援する。
もちろん、前方の車線を認識し、ステアリングをアシストする機能も装備した。それだけではない。この先にある自動運転に関しても積極的な取り組みを見せ、公道で実験も行っている(日本では法規制が厳しく技術を持っていても進まないというジレンマはあるが……)。
ベンツとともに安全に関して力を入れているのがボルボだ。日本ではスバルが一歩先を行く取り組みを見せている。
スバル車はクルマそのものの衝突安全性能が高く、路面を選ばずに安全な走りを見せる4WD、横滑り防止装置もライバルに先駆けて導入した。そして真打ちが先進的な運転支援システムのアイサイトだ。
5月に発売を開始するレヴォーグには次世代型のアイサイト(バージョン3)を搭載した。今までより遠方まで捕捉するカラー認識の新型ステレオカメラを採用し、危険回避アシストやステアリング制御のレーンキープアシストも行う力作だ。
(TEXT/片岡英明)







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