フェラーリ創設40周年を記念して発売された第2世代のスペシャルモデル「F40」。エンツォ・フェラーリが生涯最後に手がけた特別な跳ね馬を、チャレンジャー武井氏が修善寺のサイクルスポーツセンターで全開インプレッション!!
※本稿は2025年7月のものです
文:チャレンジャー武井/写真:音速movies、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
F40に魅せられて――跳ね馬との至高の時間
ありがたいことに、これまで5台のF40に試乗させていただいた。フルノーマルからカスタム仕様まで、それぞれ異なる個性を放ちながらも、F40が本来秘めている圧倒的なポテンシャルは、毎回新たな感動をもたらしてくれた。
公道、首都高、高速道路とさまざまなシチュエーションでドライブしてきたが、最も刺激的だったのは、ちょうど今の季節に伊豆・修善寺のクローズドコースでの全開走行だ。今回は、サイクルスポーツセンターでF40の真の実力を体感した、その時のインプレッションをお届けしたい。
跳ね馬の特別な存在
F40は、フェラーリ創立40周年を記念して誕生したスペチアーレで、288GTOに続く2代目のアニバーサリーモデルだ。エンツォ・フェラーリが生涯最後に手がけたモデルと謳われた。レーシングカーを公道で走らせるという大胆なコンセプトのもと、今もなお世界中の熱狂的な支持を集めている。
発売当時の日本はバブル景気真っ只中。正規輸入の新車価格は約5000万円だったが、限定生産という希少性も相まって、2億8000万円以上のプレミアが付くという狂乱の時代だった。しかし、そのピーキーで獰猛な挙動は多くのドライバーを振り落とし、クラッシュで姿を消した個体も少なくない。
コックピットに座る瞬間から戦闘モード
極端に低いボディのドアを開けると、真紅の生地で覆われたカーボンケブラーシェルのフルバケットシートが現われる。1124mmのルーフに身体をかがめて、サベルト製4点式ハーネスを装着。まるで戦闘機に乗り込むかのような緊張感に包まれる。
イグニッションキーをひねり、スターターボタンを押すと、跳ね馬の魂が宿ったパワーユニットが目を覚ます。ブリッピングでタコメーターの針が跳ね上がるたび、期待感はさらに高まっていく。
荒馬を乗りこなすスリルと歓喜
F40のクラッチは重く、クセもある。だが、その一歩一歩が刺激的だ。ツインプレートのクラッチペダルをリリースすると素直に動き出した。
慎重にアクセルを踏み込むと意外と扱いやすい……と思った瞬間、ドッカーンと目が覚める加速。すかさず2速にシフトアップしてアクセルを踏み込むと、4000回転を境に突如炸裂する瞬発力。
タコメーターの針は一気にレッドゾーンまで駆け上がり、バケットシートに身体が吸い込まれるような加速感。リアタイヤがホイールスピンし、テールが流れる――その挙動すら快感だ。電子デバイスを一切持たないF40は、まさに生粋のレーシングカー。ドライバーの腕こそが、マシンの限界を引き出す鍵となる。
曲がる・止まる――魂で操るF40
連続するタイトなコーナーと短いストレートが続く修善寺の周回路(全長5km)。マスターバックもABSも持たないブレーキは、踏力とテクニックが問われるが、車重が軽量なこともあり制動性に文句はない。
また、フロントタイヤの接地感がステアリングを通じてダイレクトに伝わり、ノーズの向きを正確にトレースする。
登りのヘアピンでアクセルを丁寧に踏み込み、リアにトラクションを乗せると、F40はしなやかに旋回する。その瞬間、40が「制御不能な暴れ馬」ではなく、「意思を通わせられる名馬」だと実感する。
























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