現在でも公道を走るクルマの主燃料であるガソリン。そのガソリンには大きく分けてハイオクとレギュラーの2種類があるが、近年ではハイオク指定の車種が減る傾向にあるという。いったいその理由は何か? そしてハイオクの利点と難点とは?
文/長谷川 敦 写真/トヨタ、日産、メルセデスベンツ、写真AC、Adobe Stock
【画像ギャラリー】いつのまにかレギュラーだらけ! ハイオク仕様車はどこへ行った?(11枚)画像ギャラリーハイオクガソリンは何が違う?
セルフ方式のガソリンスタンドで一般的に選べる油種はレギュラーガソリンとハイオクガソリン、そして軽油だ。
軽油はディーゼルエンジン車に入れるものだが、レギュラーガソリンとハイオクガソリンは何が違うのかわかりにくい。
どちらもガソリンエンジン車に使用する燃料ながら、それを構成する成分が異なっていて、ハイオクガソリンは名称どおり「オクタン価」が高いのが特徴のひとつ。
ハイオクもレギュラーも石油を精製して作られているものの、ハイオクは精製の工程でオクタン価を高め、さらにオクタン価向上剤を加えることで完成している。
そもそもこのオクタン価とは、ガソリンの“燃えにくさ”を示す数値であり、オクタン価が高いガソリンは低オクタンのガソリンよりも燃えにくい。
燃えやすいほうが燃料としては優れているのはないかと思いがちだが、燃えやすさは同時に異常燃焼のしやすさにもつながり、この異常燃焼がノッキングというエンジンの回転異常を引き起こしてしまう。
詳しい説明は省略するが、高出力エンジンは燃焼を行う際に燃料と空気の混合気の圧縮比を高めていて、高圧縮は異常燃焼を招きやすい。
そこでハイオクガソリンを使用してノッキングを防止するのだ。
こうした理由から、パワフルなエンジンを搭載するクルマはハイオクガソリンを指定することが多く、一般的な乗用車にはレギュラーガソリンが用いられる。
ちなみにレギュラーガソリン指定車にハイオクガソリンを入れても問題はないが、ハイオク指定車にレギュラーガソリンを入れるとエンジンの本来の性能が発揮されず、不調を招く原因になりかねないので注意したい。
ハイオクガソリン車が減っている?
現在ハイオクガソリンの需要が以前に比べて減っているのはご存じだろうか。
実際、経済産業省のデータによると、ガソリン販売全体のなかでハイオクが占める割合は、1990年の約15%から2019年には約9%にまで落ちている。
これはハイオクガソリンを使用するクルマが減っていることの証拠でもあるが、どうしてそうなったのだろうか?
まずはエンジン制御技術の向上によってノッキングを起こしにくくなったことがあげられる。
ノッキング防止に効果が高いのがハイオクの利点のひとつだったのだが、レギュラーガソリンでもノッキングが発生しないのであれば、その点における有利さが失われたことになる。
また、近年の世界的なエコ重視の情勢や排ガス規制などによって、基本的に大パワーのハイオク指定車自体の需要も低下してきており、これもハイオク車減少理由の一端になっている。
そしてもうひとつの大きな理由がハイオクとレギュラーの価格差だ。
精製過程が複雑で、添加剤も含まれるハイオクガソリンのコストはどうしても高くなってしまい、これがレギュラーガソリンに対して1リッターあたり+10円程度の価格差を生むことになる。
1リッターで10円というのはわずかな額にも感じられるが、これも長期的に考えれば確実に消費者の支出を増やしてしまう。
これらの理由が重なり、現在ではドライバーとメーカー双方でのハイオク離れが進んでいる。












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