高速道路での渋滞中に、前のクルマとの車間をやたら広く空けて走るクルマをみかけることがあります。「なんで詰めないの!?」「余計に渋滞が伸びるじゃん!」とイライラしてしまう人は少なくないと思いますが、渋滞時に車間距離を広くとっているドライバーは、渋滞を悪化させるどころか、渋滞を緩和させてくれる「神ドライバー」。なぜ広い車間距離が渋滞を緩和させてくれるのか、考えてみましょう。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:写真AC_ yoven/写真:Adobe Stock、写真AC
【画像ギャラリー】渋滞を起こさない「あえてのゆったり車間距離運転」を褒めたたえよう(7枚)画像ギャラリー高速道路の渋滞のほとんどが「ブレーキの連鎖」で起きている
まずは高速道路での渋滞の原因や仕組みについて振り返りましょう。高速道路の渋滞というと、事故や工事が原因となっていることが多いように思いますが、NEXCO東日本によると、2024年に発生した渋滞のうち、71%は交通集中を原因とする渋滞。事故は15%、工事は4%しかなかったそうです。
この交通集中による渋滞のうち、61%が上り坂およびサグ部(下り坂から上り坂に差し掛かる凹部のこと)で発生したそう(2024年)。上り坂に差し掛かったときにアクセルが一定だと、クルマは自然と速度が低下します。前走車の速度が低下し、後続車との車間距離が短くなってしまうと、後続車はブレーキを踏んで車間距離を確保しようとし、またその後続車もブレーキを踏む。それらが連鎖することで、渋滞となっていくのです。
実際に東名高速下り方面の大和バス停付近や綾瀬バス停付近、中央自動車道の上り方面の小仏トンネル付近など、渋滞で有名な場所は、サグ部であることが多いです。

広い車間距離は「減速の衝撃を吸収するクッション」になる
この「ブレーキの連鎖」を防ぐことができるのが「十分な車間距離」です。車間距離が十分にあれば、前走車の速度が低下してその後続車との車間距離が短くなったとしても、ある程度であれば、後続車はブレーキを踏むことなく安全な車間距離を維持することができ、そのさらに後続のクルマもブレーキを踏まずに済んで全体の流れをスムーズに保つことができるため、たとえ交通が集中したとしても、目詰まりすることを回避することができます。「ゆったり車間」は「減速の衝撃を吸収するクッション」となるのです。
渋滞緩和に効果的な車間距離として、具体的には「40m」が目安とされています。日産が紹介している「渋滞の基礎知識」によると、車間距離が40m以下のときに前走するクルマがブレーキを踏むと、後続のクルマはより強くブレーキを踏む傾向があり、逆に車間距離を40m以上あけることによって、速度が回復し、渋滞が軽減されたということが社会実験で実証されているとのこと。
「40m」を測るのには、高速道路上では車線境界線を利用すると便利。高速道路の車線境界線は、ほとんどが破線が8m、その間隔が12mで設定されています(レーンマーク)。破線と間隔1セットで20mですので、2セットぶんでちょうど40mとなります。








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