【番外コラム】メルセデスベンツとレクサスにみる高級車作りの違いとは?
高級車作りのむずかしさは、ステータス性を保ち続けることができるか、という点が大切だという点にある。
そのためには、メーカーとして、単に商売に走るだけではダメな場合が往々にしてある。ある時は、損をし続けてもクルマ作りを行わなければならないことがある。売れないからという理由でそのモデルの生産をやめることにより、それまでのユーザーを見捨てることになるのだ。そのようなことで、ユーザーの不評や反感を買うことが、高級車メーカーにとっては命取りになりかねない。
ダイムラーとメルセデスが一緒になってから90年足らずだが、この間に彼らは常に高級車作りを心がけてきた。その車種揃えもスポーツカーとセダンを柱に、いくつかのジャンルに手を拡げてきた。しかし、これまでそれぞれのカテゴリーのクルマの生産を打ち切ったことはほとんどなかった。
いっぽう、レクサスは1989年に北米市場向けに展開をスタートさせたトヨタの高級ブランド。日本でも2005年から販売を開始している。その歴史は10年足らずなので、歴史を語るほどのことはない。しかし、その短い歴史のなかで、すでに生産を中止したり、後継モデルのない車種もある。これではユーザーは信頼できない。
肝心の車両開発も、スタート直後は、レクサスフィロソフィを教え込み、その哲学に沿った開発を行っていたが、最近ではトヨタの大衆車や商用車の開発を担当していた技術者がレクサスの開発をするなど、当初の意気込みや熱意が感じられない。
車両開発に関しては、メルセデスは、時にまったく新しいカテゴリーを開拓するというチャレンジ精神を見せてくれる。初代Aクラスや4ドアクーペのCLSなどがそれだ。高級車だからといって保守的にならず、チャレンジする姿勢に、世の中の高級車ファンはひかれる。
レクサスにその勢いがあるかというと、残念ながら、ノーだ。ハイブリッドは革命的だったが、次の一手がない。それでは一発屋に終わってしまう。
チャレンジする勇気と、根気よく車種を育てていく忍耐、それがまだまだレクサスには欠けている。
(TEXT/石川真禧照)
(写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります)




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