CO2排出削減のため2000年代初頭から普及し始めた「アイドリングストップ機構」。純エンジン車の場合、節約されるコストより、バッテリー交換で消費されるコストのほうが多いことが分かってきた。もしかして要らない機能なのか!?
※本稿は2025年6月のものです
文:吉川賢一/写真:トヨタ、ホンダ、ベストカー編集部、AdobeStock ほか(トップ画像=siro46@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2025年7月26日号
アイドリングストップは環境保全になっているのか?
低燃費技術(=CO2排出低減)の方策のひとつとして、2000年頃から普及し始めたアイドリングストップ機構。信号待ちで停止する際などのアイドリング時に、エンジンを停止させることで燃料の消費を抑え、CO2排出を低減させるというシステムだ。
わずかな低減量だが「塵も積もれば山となる」のごとく、環境保全のためにはこうした積み重ねは重要……なのだが、純ガソリンエンジン車のアイドリングストップは、愛車にとってあまりありがたくない装備である、ということをご存知だろうか?
燃料削減はわずかなのにバッテリーにかかるコストは増大
信号待ちなどでエンジンを停止させることで、無駄な燃料消費を抑える効果がある「アイドリングストップ機構」。
わずかながらでも燃料消費が抑えられることで、CO2排出量を削減できることのほか、ユーザーとしては気になる燃料代を抑えられるのではと思いがちだが、実は純エンジン車(ディーゼル車含む、以下同)のアイドリングストップ機構は、節約できるどころか、逆にお金のかかる装備……と言っていい。
信号待ちのたびに停止と始動を繰り返すためにバッテリーにかかる負担が大きく、そのためにバッテリーが高性能である必要があるからだ。
「1.5倍ほど高価で交換サイクルも短い」という十字架を背負う
アイドリングストップ搭載車のバッテリーは高性能であることが求められるため、非搭載車のバッテリーよりも1.5倍ほど高価で、かつ交換サイクルも短い。
さらに、アイドリングストップ非搭載車の「3~4年に1度」に対し、アイドリングストップ車用バッテリーは多くの場合「18カ月または24カ月」と、おおよそ2分の1程度となっている。
半分の交換サイクルで、1.5倍も高価なものに交換することでかかるコストを、アイドリングストップしたことで抑えられたわずかな燃料代で取り返すことは……かなり難しい。
これまでの説明でもわかるように、ガソリン車のアイドリングストップは、愛車にとっては負荷が大きく、コストのかかる装備といえる。
ちなみに、ハイブリッド車(ストロングハイブリッド)のアイドリングストップは、補器バッテリーにかかる負荷がガソリン車よりも格段に少ないため、ガソリン車のアイドリングストップ搭載車のように専用の補器バッテリーを搭載する必要がない。
どのメーカーもおおむね、従来型の補器バッテリーを搭載しているようだ。現在の流れはそのようになってきている。
自動車メーカーもアイドリングストップの搭載をやめる動きが
以上のような背景があり、昨今登場するガソリン車の新型車では、アイドリングストップ機構が搭載されていない車種が増加している。
トヨタの場合は、ヤリスや、現行型RAV4などがアイドリングストップ非搭載車。
ホンダはNシリーズ全種とステップワゴンには搭載されているが、フィットは非搭載車。トヨタとホンダの主なアイドリングストップ非搭載車は下記&ギャラリーを参照していただきたい。
日産は、ルークス、デイズ、セレナ、NV200バネットはアイドリングストップ搭載車だが、スカイライン3Lターボは非搭載だ。
また、三菱デリカD:5やエクリプスクロスも非搭載で、スズキではソリオやワゴンRの一部車種でアイドリングストップが搭載されていない。
なお、スバルやマツダ、ダイハツの主要車種は、アイドリングストップを搭載している。


















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