楽観は良くないけど悲観し過ぎもね……これからのホンダの切り札とホンダを待つ明るい未来

　2021年、ホンダの三部敏宏社長が就任早々に宣言した「2040年までに電動化率100％」。2025年5月に軌道修正することになったが、挫折を嘆くより、「早めに修正できて良かった」と考えるのが良い。今後のホンダを待つ明るい要素とは!?

※本稿は2025年7月のものです
文：井元康一郎／写真：ホンダ、ベストカー編集部 ほか
初出：『ベストカー』2025年8月10日号

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2026年投入のZEROの成否に命運

　電動化戦略ひとつとっても欧州向けクロスオーバーBEV「e：Ny1」や中国向けハイクラスBEV「イエ（Ye）シリーズ」が世界のライバルに太刀打ちできず惨敗を喫している。

　その状況を打開すべく、2026年にかけて斬新なデザインと機能実装を目指した「Honda 0（ゼロ）シリーズ」を投入する予定だが、万が一それらの性能が高い評価を得られなかったらホンダのBEVは見掛け倒しという定評を得てしまうリスクと背中合わせだ。

　新規ビジネスに至っては具体的なビジョンを示さないまま号令をかけても、いいアイデアが魔法のように百出することなどないということを痛烈に実感してきたことだろう。

　技術部門はロケットの垂直着陸を成し遂げたりマルチコプターのガスタービンハイブリッドシステムを作ったりと、要素技術レベルの成果を出しているが、ビジネスとしてデザインできなければ遊びの域で終わってしまう。

　現時点ではほとんど空振りに終わっている三部ビジョン。果たしてその実現性を上げていくような改革力がホンダの経営陣にあるか、これから数年の間に打つ施策は注目に値する。

もちろん「明るい話題」もあり!!

　ここ最近のホンダの動向を見てきたが、こうネガティブな事実が噴出すると、「ホンダ、大丈夫か？」と心配になるだろう。

　たしかに、百年に一度の大変革の時と言われる今、楽観することなど、どの自動車メーカーだってできはしない。もちろんトヨタだって先行きを楽観することなどできはしない。

　話をホンダに戻す。

　別記事でも指摘をした「2025ビジネスアップデート」での電動化推進への足踏み修正だが、これは計画の縮小という意味でネガティブと見ることもできる半面、直近の情勢変化を捉え、速やかに軌道修正で対応した、という意味でポジティブともいえる。

　2040年の完全電動化を目標としながら、2030年まではハイブリッド車の技術を強化し、例えば北米マーケットに向けた大型SUV用ハイブリッドを新開発するなど、13車種のニューモデルを投入することを明らかにした。

　これまでBEV＆FCEVに全振りし、ハイブリッドに欠かせない内燃機関開発は完全撤退のように言われていたが、そのようなことはなく、しっかりと開発は進行中だ。

　BEVの象徴的モデル“ZERO”シリーズに採用される、新しいコンセプト「敢えて撓らせるプラットフォーム」は、ZEROシリーズのみならず、今後のハイブリッドモデルにも採用されることが明らかにされている。

　こうした軌道修正は、現実を見据えたホンダの明るい未来への兆しと言える。

2027年に向けてハイブリッド車を強化する

　上の図は、2025ビジネスアップデートで示された「パワートレーンポートフォリオの見直しによる事業基盤強化」におけるHEV戦力の強化の流れ。新世代プラットフォームと新開発ハイブリッドパワートレーンの組み合わせにより燃費性能を10％引き上げる。

　さらに開発の効率化により、開発コストを50％以上低減させながら、2027年以降に13車種のハイブリッドモデルをグローバルに投入するとしている。北米向け大型SUVの計画もある。

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