意外とあるようでないのが、メーカー公認のモデルアーカイブだ。期間を限定した印刷物は洋書で見かけるが、メーカーが歴史をWEBで公開するというのはかなりレアだろう。調べ物だけでなく、ただ純粋に閲覧するだけでも楽しめる…激推しサイトである。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:BMW
MINI、オートバイに続いて4輪部門でも開設

自動車メーカーにとって、世の中に送り出したクルマは全てが“作品”である。しかし、現行モデル以外はさほど多くの収益をもたらさないのがセオリー。よって、アーカイブを充実させることはコストに見合わない、と解釈するのが正解だろう。
しかし先日、BMWでは1928年から2008年までの約80年間にわたる同社の歴史をカタログ化したサイトを立ち上げた。
写真と簡潔な車両説明付きであらゆるモデルが網羅されている。例えば5シリーズ(E28型)は、ヨーロッパ専売のキャブレター搭載518から、M5まで、すべてのグレードが掲載されている。
このアーカイブの集約は膨大な調査の成果だが、前例がないわけではない。BMWはすでにMINIブランドとオートバイ部門という2つの同様のアーカイブ・サイトを立ち上げている。
どちらも閲覧する楽しみがあり、1960年代のピックアップトラック型MINIの新車時価格を調べたり、1988年のBMW K1の当時としては革新的な空力特性を掘り下げたりすることができる。
年代やボディタイプなどで整理されたアーカイブ
BMWの自動車の歴史はオートバイよりも幅広く、新しいデジタルカタログには多くの逸品が収められている。
例えば、愛らしい三輪自動車「イセッタ」のほとんどのモデルが実際にはイギリスでノックダウンキットとして製造されていたことを知っていただろうか。
イギリスのクラシックカー・ショーでイセッタを数多く見かける謎が解けた気がする。
あるいは、スキー愛好家をターゲットにした四輪駆動の325iXを含む、E30ステーションワゴン(BMWでは「ツーリング」と呼ぶ)の全ラインナップをスクロールすることもできる。
もちろん、BMWのスポーツモデルである「M」のアーカイブも充実している。ブリスターフェンダーを備えた最後のE30 M3「エボリューションIII」は、2.5リッターの4気筒エンジンが7000rpmで238馬力を発揮することを再確認。
あるいは、イタリア市場専用に僅か20台だけ製造されたE34 M5ツーリング・エレクタというレアモデル中のレアモデルもチェックできる。
【画像ギャラリー】BMWが全車種を網羅する新サイトを公開!!(3枚)画像ギャラリーBMWファンにとってはありがたい、レアモデルも充実
個人的には独自の進化を遂げていた南アフリカのBMWに興味津々だったのだが、今のところそこまでは網羅されていない様子。
E23型の745iはターボエンジンを搭載していたのだが、南アフリカ向け右ハンドルモデルには、ステアリングコラムと過給機が干渉するためこのユニットは使えなかった。
代わりにM1に搭載されていた、M88/3エンジンを搭載していた奇跡のモデルだったのだが…。
特にBMWのファンであろうと、単に自動車史全般に興味があるだけであろうと、この新サイトは訪問する価値がある。
これまで聞いたことのないBMWを発見したり、現代のお気に入りモデルの起源を知ることができるだろう。
かくいう筆者、E36型3シリーズセダンに「バウアー・トップカブリオレ」なる4ドアコンバーチブルが存在していたことを初めて知った。
ドイツのコーチビルダー、バウアーが手掛けたもので、4ドアながらソフトトップの屋根だけが開閉する、というもの。
311台が生産されたそうだ。実に面白い。
【画像ギャラリー】BMWが全車種を網羅する新サイトを公開!!(3枚)画像ギャラリー
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