ベストカー本誌の名物連載だった『デザイン水かけ論』。故・前澤義雄氏と、ご存知清水草一氏がクルマのデザインについて侃々諤々と対話する人気記事だった。その対話の場でも何度も飛び交った、カーデザインを語る上で欠かせないキーワードを解説する。
※本稿は2025年2月のものです
文:清水草一/写真:スズキ、トヨタ、ホンダ、マツダ、テスラ、三菱、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年3月26日号
基礎的プロポーション用語
プロポーションとは、直訳すると「割合」「比率」「調和」「比例」といった意味。自動車デザインでは、フォルム全体の形状や調和を指す。クルマも人も、第一印象は顔が大きく左右するが、全体の印象はプロポーションで決まる。「まずプロポーションを見よ」が鉄則。
●ショートオーバーハング
タイヤの前後に飛び出しているボディ長が短いことを指す。
ショートオーバーハングだとクルマが軽快に見え、オフロード性能も上がる。フロントのオーバーハングが短いFR車は、運動性能がよさそうに見える(実際によくなる)。リアのオーバーハングは、ある程度長いほうがエレガントに見えたりもする。
●ロングホイールベース
ホイールベースが長いクルマは、重々しくフォーマルなイメージになり、高級で乗り心地がよさそうに見える(実際によくなる)。
居住性も上がるので、ホイールベースは年々長くなっている。逆にショートホイールベースだと動きがクイックなイメージになる。
●コーダトロンカ
イタリア語で「尾を切る」という意味で、長く伸びた尻尾を、途中で切り落としたようなフォルムのこと。
クルマは尻尾を長くすると、後方乱流が起きづらくなるが、途中で切り落としてもあまり効果が落ちない。1960年代のアルファロメオが有名だが、国産車では初代インサイトが典型。
●ショルダーライン
クルマのデザインは、フロントフェイスも大事だが、できれば真横から見て、全体のフォルムをチェックしたい。
ショルダーラインとは、ボディ上部のキャビン部(ガラス部)の下端のラインのことで、ウエストラインとも呼ぶ。これがどんな形状をしているかはデザインイメージを大きく左右する。前傾している場合はウェッジシェイプとなる。
基礎的グラフィック用語
グラフィックとは「平面上の形状」のこと。自動車デザインでは、ボディの表面に描かれた線、たとえばヘッドライトやグリルの形状などを指す。
一般ユーザーはクルマのグラフィックにまず目が行くし、実際グラフィックは非常に重要だが、グラフィックだけで判断してはいけない。
●巨大グリル
現在、グリルを巨大化して、異常なほどの威圧感を持たせるのが当たり前になっている。特に顔面の面積が広いミニバン系でそれが顕著。アルファードの甲冑グリルは、自動車デザイン界に大きな衝撃と影響を与えた。
●グリルレス
巨大グリルがトレンドとなった一方で、BEVを中心に、グリルのないグリルレスデザインも一般的になっている。グリルがないとツルンとクリーンでエコな印象になる。
●薄目
ヘッドライトのグラフィックは多極分化しているが、薄目はひとつのトレンド。
LED化によってランプ直径を小さくできたことで、極限の薄目が実現し、かつての吊り目に変わって超薄目が増加中。
●四ツ目
初代ジュークから始まった「四ツ目」ブームは、現在も世界のトレンドのひとつ。ヘッドライトと、一見ヘッドライトのようなポジションランプを組み合わせるのが一般的で、複雑なイメージになる。
●丸目
1970年代に角型が登場するまで、ヘッドライトは丸形しかなく、自動車の「目」はすべて丸形だったが、あまりにも少数派になり、希少価値が上昇。レトロで親しみやすいイメージを演出するのに効果的だ。
コメント
コメントの使い方面白かった。
車のデザインについてその道のプロが書いた記事をもっと読みたいです。
例えば、流行りのデザインの一番乗りはどの車か?、一部の車のガラスは外から見るのと中から見るのとで面積が大きく違うとか、BMWはあまり大事じゃないモデルのデザインは自社のトレンドから外れた変なことをしているとか、そういうのを掘り下げてくれたら、読み応えありますよー!