欧州委員会が発表したCO2排出の規制緩和。「2027年まで猶予期間を与える」と方針が変更されたが、これが実はクセもので、発効を2027年に先送りするという意味ではないらしい。ちょっとややこしい話を国沢光宏氏が分かりやすく解説する。
※本稿は2025年4月のものです
文:国沢光宏/写真:トヨタ ほか
初出:『ベストカー』2025年5月10日号
難解!? 最徐行で読み進めてください
欧州委員会は2025年から乗用車などの二酸化炭素排出量を基準値以下に抑えなければ罰金を科す方針だったCAFEを、2027年まで猶予期間を与える方針に変更した。
少しわかりにくいけれど、本来2025年の1年平均で達成すべき目標を、2025~2027年の平均にする、ということ。発効を2027年に先送りしたワケじゃないことを認識していただき、以下を読んでいただきたく。
2025年から発効されているCAFE(企業平均燃費)はWLTPモードで走行1kmあたりの排出量93.6gとなっている。2021年発効の目標値を見ると同じく95g。
あまり変わらないじゃないかと思うだろうけれど、2021年はWLTPより15%くらい甘いNEDOモードだった。2021年の目標値はNEDOの24.4km/L。2025年の目標値を達成しようとしたらWLTPで25km/L以上になる。
ややこしいけど日本で採用されているWLTCは“ほぼ”WLTPと同じだと考えていいだろう。
25km/L以上をクリアしているモデルとなると、上限がプリウス。シビックハイブリッドは届いていない。それより燃費の悪いモデルを売ろうとすれば、利幅の小さいコンパクトカーか、電気自動車やPHEVといった電動車じゃなければならない。欧州勢を見ると電気自動車に注力していた。
けれど最近になって電気自動車は踊り場を迎えている。多くのメーカーは電気自動車の販売目標をクリアすれば2025年のCAFE達成も問題なしと思っていたようだけれど、難しくなったワケ。
我が国の「電気自動車嫌い派」は「欧州委員会も電気自動車にダメを出した」と思っている。2027年まで伸ばしたらどうか? 現在進行形で電気自動車の売れゆきはジワジワながら伸びている。
今の電気自動車普及率でも2027年にはクリアできる可能性が高い。依然として欧州は電気自動車に向かっている。今後、電池価格も下がっていく。遠からず踊り場を抜ける時がやってくるんじゃなかろうか。
いずれにしろカーボンニュートラルの目標は25年先の2050年。今回の欧州委員会の決定を見ると単なる調整だと考えたほうがいいんじゃなかろうか。
翻って我が国を見ると依然として石油利権が強く、電気自動車の普及にブレーキを掛けたまんま。
2023年の実績で12兆5000億円も原油を輸入している。石油関連で仕事をしている人は多いということ。本来なら政治や官僚が石油を扱っている皆さんを、技術や実績を活かした仕事に転換させていかなければならないのだが、進まないです。

















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