イギリスの小規模メーカーであるモーガン。1900年代初頭の創業以来、木材を使用したボディや手作業での製造などの伝統を守り続けている。そんなモーガンの伝統的オープンスポーツ、モーガン プラスフォーを松田秀士氏が試乗レビュー!!
※本稿は2025年6月のものです
文:松田秀士/写真:奥隅圭之 ほか
初出:『ベストカー』2025年7月10日号
70年以上前の姿そのままに!
モーガンは木でできているという認識。でも今は木を使っているはずはないわ! と。
運転して、その剛性感とカッチリしたボディフィール、軽快なライトウェイト感に、マテリアルはアルミ材だよね! と決めつけていたが、スマホでググると「ええーっ!?」。
確かにプラットフォームはアルミ材だが、外装のアルミボディを支えるインナーフレームは今でも「木」を使っている。防腐剤を浸透処理したアッシュ材は何十年もの保証があり軽量なのだという。で、すべてが職人による手作業で仕上げられている。
ドアを開けると少しギギーと音がする。で、そのヒンジをよく見ると美しく凝った造り。これならその音許せます。
華奢なシートはなかなか納まりがいい。しかも手動エアポンプでランバーなどの調整が可能。ステアリングにはテレスコも付いていて、ドラポジはかなり自由度が大きい。アルミ削り出しの左右ドアミラーは古典的な手動調整だ。
もうひとつノスタルジックなのは、切り立つような角度のフロントウィンドウと3本の短いワイパーアーム。
センターパネルに配置された丸形メーターは遠い助手席側のほうが速度計でドライバー側にタコメーター。真正面のドライバーパネルにはなぜか液晶ディスプレー。
このミスマッチは安全性への心遣い。もちろんエアバッグも装備。ゼンハウザーという高級オーディオ、オープンゆえ左右シートヒーターもあります。
6速MTのシフトフィールはかなりカッチリしていて、各ギアゲートがわかりやすくミスシフトしにくい。クラッチは重めだがスムーズでややストロークがあります。
パワートレーンは2LのBMW製4気筒ターボが前輪よりもはるかコクピット寄りにマウントされる完璧なフロントミドシップ。しかもワイヤーホイールはセンターロックでエイボンタイヤ(205/60R15)が装着される。
こうなるとサスが気になり床下を覗く。前後Wウィッシュボーン式で、コイルスプリング一体式ダンパーは可能な限りロアアームのハブ側付け根にマウントされる。
つまり車輪の上下動と1:1でダンパーユニットの細かい制御が可能なのだ。ロアアームは地面とほぼ平行に設定。トレッド変化は最小限だ。
だからこのストローク感のある乗り心地。しかもスッとノーズが動く。255ps/35.7kgmで、1013kgを5.2秒で100km/hに加速させる。
乗れば乗るほど楽しくなるし、止まるとオープンにしたりクローズドにする手間にたまらなく愛着が湧く。宝くじ当たらないかなぁ!
オレらにも乗らせろ! ベストカー編集部員のインプレ
●編集長・飯嶋
見た目から「凄い古風な乗り味かな」と思ってたんですが、違います。ちゃんと現代のクルマとして普通に走ります。
ただ、クセはけっこう強めです。踏んだら妙にフンワリ戻ってくるクラッチペダルとか、極低速域だとカックンになりがちなブレーキとか。慣れるには買うしかないですなー。
●編集部・飯干
技術の進化でものづくりが容易になるほど、こういうプリミティブなものの価値が上がると実感。
見た目ほどにはクセのない運転感覚だが乗りこなすのは難しく、「上手に操れるようになりたい」と思わせる。それも含めて「運転は娯楽だ」ということを思い出させてくれるクルマ。
●編集部・古川
伝統的な英国のオープンスポーツを今の時代に新車で味わえるモーガンは、お宝グルマだと思いました。
街なかでは現代のクルマ同様に普通に乗れるけれど、ブレーキの重さや路面からの振動を伝える乗り心地などはクラシックカー。そして革内装の手触りや座り心地も素晴らしい。
●モーガン PLUS FOUR 主要諸元
・全長×全幅×全高:3830×1650×1250mm
・ホイールベース:2520mm
・車重:1013kg
・エンジン:2L、直4DOHCターボ
・最高出力:255ps/5500rpm
・最大トルク:35.7kgm/1000-5000rpm
・トランスミッション:6速MT
・0-100km/h加速:5.2秒
・最高速度:240km/h
・価格:1668万7000円


















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